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大腸がん、早期ICB耐性獲得機序としてRTP4サイレンシングを同定-東京医歯大ほか

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2023年03月07日 AM11:21

、早期の免疫チェックポイント阻害薬治療抵抗性のメカニズムは不明

東京医科歯科大学は3月3日、大腸がんの免疫チェックポイント阻害薬(ICB)治療においてRTP4サイレンシングにより腫瘍細胞内因性の治療抵抗性が出現することを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子腫瘍医学分野の田中真二教授、島田周助教、秋山好光講師、山本雄大大学院生、消化管外科学分野の絹笠祐介教授、国際医療福祉大学医学部免疫学の河上裕教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Gastroenterology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

PD-1は、活性化T細胞、特に腫瘍浸潤リンパ球の表面に発現する重要な免疫チェックポイント受容体であり、PD-1/PD-L1シグナルはT細胞の機能低下を誘導する。PD-1/PD-L1シグナルを抑制するICBはT細胞を再活性化させ、腫瘍増殖抑制効果を示し、がん患者の20-30%に奏功し生存期間が延長することが報告されている。

ミスマッチ修復遺伝子異常・マイクロサテライト不安定性大腸がん(dMMR/MSI-H大腸がん)は予後不良で標準化学療法抵抗性を示すが、フレームシフト変異により腫瘍遺伝子変異量が高く、ネオ抗原が豊富で免疫原性が高いため、ICB治療が有効な治療法とされている。しかしながら、ICB治療に対する治療抵抗性を獲得することも多く、腫瘍遺伝子変異量の低さ、腫瘍特異抗原の欠如、β2-ミクログロブリンとMHC-I分子の消失、JAK変異、PTEN欠損、Wnt/β-カテニンシグナルの活性化などがICB治療耐性の分子機構として報告されているが、早期の抵抗性メカニズムは不明である。研究グループはC57BL/6マウス由来のdMMR/MSI-H大腸がん細胞株MC38を用いて、早期のICB治療抵抗性獲得機序を探索した。

ICB耐性株で有意に発現低下を認めた耐性関連遺伝子としてRtp4を同定

まず、マウスdMMR/MSI-H大腸がん細胞株を正常免疫マウスに皮下移植し、抗PD-1抗体治療後に再増殖した腫瘍からICB耐性株を樹立した。親株とICB耐性株の遺伝子発現比較の結果、7候補遺伝子の有意な発現低下が認められた。候補遺伝子のノックアウト(KO)株の造腫瘍性・ICB耐性解析、候補遺伝子の発現とICB治療がん患者の予後との関係についてのバイオインフォマティクス解析を行ったところ、IFNγ刺激遺伝子の1つでありGタンパク質共役型受容体のシャペロンタンパク質であるRtp4がICB耐性関連遺伝子として同定された。

プロモーター領域のヒストンH3K9トリメチル化によるRtp4のサイレンシングによって抵抗性獲得

RTP4の治療抵抗性の機序を検討すると、-KO株では抗PD-1抗体投与後のT細胞の集簇が抑制されていることを発見した。RTP4サイレンシングによるICB治療抵抗性獲得機序の確認のためにpMMR/MSS大腸がん細胞株を用いた解析も行った。こちらのモデルにおいてもRtp4のサイレンシングによりICB治療に対する治療抵抗性が認められた。さらにエピジェネティクス制御について検討を行いマウスおよびヒトのRTP4発現はプロモーター領域のヒストンH3K9トリメチル化により制御されていることを明らかにした。また、ヒト大腸がん大規模遺伝発現データ解析によりICB治療感受性があるdMMR/MSI-H細胞株群においてRTP4の発現が高い傾向であることがわかった。

RTP4(receptor transporter protein4)は、オピオイド、嗅覚、味覚などのGタンパク質共役型受容体の細胞表面への発現を仲介するRTPファミリーの一員であり、RTP4はIFN誘導性の抗ウイルスエフェクターの1つであると報告されていたが、免疫におけるRTP4の役割は不明だった。タンパク質バーコードを用いた高次元単細胞CRISPRスクリーニング解析が行われ、2個のIFN刺激遺伝子PSMB8とRTP4ががん細胞の抗原依存性免疫反応に必須であると報告されており、今回の結果と一致するものだった。

さらに、エピジェネティクス異常は、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の発現だけでなく、腫瘍の免疫原性やICB治療反応性にも寄与していると考えられている。ICB治療とエピジェネティクス治療薬との併用療法についても報告されており、エピジェネティクス治療薬は、RTP4などの重要な遺伝子の発現を回復させることで、ICBに対する反応を高め、耐性克服に寄与する可能性がある。

RTP4、dMMR/MSI-H大腸がんにおけるICB治療反応性の予測マーカーとなる可能性

ヒトdMMR/MSI-H大腸がんを再現したマウス大腸がん細胞株MC38を用いて、早期のICB耐性獲得機序としてヒストンH3K9トリメチル化によるRTP4のサイレンシングを同定した。また、ヒト大腸がんの遺伝子発現データ解析では、多くのdMMR/MSI-H大腸がんでRTP4が高発現していることが明らかとなり、RTP4発現はdMMR/MSI-H大腸がんにおけるICB治療反応性の予測マーカーとなる可能性がある。

今回の研究では、ICB治療に対する早期の治療抵抗性獲得の機序としてヒストンH3K9トリメチル化によりRTP4がサイレンシングされることが重要であることを世界で初めて明らかにした。またヒト大腸がんにおいてICB治療感受性が高いdMMR/MSI-H大腸がんの多くでRTP4が高発現であることを明らかにした。「本研究の成果によりRTP4発現はdMMR/MSI-H大腸がんにおけるICB治療反応性の予測マーカーとなり得ること、エピジェネティクス治療薬とICBの併用がdMMR/MSI-H大腸がん患者の新規治療法となる可能性を持つことが期待できる」と、研究グループは述べている。

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