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N95マスクに静電気をリチャージする手法を開発-東大

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2020年12月21日 AM11:30

新型コロナの影響で、世界中のN95マスクが不足

東京大学は12月17日、一度失われたN95マスクの静電気をヴァンデグラフ起電機でリチャージする手法を開発したと発表した。この研究は、同大生産技術研究所の杉原加織講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Soft Matter」に掲載されている。


画像はリリースより

N95マスクは、メルトブローと呼ばれる手法で作成される、静電気を帯びたポリプロピレン・マイクロファイバーが主原料となっている。このポリプロピレン・マイクロファイバーはメッシュの穴の大きさは数マイクロメートル程度であるため通気性があり、マスクに加工した場合はこの素材を通して息をすることが可能であるが、くしゃみをした時の飛沫のような穴の大きさより小さい粒子も捉えることができる。飛沫は多くの場合帯電しているため、ポリプロピレンの電荷と相互作用し、吸着などによりフィルターすることができるという仕組みだ。

新型コロナウイルス感染症の影響で、世界中でN95マスクが不足し問題となった。特に日本は国内で製造できる箇所が限られており、マスクを輸入に頼っているため、過度な供給不足が発生した。この問題を受け、世界中の研究機関がN95マスクの再利用方法について研究を報告しているが、静電気を保ちつつウィルスを不活性化させる最適な方法はまだ見つかっていない。

煮沸などにより一度失われた静電気を、ヴァンデグラフ起電機でリチャージ

今回研究グループは、煮沸などにより一度失われた静電気を、ヴァンデグラフ起電機と呼ばれる安価で安全な装置を用いてリチャージする手法を開発した。

N95マスクは一般的に3枚構造をしており、ポリプロピレン・マイクロファイバーが保護膜により挟まれている。マスクの静電気とは、正確にはマスクに帯電している電荷のことであるが、電位測定器という装置を用いてその電荷が作る電位を測定することで強さを調べることができる。電位測定器はマスクとセンサの距離を一定にして測定する必要があるため、この距離を固定する器具を作成した。

この器具を用いてマスクの静電気を測定したところ、製造会社や保存方法などで差が見られるものの、ポリプロピレンの表面には負の帯電が見られた。これらのマスクを、使用後の再利用を再現するために、オートクレーブ、洗浄、煮沸などの手法を用いて滅菌すると、静電気が落ちる様子が観測された。

ウイルス不活性化の過程で一度失われたマスクの静電気について、ヴァンデグラフ起電機によるリチャージを試みた。ヴァンデグラフ起電機は、内蔵されるモータがベルトを回すことで摩擦に起因する静電気を作り出し、大きな金属の球に負の電荷を、小さな金属の球に正の電荷を貯める装置である。その2つの球の間にマスクを挟み放電させることで静電気をマスクに移すことができる。この手法でリチャージすることにより、一度はほぼ完全に失われたマスクの静電気が復活することを確認。これによりフィルター能力も回復することが確認できている。

安全、安価にN95マスクを再利用できる可能性

煮沸の時のマスクの変形などまだ課題は残るものの、この発見により安全、安価にN95マスクを再利用する方法が確立できる可能性がある。ポリプロピレン・マイクロファイバーはマスク以外にも、空気清浄機などさまざまなフィルターとして使用されている。今後は、ヴァンデグラフ起電機を用いたポリプロピレン・マイクロファイバーの再利用手法を、マスク以外にも他の分野で応用することで、ゴミを減らし素材の再利用を促すようなサステイナブルな技術を提供していきたいと考えている、と研究グループは述べている。

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