医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 高い殺菌力をもつ波長222nmの紫外線が、皮膚や目に安全であることを確認-神戸大ほか

高い殺菌力をもつ波長222nmの紫外線が、皮膚や目に安全であることを確認-神戸大ほか

読了時間:約 1分56秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年03月31日 AM11:45

現在使用されている254nm殺菌ランプは人体に有害

神戸大学は3月30日、高い殺菌力を持つ222nmの紫外線(-C)を反復照射しても、皮膚がんが発症しないことなどを世界で初めて実証し、ヒトの皮膚や目にも安全であることを報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野の錦織千佳子教授、国定充講師、山野希大学院生らと、ウシオ電機株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Photochemistry & Photobiology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

UVC(波長280~200nm)はオゾン層で吸収されるため、地表には届かない。しかし、その強い殺菌力を人工的に活用するため、UVCの中でも波長254nmを照射する殺菌ランプが開発され、使用されている。その254nm殺菌ランプは強い殺菌力を持つ反面、皮膚がんや白内障を生じさせるなど人体に対して有害性が強いことから、これまでは照射中はヒトが立ち入れない場所でのみ使用されてきた。

今回の実験で使用したランプは、254nmよりさらに短い波長である222nmを照射するランプで、医療での活用を想定して開発が始まったもの。222nmは、254nmと比べて、実際にヒトの皮膚表面において、254nmと遜色ない殺菌力を有することが神戸大学大学院医学研究科整形外科学講座(黒田良祐教授)で報告されていたが、医療現場では人体に対して直接、かつ繰り返し照射する可能性があるため、発がん性などその安全性についての検証が必要だった。

222nmは角質細胞層までしか到達せず表皮細胞のDNAを損傷させないため無害

今回、研究グループは、紫外線に対して非常に感受性が高く、野生型マウスに比べて約1万倍皮膚がんになりやすいとされる色素性乾皮症A群モデルマウスに対して222nm殺菌ランプを繰り返し照射し、皮膚と目についての安全性を検証。その結果、222nm殺菌ランプ照射群マウスでは皮膚がんが全く出来なかった。目については島根大学眼科学講座(谷戸正樹教授)の協力のもと検証を行い、顕微鏡での観察レベルでも全く異常が出ないことを確認した。対照として、太陽光中の皮膚がんを起こさせる波長であるUVB(波長 280~315nm)を照射した群では、すべてのマウスに皮膚がんができ、また角膜の損傷や白内障などの影響も広範に認められた。

また、222nmが無害であった理由は、その深達度にあることがわかった。皮膚においては、従来の紫外線が皮膚の表皮の基底層という一番下層にまで到達し、細胞のDNAを損傷させてしまうのに対し、222nmは角質細胞層という極めて表層の(垢になる)部分までしか到達しないため、表皮細胞のDNAを損傷させないことが明らかになった。

今回の研究成果によって、222nmは強力な殺菌力を有しながらも人体の皮膚に直接照射できることが明らかになった。研究グループは、「今後、医療現場での手指消毒を始め、学校や介護施設、食品工場、トイレやキッチンなどヒトが立ち入る場所において、殺菌やウイルスの不活化を目的とした幅広い用途拡大が期待できる」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 脊髄損傷、HGF遺伝子発現制御による神経再生の仕組みを解明-藤田医科大ほか
  • 抗がん剤耐性の大腸がんにTEAD/TNF阻害剤が有効な可能性-東京医歯大ほか
  • 養育者の食事リテラシーが低いほど、子は朝食抜きの傾向-成育医療センターほか
  • 急速進行性糸球体腎炎による透析導入率、70歳以上で上昇傾向-新潟大
  • 大腿骨頭壊死症、骨粗しょう症薬が新規治療薬になる可能性-名大