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HTLV-1キャリア妊婦、胎盤細胞がウイルス感染源として機能する可能性-感染研ほか

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2020年10月21日 PM12:15

明らかでなかった「母乳」以外の母子感染経路の詳細

)は10月20日、)感染者()の組織におけるウイルスの高感度検出法を確立し、キャリア妊婦の胎盤内にHTLV-1が感染しやすい細胞が存在することを世界で初めて示したと発表した。この研究は、国立感染症研究所血液・安全性研究部の手塚健太主任研究官、浜口功部長、長崎大学医学部産婦人科の淵直樹客員研究員、三浦清徳教授ら、同大病院検査部の研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「The Journal of Clinical Investigation」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

HTLV-1は、重篤な造血器腫瘍である成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)や、慢性の神経疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因ウイルス。日本には約80万人のキャリアが存在すると推定されている。HTLV-1は、主にキャリアの母乳を介して次世代の児に母子感染することが知られており、人工栄養法(ミルク)を選択したり、母乳栄養法を工夫したりすること(母乳を与える期間を短くする、搾乳して一度母乳を凍結するなど)によって母子感染を高いレベルで制御可能であることがわかっている。

一方で、完全な人工栄養法を選択した児の一部にも母子感染が認められることから、母乳以外の感染経路の存在が示唆されていたが、その詳細は明らかになっていなかった。母子感染の適切な予防法の確立のためには感染経路の理解は不可欠であり、この課題を解き明かすことが望まれている。

キャリア妊婦の胎盤組織調査、半数以上でHTLV-1ウイルス核酸検出

病原体の感染経路を研究するためには組織における感染細胞の挙動を探ることが有効だが、HTLV-1は体内でのウイルス遺伝子の発現量が極めて低いため、従来の手法では困難だった。そこで研究グループは今回、ウイルス核酸を高感度かつ高精度に検出する新たな手法を開発。組織中の感染細胞を可視化することに成功した。

この新手法を用いてキャリア妊婦の胎盤組織を詳細に調べた結果、半数以上の例でHTLV-1ウイルス核酸が検出されることが判明した。

母乳以外の母子感染経路、胎盤絨毛にあるHTLV-1に感染した栄養膜細胞が主要な役割を果たす可能性

さらに、多くのキャリア妊婦(97.6%)では胎児の血液である臍帯血にHTLV-1が検出されないものの(臍帯血陰性例)、一部のキャリア妊婦(2.4%)では臍帯血にHTLV-1が検出されることを見出した(臍帯血陽性例)。このような妊婦の胎盤絨毛組織では、臍帯血陰性例と比較してウイルスRNAを発現する細胞数が顕著に多く、胎内においてより多くの細胞でウイルス遺伝子発現が活性化した状態を維持していることが示唆された。

胎盤では、母体の血液からグルコース等の栄養素を受け取り、胎児へと供給する絨毛組織が発達している。絨毛組織は、血液胎盤関門と呼ばれる、母体と胎児の血液を隔てる機能も担っている。血液胎盤関門を主に構成する細胞群(栄養膜細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞)を培養シャーレ上に分離して解析したところ、栄養膜細胞において、HTLV-1の主要な感染受容体を高発現していること、HTLV-1に対して易感染性を示すこと、HTLV-1に感染した栄養膜細胞はウイルス粒子を活発に産生することが明らかになった。

さらに、動物モデルを用いた検討の結果、HTLV-1に感染した栄養膜細胞は標的T細胞へ効率的にHTLV-1を伝播させたことから、体内でのHTLV-1の感染源として機能し得ることが示唆された。

続いて、従来の免疫染色法と今回開発した新手法を組み合わせてキャリアの胎盤を解析。その結果、実際の組織である胎盤内においてもHTLV-1感染の標的となっている細胞は栄養膜細胞であることが確認された。

これらの知見より、母乳以外のHTLV-1の母子感染経路として胎盤を介する経胎盤感染の存在が示唆され、胎盤絨毛に存在するHTLV-1に感染した栄養膜細胞はその主要な役割を果たしていると考えられる。

開発したHTLV-1高感度検出法はさまざまな研究領域に活用可能

今回研究の成果は、これまでほとんど未解明であった「HTLV-1の母乳を介さない母子感染経路とそれに関わる特殊な細胞を同定する」というウイルス学上の基盤的な情報であり、HTLV-1の母子感染対策や関連疾患の予防法の発展・開発につながる重要な発見であると考えられる。

また、今回開発に成功した組織中でのHTLV-1高感度検出法はさまざまな研究領域に活用可能であり、HTLV-1感染症の克服に向けた力強いツールになることが期待される、と研究グループは述べている。

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