東京
(ビジネスワイヤ) — 大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岩本太郎、以下「大塚製薬」)とH. ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、CEO:ウルフ・ウインバーグ、以下「ルンドベック社」)は、アルコール依存症における減酒薬として「nalmefene」(ナルメフェン*3)を日本で共同開発・商業化することについて本日合意しました。
日本では、社会情勢の変化や高齢化により、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患の患者数はますます増加傾向にあり、その対応が急がれています。中でも、アルコール依存症は自身の健康を損なうだけでなく、社会的・経済的な影響が大きいとされ、直接的な医療コストは1兆円、労働や雇用の損失によるコストは3兆円、総計で年間4兆円に達すると言われています*2。
アルコール依存症でとりわけ問題になるのは、疾患に対する正しい認識の不足や限られた治療選択肢のために、社会復帰への道が閉ざされてしまっていることです。現在、国内には約80万人の治療が必要なアルコール依存症患者さんが存在すると推計されていますが、実際に治療を受けているのは約4万人に過ぎません。これまでの、入院による断酒や抗酒剤の使用以外の治療方法を選択できることによって、治療へのアクセスやアドヒアランスを向上させることが期待できます。
「nalmefene」(ナルメフェン*3)は、飲酒要求時に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体を拮抗し、飲酒欲求を抑制する初めての頓用薬としてルンドベック社が開発を進めてきました。『お酒と上手に付き合う』という考え方のもと、減酒を目的とした頓用薬「nalmefene」(ナルメフェン*3)は、社会復帰を目指す患者さんにとっても継続可能な新たな治療の選択肢として期待されています。なお、欧州では「SelincroⓇ」(セリンクロ*3)の製品名で2013年4月から販売されています。
現在、国内では「健康日本21」への取り組みや、「アルコール健康障害対策基本法」の早期成立を目指すことで、多量飲酒者を減少させ、節度ある適度な飲酒を促す動きがあります。「nalmefene」(ナルメフェン*3)は、これらの取り組みに貢献できると考えています。
大塚製薬の代表取締役社長の岩本太郎は、今回の新たな合意について「アルコール摂取が依存的となり止められないことによる健康被害は、日本においても大変重要な課題です。継続できる治療として、飲酒量を減量させるという新しい概念である減酒薬を、我々のグローバル中枢薬事業の一環として日本で展開できることを大変嬉しく思っています」と述べています。
ルンドベック社のCEO兼社長のウルフ・ウインバーグは「日本では、アルコール摂取量の低減という効果的な治療が必要とされながらも実際には行われていません。我々は既にこの製品を欧州17カ国で展開しています。この販売経験を活かして、日本でのパートナーである大塚製薬と一緒にこの薬剤の開発を推進していけることを大変嬉しく思っています」と述べています。
大塚製薬は、ルンドベック社に契約一時金として50百万ユーロ(約65億円*4)を支払い、この一時金に開発・承認ならびに売上達成金を加えると最大で約100百万ユーロ(約130億円*4)をルンドベック社に支払います。ルンドベック社は、日本での開発費を負担し、共同販促の権利を有します。また、日本向けの錠剤バルク生産をルンドベック社が担当します。「nalmefene」(ナルメフェン*3)の国内での臨床第III相試験は、2014年に開始する予定です。
大塚製薬とルンドベック社はグローバル中枢薬事業で、大塚製薬創製の「エビリファイ メンテナ」、「ブレクスピプラゾール」とルンドベック社の「Lu AE58054」を含む3つの化合物を共同開発、共同販売する契約を2011年11月に締結しました。この度の「nalmefene」(ナルメフェン*3)の契約は、2011年の契約とは別途の契約になります。今回の合意に至ったことで、大塚製薬とルンドベック社の協力体制はますます強固なものとなります。両社は今後も世界の中枢神経領域の治療発展を重視してまいります。
*1 | 尾関米厚、松下幸生、白坂知信、他:わが国の成人飲酒行動およびアルコール症に関する全国調査. アルコール研究と薬物依存40:455-470、2005 | |
*2 | Nakamura N, Tanaka A, Takano T. The social cost of alcohol abuse in Japan. J Studies on Alcohol, 54: 618-625, 1993 | |
*3 |
カタカナ表記は読み方を示すものです。 |
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*4 |
為替レート: 1ユーロ=130円 |
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【参考】
「nalmefene」(ナルメフェン)について
