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新生児期発症ミトコンドリア病、大規模解析で詳細を明らかに-千葉県こども病院ほか

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2021年10月11日 AM11:30

国内の新生児期発症ミトコンドリア病281例を解析、世界最大規模

千葉県こども病院は10月8日、新生児期に発症したミトコンドリア病281例の大規模なデータをとりまとめ、その臨床的特徴、遺伝子診断、予後を明らかにしたと発表した。この研究は、千葉県こども病院新生児・未熟児科の海老原知博医長、鶴岡智子主任医長、遺伝診療センター・代謝科の村山圭部長(センター長)、福岡赤十字病院の長友太郎部長、埼玉医科大学小児科/ゲノム医療科の大竹明教授、・難病の診断と治療研究センターの岡﨑康司教授(センター長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Archives of Disease in Childhood Fetal & Neonatal edition」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

研究グループは、2007年からミトコンドリア病の生化学および遺伝子診断を行いつつ、2015年からミトコンドリア病の診療基盤構築(診断システムの確立、診断基準や診療マニュアルの策定、レジストリ構築)を進めてきた。2020年には日本におけるリー(Leigh)脳症160人の予後、および重症型ミトコンドリア肝症の特徴、2021年には日本の核遺伝子による重篤な乳児期発症ミトコンドリア病家系における出生前診断の現状について論文報告を行い、各病型に対するエビデンス創出研究を進めている。

今回の報告は、新生児期(生後28日以内)に発症したミトコンドリア病である「新生児ミトコンドリア病」に新たに焦点を当て、これまでの論文報告における症例の一部も含めた281例の症例データをもとに、臨床的特徴、遺伝子診断、予後を取りまとめたもの。新生児期に発症した症例は、その多くが高乳酸血症を伴い、乳幼児期や成人期に発症した症例より重症化する傾向にある。そのため、発症時期を考慮した臨床分類が重要となる。しかし、原因遺伝子やその病態はこれまで未解明のままだった。そこで今回、研究グループは、今日の診療におけるより新しく正確な情報源とすることを目的に同報告をまとめた。

MsMDが大部分で7割が生後2日以内に発症、核遺伝子由来が多く1歳時生存率52%

今回の報告の対象となったのは、2004~2020年までに出生した新生児期発症のミトコンドリア病281症例。症例は、多系統のミトコンドリア病(MsMD)、心筋症、リー(Leigh)症候群、肝症の4病型に分けて、その臨床的特徴、遺伝子診断、予後に関して検討が行われた。

その結果、病型は多系統のミトコンドリア病が194症例(69%)と大部分を占め、心筋症が38症例、リー症候群が26症例、肝症が23症例あった。遺伝子診断が確定した84症例のうち、69症例(82%)が核遺伝子由来、15症例(18%)がミトコンドリア遺伝子由来だった。病因となった核遺伝子は36種類と多様だった。発症は生後2日以内が74%を占め、初発症状は生後2日以内に新生児仮死や呼吸障害、生後3日以降は体重増加不良が多いことが判明した。高乳酸血症は86%に認められた。在胎不当過小児(SGA児)が35%と胎児期から兆候を認める症例があり、早産児は35%だった。全体の生存期間の中央値は1.9年で、1年後の生存率は52%だった。

診療の際の正確な情報源として活用されることが期待される

今回の報告により、既報のとおり、新生児期にミトコンドリア病が疑われる症例においては、生化学的・遺伝学的に包括的な解析を行うことで診断数が増えてきており、多様な遺伝的病因を持つことが明らかになった。また、予後に影響する因子がわかってきた。今回の報告は、新生児期発症のミトコンドリア病症例の臨床的特徴、遺伝子診断、予後をまとめた国内では初めての報告となる。世界的にもこれほど大規模に新生児発症のミトコンドリア病をまとめた報告はなかった。これは、これまでの研究において蓄積してきた症例データ、および構築してきた診断システムから生化学的及び遺伝学的診断を進める中で得られた成果と言える。

同報告は、新生児期発症のミトコンドリア病を診療する際に正確な情報源として活用されることが期待される。さらに、新生児期発症の多い重篤なミトコンドリア病の新たな病態解明と病因遺伝子に基づく治療開発など、ミトコンドリア病研究の一層の発展につながることが期待される。

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