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急性冠症候群、外来での心臓リハ施行実態と予後との関連を解明-国循

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2022年03月30日 AM11:45

NDBを用いた検討、外来リハビリ施行回数、1回あたり施行時間ごとに患者を分類

国立循環器病研究センターは3月29日、急性冠症候群患者における外来における心大血管リハビリテーションの回数と予後との関連を、レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて解明したと発表した。この研究は、同研究センター情報利用促進部の金岡幸嗣朗上級研究員、岩永善高部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Heart」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

急性冠症候群は、急性期の死亡率が高いだけではなく、遠隔期にも再発、心不全などを起こし、再入院や死亡のリスクが高い疾患。心大血管リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)は、急性冠症候群を含む心血管疾患に対して、再入院などのイベントを抑制することが示されており有用な治療法だ。しかし、心臓リハビリの参加率は全世界的にも低く、施行回数も十分ではないことが示唆されている。一方で、急性冠症候群の治療法が進歩した近年における、外来での心臓リハビリの施行実態と、心臓リハビリの参加回数等が長期予後に与える臨床的影響についての大規模な報告はない。

レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、)は、日本全体の入院・外来を含むほぼ全ての保険診療を含むデータベース。NDBには、患者の性別、年齢、病名、処置や投薬内容などの内容が含まれる。今回の研究では、NDBから、2014~2018年度に、急性冠症候群に対する初回の経皮的冠動脈形成術を受けた患者を抽出した。日本の心臓リハビリの保険診療は、発症後150日間を目処として、それ以降は月ごとの回数の上限が決められて施行されている。

研究グループは、急性冠症候群で入院後、180日間における心臓リハビリの回数、1回あたりの施行時間、外来心臓リハビリの継続期間を調査した。次に、入院後180日以上追跡が可能であった患者について、外来リハビリの施行回数(多い群/少ない群)と1回あたりの施行時間(長い群/短い群)に基づいて、患者を4群にわけ、各々の群の予後を、患者背景にて調整し、生存分析を用いて解析した。

患者20万2,320人のうち約10%に外来心臓リハビリ実施、1か月以内中断は17%

急性冠症候群に対する初回の経皮的冠動脈形成術を受け、組み入れ条件を満たした20万2,320人の患者のうち、約10%(2万444人)の患者が、外来心臓リハビリを受けていた。外来の心臓リハビリの施行回数(中央値)は9回、1回あたりの施行時間の中央値は60分、施行期間の中央値は14週間で、17%の患者が外来リハビリを1か月以内に中断していた。

リハビリ回数少ない群との比較、多い群では180日以降の全死亡減少と関連

組み入れ患者で、外来心臓リハビリを受けていた患者の入院後半年以降の追跡期間(中央値)は2.1年。主要評価項目である全死亡は、1000人・年あたり14.1人。患者の背景で調整した後の生存解析では、リハビリ回数が少ない群と比較し、多い群では180日以降の全死亡の減少と関連があることが示された。また、その効果は、年齢、性別、梗塞部位などによるサブグループ毎の、いずれの群でも一貫した効果が得られることが示されたとしている。

外来心臓リハビリへの参加率・回数増加の取り組みが必要

今回、日本のほぼ全体をカバーする診療報酬情報を用い、日本における、急性冠症候群患者に対する外来心臓リハビリの現状が明らかになった。外来心臓リハビリの参加割合が低いことに加え、外来心臓リハビリをしていても、十分な回数の心臓リハビリを受けていない場合が多い現状が示された。

日本では、高齢化社会の進行や、医療アクセス制限等により、外来心臓リハビリへの参加率が不十分な現状が考えられる。同研究成果により、外来心臓リハビリへの参加率および参加回数を増加させていく取り組みの必要性が示され、また、今後その効果を検証していくことも必要と考えられる、と研究グループは述べている。

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