「nalmefene」は、オピオイド受容体拮抗薬です。オピオイド受容体は、中枢神経系に広く分布し、脳内報酬系や情動制御、痛みのコントロールなどを司り、これまでに3つのサブタイプ(μ、κ、σ)が知られています。「nalmefene」は、μ受容体に働きかけて報酬効果を調整し、κ受容体を介して嫌悪感を抑制することによって、飲酒誘因刺激への過度な反応を抑え、減酒に伴うストレスを緩和させることが可能と考えられます。また受容体親和性が高く、半減期も長いことから、飲酒欲求を抑制することに繋がります。既に販売を開始している欧州では多量飲酒リスク高値(男性では1日60g、女性では1日40g以上の飲酒量)の成人のアルコール摂取量を低減させるという適応をもつ世界初のアルコール依存症治療薬です。
主な酒類の換算の目安 (「健康日本21」、アルコール、現状と目標より抜粋) | ||||||||||
お酒の種類 | ビール
(500ml) |
清酒
(1合180ml) |
ウイスキー、ブランデー
(ダブル60ml) |
焼酎(35度)
(1合180ml) |
ワイン
(1杯120ml) |
|||||
アルコール度数 | 5% | 15% | 43% | 35% | 12% | |||||
純アルコール量 | 20g | 22g | 20g | 50g | 12g | |||||
アルコール依存症について
アルコール依存症をひとことでいうと、「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」です。具体的には、飲酒のコントロールができない、離脱症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら断酒ができない、などの症状が認められます。確定診断はICD-10診断ガイドラインに従います(表1参照)。
表1 アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)のICD-10診断ガイドライン | ||
過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1カ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合 | ||
1 | 飲酒したいという強い欲望あるいは脅迫感 | |
2 | 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難 | |
3 | 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状 | |
4 | 耐性の証拠 | |
5 | 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長 | |
6 | 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒 | |
アルコール依存症の患者さんは、本来、飲酒してはならないような状況でも強い飲酒欲求(飲酒渇望)に苛まれます。また、中枢神経がアルコールに依存している「離脱症状」(表2参照)や、否認(本人が問題を認めない)や自己中心性(物事を自分の都合のよいように解釈する)などの心理特性が認められます。更に、暴言・暴力、徘徊・行方不明、妄想などの精神症状や行動異常を伴うこともあります。
表2 主な離脱症状 | ||||
軽~中等症 | 自律神経症状 | 手のふるえ、発汗(とくに寝汗)、心悸亢進、高血圧、嘔気、嘔吐、下痢、体温上昇、さむけ | ||
精神症状 | 睡眠障害(入眠障害、中途覚醒、悪夢)、不安感、うつ状態、イライラ感、落ち着かない | |||
重症 | けいれん発作(強直間代発作)、一過性の幻聴、振戦、せん妄(意識障害と幻覚) | |||
治療は外来でも可能ですが、日本では入院治療が主体です。入院治療は、「解毒治療」、「リハビリ治療」、「退院後のアフターケア」の3段階に分けられます。アルコール依存症は早期発見、早期治療が重要です。早期の方が、アルコールによる健康や社会的影響が小さく、また、家族崩壊も未然に防ぐことができます。
※「アルコール依存症について」:厚生労働省、みんなのメンタルヘルス総合サイト、『アルコール依存症』より抜粋
会社概要 |
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H. ルンドベック A/S (H. Lundbeck A/S) |
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設 立 |
1915年 | |
代 表 者 |
Chief Executive Officer 兼 社長 ウルフ・ウインバーグ | |
所 在 地 |
Ottiliavej 9, DK-2500 Valby, Copenhagen, Denmark | |
従 業 員 数 |
約6,000名(連結) |
大塚製薬株式会社 (Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd.) |
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設 立 |
1964年8月10日 | |
資 本 金 |
200億円 | |
代 表 者 |
代表取締役社長 岩本太郎 (いわもと たろう) | |
本 社 所 在 地 |
〒101-8535 東京都千代田区神田司町2丁目9番地 | |
従 業 員 数 |
5,652名 (2013年3月31日現在) 世界では約28,000名(非連結を含む) | |
事 業 内 容 |
医薬品・臨床検査・医療機器・食料品・化粧品の製造、製造販売、販売、輸出並びに輸入 | |
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