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肝芽腫、予後予測に有用なメチル化マーカー「DLX6-AS1」を同定-広島大ほか

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2021年09月22日 AM11:00

小児肝腫瘍検体163例を用いて、統合的にゲノム・エピゲノムプロファイリングを実施

広島大学は9月20日、全国多施設共同臨床試験JPLT-2試験に登録・治療された小児肝腫瘍のうち、同意を得て治療開始する前の検体163例を用いて、がん組織の遺伝子全体の変異や変化を検索した結果を発表した。この研究は、同大自然科学研究支援開発センターの檜山英三教授と同大学病院小児外科、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸名誉教授(シニアリサーチフェロー)、永江玄太特任准教授、理化学研究所生命医科学研究センターの中川英刀チームリーダーら、日本小児肝癌スタディグループ(JPLT、現日本小児がんグループ肝腫瘍委員会)の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより

肝芽腫は、小児の肝臓に発生するがんで、多くは5才未満でみられるものが多く、成人にみられる肝細胞がんと異なる。すなわち、低出生体重児に多く発症し、化学療法も効果がある腫瘍が多く、全国あるいは国際共同の臨床試験にて治療成績が向上してきているが、中には予後不良の症例も見られる。特に、年長児や思春期にみられる成人型肝がんとの移行型(TLCT)の予後は不良で、その発症要因や予後に関わる因子についてはいまだ明らかになっていない。

今回の研究では、全国の小児肝がんを診療する施設による多施設共同臨床試験JPLT-2プロトコールで治療した症例のうち、同意のもとに提供された治療開始前検体を用いて、次世代シークエンサーやマイクロアレイなどの大規模なゲノム解析により、世界で初めて治療前肝芽腫検体の遺伝子の変異や遺伝子の発現機序を検討した。

今回の研究では、肝芽腫の発生とその進展に関わる遺伝子変異や遺伝子発現などを明らかにするため、未治療の状況で採取された腫瘍検体(診断時の生検、あるいは診断時肝切除)163例(154例、肝細胞がん9例)を用いて、統合的にゲノム・エピゲノムプロファイリングを実施した。

約8割の症例、Wnt経路の活性化に重要なCTNNB1遺伝子に部分欠失または点突然変異

その結果、腫瘍に生じている変異は非常に少ないものの(1Mbあたり0.52個)、診断時年齢が増加するとともに変異の数は増加していた。最も頻度の高い体細胞ゲノム変異として約8割の症例にWnt経路の活性化に重要なCTNNB1遺伝子に部分欠失または点突然変異を認め、この変異が見られない症例では家族性大腸ポリポーシスの原因となるAPC遺伝子の生殖細胞系列変異が多く見られた。

8才以上で診断された成人の肝細胞がんに類似した病理所見を示す成人型肝細胞がんとの移行型(TLCT)では、細胞の不死化に関わっているTERT遺伝子を活性化する部位(プロモーター領域)に変異が認められ、成人型の肝細胞がんと共通していた。肝芽腫と正常肝組織の遺伝子発現を調節しているエンハンサー領域のメチル化パターンから4つのグループに分類された。

ASCL2遺伝子発現が脱メチル化によって亢進

Wnt経路の解析を進めると、腸管にある幹細胞の分裂を調節転写因子として知られるASCL2遺伝子を活性化する特異的なエンハンサー領域の低メチル化が明らかとなり、実際の肝芽腫の組織にASCL2が発現していることを確認した。

さらに、治療成績との関連した因子を検討した結果、通常の臨床で用いられている予後予測因子と独立して、予後予測に有用なメチル化マーカーDLX6-AS1を新たに見出した。

肝芽腫に有効な治療標的を見出す所見となることに期待

今回の研究成果は、全国共同臨床試験において収集された世界最大規模の症例のゲノム解析を行うことで、小児肝がん(肝芽腫)の起源や成因を理解するための手がかりを与えるものだ。

さらに、肝芽腫の臨床的な予後予測や有効な薬剤開発のための治療標的を見出す重要な所見となることが期待される、と研究グループは述べている。

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