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【直近の新型コロナ感染状況】感染拡大継続で医療体制は非常に厳しい-感染研

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2021年01月22日 PM12:00

第21回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード報告より

国立感染症研究所は1月20日、第21回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年1月13日、厚生労働省)の報告による、日本における新型コロナウイルス感染症の状況等について公表した。


画像は感染研サイトより

感染拡大の継続で医療関係者は相当に疲弊、輸入変異株の感染性や病原性は不明

全国の新規感染者数は、首都圏(1都3県)、特に東京での急速な増加に伴い、年末から増加傾向が強まり、過去最多の水準の更新が続いている。また、年明けから、中京圏、関西圏、さらに、北関東、九州でも同様に新規感染者が急増した。実効再生産数は、全国的には1を上回る水準が続いており(12月27日時点)、東京等首都圏、大阪、福岡などで1週間平均で1を超える水準となっている(12月27日時点)。

入院者数、重症者数、死亡者数の増加傾向も継続。急増している新規感染者数の増加は若年層(30代以下)が多い。対応を続けている保健所や医療機関の職員はすでに相当に疲弊している。急速に感染者数が増加している自治体では、入院調整が困難となったり、高齢者施設等の中で入院を待機したりせざるを得ない例も増えてきている。新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が拡大しつつあり、新規感染者数の増加に伴い、通常であれば受診できる医療を受けることができない事態も生じ始めている。また、自治体におけるデータ入力等への負荷も増している。

英国、南アフリカで増加がみられる新規変異株は、世界各地で検出されている。国内では、海外渡航歴のある症例又はその接触者からのみ検出されている。従来株と比較して感染性が高い可能性を鑑みると、国内で持続的に感染した場合には、現状より急速に拡大するリスクがある。これらの変異株と共通する変異を一部に有する新たな変異株が、ブラジルからの帰国者から検出された。感染性、病原性等について現時点では判断は困難。

全国的に新規感染者が増加傾向、医療提供体制は依然として「非常に厳しい」

北海道では、新規感染者数は減少傾向が続いていたが、足下では増加に転じている。病院・施設内の感染は継続して発生。旭川市の医療機関および福祉施設内の集団感染はほぼ収束した。

首都圏の動向をみると、東京都では、新規感染者数の増加が継続し、直近の1週間では10万人あたり90人弱となっている。医療提供体制も非常に厳しい状況が継続。救急対応にも影響が出ている。保健所での入院等の調整はさらに厳しさが増している。感染経路は不明者が多いが飲食の場を中心とした感染の拡大が推定される。首都圏全体でも、埼玉、神奈川、千葉で新規感染者数の増加が継続しており、医療提供体制が厳しい状況。1都3県の増加に伴い、隣接する栃木においても新規陽性者が急増し、直近の1週間では10万人あたり40人を超え、医療提供体制も厳しい状況となっている。

関西圏の動向をみると、大阪では、新規感染者数が漸減していたが、年明けから急速な増加に転じ、直近の1週間では10万人あたり40人を超えている。年初では、30代までの若年層の感染が目立っている。医療提供体制の厳しい状況は継続。保健所での入院調整も厳しさが増している。兵庫、京都でも感染が急速に拡大し、10万人あたり30人を超え、医療提供体制が厳しい状況。滋賀、奈良でも新規感染者数の増加傾向が継続。

中京圏の動向をみると、愛知では、新規感染者数が高止まりだったが、年明けから急速な増加に転じ、直近の1週間では、10万人あたり30人弱となっている。医療提供体制の厳しい状況は継続。保健所での入院調整も厳しさが増している。岐阜でも新規感染者数が急増。医療提供体制が厳しい状況。

九州の動向をみると、福岡では、新規感染者数が急速に増加。直近の1週間では、10万人あたり40人を超えており、医療提供体制の厳しさが増している。佐賀、長崎、熊本、宮崎でも新規感染者数が増加。

それ以外の地域について、宮城、茨城、群馬、山梨、長野、静岡、岡山、広島、沖縄でも、新たな感染拡大や再拡大、多数の新規感染者数の発生の継続の動きが見られ、直近1週間で10万人あたり15人を超えている。

大都市の感染を早急に抑制しなければ、地方での感染抑制も困難になる

東京など大都市圏を中心とする2020年末の感染拡大については、職場の宴会や、若者の飲食をする場面、が主な感染拡大の要因となり、これが、職場や家庭内の感染につながったと考えられる。今後さらに高齢者への感染拡大が懸念される。一方、年明けからの全国的な急速な感染者数の増加は、帰省による親戚との会食などが要因の一つと考えられるが、引き続き検討の必要がある。

こうした東京での感染拡大は、周辺自治体にも波及し、埼玉、千葉、神奈川とともに首都圏では、年明け以降も新規感染者の増加が継続し、過去最高水準となっている。直近1週間の新規感染者数は、東京都だけで全国の3割弱を占め、1都3県で過半数を占めている。こうした動きは、京都、大阪、兵庫の関西圏、愛知、岐阜の中京圏、福岡の九州でも同様となっており、これらの都道府県で新規感染者数の8割弱を占めている。大都市圏の感染拡大は、最近の地方における感染の発生にも影響していると考えられ、大都市における感染を早急に抑制しなければ、地方での感染を抑えることも困難になる。

国・自治体等が一体感を持って発信し、市民の協力を得て感染拡大抑制を

東京をはじめとする首都圏では1月7日に緊急事態宣言が発出された。首都圏だけでなく関西圏、中京圏でも感染が急速に拡大。医療提供体制や公衆衛生体制の厳しい状況が続いていることに加え、地方での感染拡大の波及をおさえるために、こうした大都市圏において、早急に感染を減少させるための効果的な対策の実施が求められる。また、首都圏に隣接する栃木、及び福岡において感染が急速に拡大しており、適切に対策を実施することが必要と考えられる。

感染拡大が続き、、公衆衛生体制は非常に厳しい状況となっており、速やかに新規感染者数を減少させることが必要。併せて、現下の医療提供体制が非常に厳しく、こうした状況が続くことも想定される中で、2020年末にとりまとめられ、支援内容も拡充された「医療提供体制パッケージ」も活用し、必要な体制を確保することが必要だ。

感染拡大の抑制には、飲食店の営業時短やイベントの制限に加え、市民の協力が不可欠。不要不急の外出の自粛や感染につながりやすい形での飲食の自粛は、感染防止のためには20時以前であっても重要だ。また、テレワークの実施など接触機会の削減が重要である。そのためのメッセージを国・自治体等が一体感を持って発信することが必要。

また、緊急事態措置による効果を、新規感染者数、、医療体制への負荷などで分析・評価し、それに基づき継続的に対策の在り方を検討するとともに、解除後も直ちに急速な再増加につなげないことが重要だ。さらに、国内の厳しい感染状況の中で、検疫全体の強化を行うとともに、英国等で見られる変異株の流入による感染拡大を防ぐことが必要である。引き続き、変異株の監視を行うとともに、感染者が見つかった場合の積極的疫学調査の実施が求められる。また、ブラジルからの入国者から発見された変異株も含め、個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、3密の回避、マスクの着用、手洗いなどが推奨される。

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