FDAが食品パッケージに「ヘルシー」と記載可能な条件を変更
米国ではこれまで、サーモンは脂肪を多く含んでいるという理由のため、販売時のパッケージに「healthy(ヘルシー)」と表示することが連邦規則で禁止されてきた。その一方で、糖を使って甘く加工したシリアルであっても、含まれている栄養素のチェックボックスに印が付けてあり、添加糖が他製品より少量であれば、「ヘルシー」とラベル付けして消費者に訴求することが許されてきた。
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このような矛盾は現代の栄養学や一般常識に照らしても相いれないものであるため、米国食品医薬品局(FDA)は9月28日に、これまでに蓄積されてきた知見を反映して、食品の販売に「ヘルシー」という用語を用いることのできる条件を変更すると発表した。FDAの発表した新たな定義は、現在の栄養学の考え方と整合させたものになる。
米国保健福祉省(HHS)長官のXavier Becerra氏は、「栄養は国民の健康を改善するための鍵であり、健康的な食品は慢性疾患のリスクを下げることができる。しかし、多くの人が、健康的な食品とは何かを正しく理解していない可能性がある。今回のFDAのアクションは、米国民の健康増進、健康格差の是正、寿命延伸を導く上で役立つものと言える」と述べている。なお、現在、米国人の8割以上が、野菜や果物、乳製品を十分に取っておらず、反対に添加糖や飽和脂肪酸、ナトリウムを過剰に摂取しているとされている。
FDAは1994年に、食品販売に「ヘルシー」という用語を利用できる基準を初めて定義した。ただし、その基準は、食品に含まれている特定の栄養素のみに基づいたものであった。1994年以降の栄養学の進歩により、近年の栄養指導では個々の栄養素の摂取量に着目するだけでなく、果物や野菜、全粒穀物などの栄養価の高い食品を摂取することのメリットを強調し、食事パターンの全体的な改善に焦点を当てるようになってきている。また、健康に良いとされる栄養素の考え方も変わってきた。かつて、脂肪分が多いために健康的でないとされることのあったサーモンだが、今ではサーモンなどの魚油には、心臓や脳の健康に良いオメガ3脂肪酸が多く含まれていることが分かり、摂取が推奨されるようになった。
FDAによると、新たな定義の下では、米国の食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans)で推奨されているような食品は、より多くのケースで「ヘルシー」との強調表示が可能になるという。例えば、ナッツや豆類、サーモンのような脂肪分の多い魚、特定の食用油などが該当するとのことだ。
新たな定義で「ヘルシー」とのラベル付けが許される具体的な条件は以下の通り。まず、食事ガイドラインで推奨される食品群である、果物、野菜、乳製品などが少なくとも1種類、一定量以上含まれていること。また、飽和脂肪酸、ナトリウム、添加糖などの非健康的な成分を一定量以上含んでいないこと。それらの成分や栄養素の上限/下限値は各食品の1日の摂取量に基づき、例えばシリアルの場合、4分の3オンス(約21g)以上の全粒穀物を含み、飽和脂肪酸は1g以下、ナトリウムは230mg以下、添加糖は2.5g以下である必要がある。
DAによると、今回の新たな定義策定には二つの目的があり、一つ目は消費者がより健康的な食品を入手しやすくすることであり、二つ目は食品メーカーに対して、野菜や全粒穀物などの健康的な食材を利用した製品開発を促すことにあるという。また、今後、食品を購入する消費者の健康的な意思決定を支援するためのラベル表示の開発や、オンラインで食品を購入する際に栄養情報を簡単に入手できるようにするといった施策を推進する予定とのことだ。
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