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口腔内細菌が「食道がん」リスクとなる可能性-東京医歯大ほか

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2020年12月04日 PM12:30

食道がん患者における口腔内所見と口腔内細菌叢の特徴を明らかに

東京医科歯科大学は12月3日、口腔内細菌が食道がんのリスクになり得ることを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科臨床腫瘍学分野の三宅智教授と川﨑万知子大学院生、歯周病学分野の池田裕一助教ら、江戸川病院、総合南東北病院オーラルペリオセンターの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Cancer」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

食道がんは、がんの死因の中でも6番目に多く、また発症数では世界で7番目に多いとされている。早期診断が困難であり、浸潤や転移の頻度が高く、生存率が低いことが特徴だ。一方、歯周病は歯茎の炎症や出血から始まり、歯を支える骨や線維など深い組織に炎症が広がり、最終的には歯が喪失してしまう、日本でもとても高い罹患率の口腔内細菌感染症。歯周病は、糖尿病や動脈硬化などを含む全身疾患の悪化に関与しているといわれており、がんにおいても歯周病がリスクを増加させる可能性があると報告されてきた。

先行研究により、口腔内に存在する細菌や歯周病に関わる細菌が消化管のがん組織から検出されたことが報告されている。食道や胃のがん組織で、口腔内の膿瘍で良く検出されるストレプトコッカス アンギノーサス菌が発見されたことで、消化管がんと細菌の関連がより注目を集めるようになった。食道がん細胞をストレプトコッカス アンギノーサス菌に感染させると、発がんが促進することが知られている。

これらの知見に基づいて口腔内細菌と食道がんの関連が示唆されてきたが、食道がんと歯周病、それぞれの臨床所見に基づいて、口腔内細菌のがんへの影響を検討した研究はほとんどない。今回の研究では、食道がん患者における口腔内所見と口腔内細菌叢の特徴を明らかにすることを目的とした。

食道がん患者、歯茎下の歯垢中に歯周病関連細菌が有意に高く

今回の研究では、同大医学部附属病院消化器外科に入院した食道がんと診断された患者61人と非がん患者62人の口腔内の診察を行い、唾液と歯茎の下の歯垢を採取。採取したサンプルから細菌のDNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いて7種類の口腔細菌の菌数を計測した。

その結果、食道がん患者では非がん患者と比較すると、歯周病の状態が有意に悪く、喫煙率や飲酒習慣が高いことが判明。歯茎の下の歯垢中には歯周病に関わる多くの細菌が有意に高く検出された。中でもアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌については、がん患者で16人検出されたのに対し、非がん患者で検出されたのは1人だった。

唾液において、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌の検出率はがん患者で有意に高く、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌とストレプトコッカス アンギノーサス菌の量はがん患者で有意に多く検出された。

唾液中のアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌検出で、5.77倍食道がん患者増

これらの研究結果から、食道がんのリスクとなる因子を見つけるため、ロジスティック回帰分析を用いて統計学的に解析を実施した。

その結果、飲酒習慣で17.10倍、歯垢中のストレプトコッカス アンギノーサス菌の検出で32.80倍、唾液中のアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌の検出で5.77倍、食道がんの患者が増加する結果が得られた。

迅速で簡単な食道がんスクリーニング方法開発に期待

食道がん患者の長期生存率は、依然として低いままだ。これは食道がんの特徴である周囲の臓器や組織への急速な広がりと無症候性の浸潤が、早期発見を困難にしていることが理由である。つまり、早期のスクリーニング、検出、および診断は、食道がんの重要な要素となる。

今回の研究では、初めてアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌が食道がんと関連することを発見。また、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌やストレプトコッカス アンギノーサス菌、生活習慣のアンケート結果を組み合わせることで、迅速で簡単な食道がんのスクリーニング方法が開発できるかもしれないという臨床的重要性を示唆している、と研究グループは述べている。

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