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高カロリー食の過食による肥満、分子メカニズムの一端を解明-大阪公立大

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2022年11月25日 AM10:35

CRTC1欠損マウスは肥満、同じく欠損で肥満するMC4Rを発現する神経細胞が関連?

大阪公立大学は11月21日、遺伝子転写補助因子CRTC1(CREB regulated transcription coactivator-1)が受容体タンパク質MC4R(Melanocortin-4 receptor)の肥満抑制作用の一部を媒介していること、油脂への欲求を調節するとともに高脂肪食に対して代謝を適応させ、血糖を調節していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の松村成暢准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「FASEB Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

CRTC1を全身の細胞で欠損させるとマウスが肥満することから、CRTC1は肥満を抑制する因子として考えられている。また、CRTC1は、遺伝子多型の大規模解析により、ヒトにおいても肥満に関連する因子であることが明らかになりつつある。しかし、CRTC1は脳の全ての神経細胞に発現するため、どの神経細胞に発現するCRTC1が肥満の抑制に寄与しているのか、詳細なメカニズムは不明だった。

CRTC1が肥満を抑制するメカニズムの解明にあたり、今回の研究ではMC4Rを発現する神経細胞に着目。MC4R遺伝子に変異があり機能が低下すると、顕著に肥満することは古くから知られている。このため、MC4Rを発現する神経細胞中のCRTC1が肥満を抑制しているという仮説を立て、研究を進めた。MC4Rは、脳の中の一部の神経細胞群でのみ発現し、エネルギー消費を増加させ食欲を強力に抑制する機能を持つ受容体タンパク質だ。

MC4R発現神経細胞のCRTC1欠損マウス、高脂肪食により過食し肥満・糖尿病発症

研究では、MC4Rを発現する神経細胞でのみCRTC1を欠損させたマウスを新たに作出し、肥満や糖尿病発症に与える影響について検討した。その結果、MC4R神経のCRTC1を欠損させたマウスを標準飼料で飼育しても、CRTC1を欠損していないコントロールマウスと比較して全く体重に変化がみられなかった。一方で、油脂を多く含む高脂肪食で飼育すると、過食となりコントロールマウスと比較して顕著に肥満するだけではなく、糖尿病を発症することが明らかとなった。さらに、標準飼料に砂糖(スクロース)やラードを混ぜ込んだ餌をこのマウスに与えても肥満することもわかったという。

CRTC1がMC4R肥満抑制作用の一部を媒介、血糖調節作用も

これまでCRTC1による肥満の抑制機構は明らかとなっていなかった。しかし、今回の研究により、CRTC1はMC4Rの肥満抑制作用の一部を媒介していること、血糖を調節する作用を持つことが明らかとなった。また、CRTC1は標準飼料(バランスのとれた健康的な食事)の摂取量調節には大きく関わっておらず、高カロリーな食べ物(砂糖や油脂を多く含む食べ物)の過食を抑制する機能を持っていることがわかった。しかし、MC4Rを発現する細胞におけるCRTC1がどのように作用して食欲を制御しているのかは不明なため、さらなる研究が必要だとしている。

CRTC1正常化・活性化が肥満予防につながる可能性

現在、肥満と糖尿病は大きな社会問題となっており、肥満の大きな原因は運動不足と過食だ。油脂や砂糖を多く含む高カロリーな食品は美味しく感じやすく、過食する傾向にある。このような状態が継続している場合、CRTC1の機能が低下している可能性が考えられる。CRTC1を活性化もしくはその機能を薬理的にまたは食事療法などにより正常に戻すことができれば、過食を抑制することができる可能性がある。CRTC1の活性化は、バランスのとれた健康的な食事の摂取量には影響を与えず、高カロリーな食べ物の摂取量のみを抑制するため、肥満の予防にも寄与することが期待される、と研究グループは述べている。

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