医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 新生児線状IgA水疱性皮膚症、原因が母乳内にあると判明-慶大ほか

新生児線状IgA水疱性皮膚症、原因が母乳内にあると判明-慶大ほか

読了時間:約 1分41秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年08月16日 AM11:40

母体の血液中に病原性IgA抗体がなく由来不明だった

慶應義塾大学は8月13日、新生児線状IgA水疱性皮膚症において、病気を起こす原因であるIgA抗体が母親の母乳内に存在することを発見したと発表した。この研究は、同大医学部皮膚科学教室の天谷雅行教授、江上将平共同研究員、東京女子医科大学の山上淳准教授(研究当時:慶應義塾大学医学部皮膚科学教室専任講師)らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Dermatology」のオンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより

線状IgA水疱性皮膚症は、表皮真皮境界部に対する自己反応性のIgA抗体を介して、びらん・水疱を引き起こす。小児または40歳以上の成人によく起こる病気だが、新生児でもこれまでに世界で11例の報告があり、気道閉塞など致死的な病態を引き起こす。新生児では抗体産生が未熟なため、新生児自己免疫性皮膚疾患では母体の血液中に存在する自己抗体が胎盤を移行して病気を引き起こす例が多い中、新生児線状IgA水疱性皮膚症では母体の血液中に病原性IgA抗体は見つからず、その由来が不明だった。

病原性IgA抗体が患児の「真皮側」に結合したことから母乳で発見へ

線状IgA水疱性皮膚症では病変皮膚にIgA抗体が沈着していることを証明することで診断が確定する。患児皮膚では直接蛍光抗体法で皮膚の表皮真皮境界部にIgA抗体の沈着が認められ、1M食塩水で剥離したヒト皮膚切片を用いた患児血清の間接蛍光抗体法では、病原性IgA抗体が真皮側の抗原に結合していることがわかった。患児母の血液内には皮膚抗原に結合するIgA抗体は認められなかったことから、研究グループは、皮膚に存在するIgA抗体が、患児母の血液からの移行でなく母乳を介した移行によるものと考えた。そこで、母乳内のIgA抗体を精製してヒト皮膚検体を用いた間接蛍光抗体法を行い、真皮側の抗原に結合するIgA抗体が母乳中に存在することを明らかにした。

また、患児皮膚を用いてIgA抗体のJ鎖に対する免疫染色を行うことで、患児皮膚に結合しているIgA抗体が成人線状IgA水疱性皮膚症で見られる血液中の血清型IgA抗体ではなく、母乳などの体液内に存在する分泌型IgA抗体であることを証明し、母乳由来のIgA抗体が患児皮膚に結合し病気を引き起こしていることを証明した。

速やかな母乳栄養中止による重症化予防に期待

今回、新生児自己免疫疾患の発症メカニズムとして母乳による受動免疫があることが新たに明らかにされた。「病原性IgA抗体が母乳由来であることがわかったことで、新生児線状IgA水疱性皮膚症では速やかに母乳栄養を中止することで患児の重症化を防げることが期待される」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか