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身長の高さに影響するSNPを同定-約540万人を対象としたゲノム解析で

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2022年10月27日 PM02:15

身長に影響する約1万2,000個の遺伝子多型を特定

通常、子どもの身長がどの程度伸びるかは、両親の身長に基づき予測される。こうした中、約540万人を対象とした世界最大規模のゲノム解析から、身長の高さには1万2,000個を超える塩基配列の変化(遺伝子のバリアント)が影響していることが明らかになった。クイーンズランド大学(オーストラリア)分子生物学研究所のLoic Yengo氏らによるこの研究結果は、「Nature」に10月12日発表された。


画像提供HealthDay

Yengo氏らは、538万80人を対象にしたゲノムワイド関連解析()のデータを分析した。解析の対象となった参加者の大半(75.8%)はヨーロッパ系であり、そのほかは、東アジア系が8.8%、ヒスパニック系が8.5%、アフリカ系が5.5%、南アジア系が1.4%だった。Yengo氏によると、本研究において非ヨーロッパ系の人々の占める割合は、通常のGWASの研究よりは多いが、それでもヨーロッパ系の人々に偏っており、このことは以前から問題になっているのだという。同氏はこの点について、「より多様な遺伝子データの収集に向けたイニシアチブが、全世界で増えつつある。全ての人口集団に遺伝子研究のベネフィットがもたらされる機会を広げることが重要だからだ」と説明している。

解析の結果、身長の個人差に関連する1万2,111カ所の独立した一塩基多型(SNP;変異による一塩基の置換によって生じる遺伝子多型)が同定された。また、これらのSNPによって、ヨーロッパ系の人々での身長の個人差の40%を説明できることも明らかになった(その他の祖先を持つ人では10〜20%)。

Yengo氏は、「より規模の小さな研究では、ゲノム上の変異は散在しているようであった。これに対して今回の研究では、サンプルサイズが極めて大きかったため、身長に関連する遺伝子のバリアントのクラスターを初めて確認することができた。こうしたクラスターは、とりわけ骨格の発達異常に関与する遺伝子の周辺に多く認められた」と述べている。また、「これらのバリアントを用いることで、これまでよりも正確に身長を予測できる可能性が生まれた」とも話している。

Yengo氏らは、この研究が小児に起こり得る健康問題の診断に役立つ可能性があるほか、警察がDNAから容疑者の身長を予測できるようになる可能性もあるとの見方を示している。同氏は、「現時点では、小児の身長は生物学的な両親の平均身長を用いて予測するのが最も正確とされている。しかし、このゲノムデータを用いることで、小児科医は子どもの将来の身長をより正確に予測できるようになるだろう」と展望する。さらに、「小児に遺伝子から予測されるような成長が見られるなら、両親は安心できるだろう。遺伝子から得られた情報をきっかけに医学的な精査を行い、早期に問題を発見できるようになる可能性もある」としている。

Yengo氏らは、今回の研究が、遺伝子の影響を受けている身長以外の形質や疾患に関する研究にもつながる可能性があるとの見方を示している。ただ当面は、身長に関わるその他の遺伝的要因について調査を続けていく予定だという。同氏は、「これらの遺伝的要因に関しては、それぞれの影響力が弱いため、同定することはより難しくなるだろう。この困難なタスクを成し遂げるためには、少なくとも2000万人以上ものサンプルが必要になるかもしれない」との見通しを示している。(HealthDay News 2022年10月13日)

▼外部リンク
A saturated map of common genetic variants associated with human height

HealthDay
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