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脳の記憶と学習に重要なAMPA型グルタミン酸受容体が働く仕組みを解明-京大ほか

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2019年11月25日 AM11:45

AMPA受容体は四量体のまま移動するのか?

岐阜大学は11月20日、脳の記憶と学習に重要な働きをするタンパク質分子であるAMPA型グルタミン酸受容体が働くときに、どのように分子が組み立てられて働くのかを解明したと発表した。この研究は、京都大学大学院医学研究科 岡昌吾教授、森瀬譲二同助教、岐阜大学研究推進・社会連携機構 生命の鎖統合研究センター(G-CHAIN)鈴木健一教授、 楠見明弘教授(後者2人は、京都大学物質・細胞統合システム拠点であるiCeMS客員教授兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトの神経細胞同士の結び目にあるシナプスは、一旦形成された後も環境因子や学習などの神経活動によって変化することが知られており、シナプス可塑性と呼ばれる柔軟性を持っている。シナプス可塑性の分子機構を明らかにすることは、学習記憶の分子基盤の理解、また、シナプスに病変があるさまざまな神経疾患の病態解明にも、とても重要な研究課題とされている。

AMPA型グルタミン酸受容体は4つのサブユニット(GluA1-4)から成り、四量体で機能するイオンチャネル型受容体で脳内の興奮性シナプスの可塑性に特に重要な分子である。神経活動に応じてAMPA型グルタミン酸受容体は、シナプス後部での数やサブユニットの組み合わせが変化し、これによりシナプスでの伝達効率が変化する。AMPA受容体はシナプス後部で働くが、その主要な供給源はシナプス領域外の樹状突起膜と考えられている。そのため、AMPA受容体は神経活動に対応し、樹状突起膜からシナプス後部への素早い移動が必要となる。これまで、AMPA受容体は小胞体内で四量体が構築された後、細胞膜へ運ばれても依然安定な四量体として移動すると考えられてきた。しかし、この定説には疑問点が複数挙げられており、AMPA受容体は四量体の形では神経細胞膜上をほとんど動かないという報告もある。また、神経活動に伴い、サブユニットの組成が異なる受容体がシナプスに出現するが、四量体が安定していると、不要な受容体をシナプスから追い出し、全く新しい組み合わせの四量体を合成してシナプスまで運ぶ必要がある。これには多大な時間とエネルギーや原材料などのリソースが必要で、組成の異なる受容体に取り替えるのは非常に困難と予想される。

研究グループは過去に、ゴルジ体での糖鎖修飾がAMPA受容体の四量体構成を大きく変えることを見出しており、この結果は、以前からの定説が間違っている可能性を示唆していた。

バラバラになったり、くっついたりを繰り返して移動していた

研究グループは今回、本当に細胞膜上のAMPA受容体が四量体として存在するのか、同研究グループが開発した最先端の1蛍光分子イメージング法を改善して応用し、AMPA 受容体サブユニットの1分子観察を行った。

まず、AMPA受容体を持たないHEK293細胞膜上で、蛍光標識AMPA受容体を観察。この条件では、すべてのAMPA受容体分子を見ることが可能だ。すると、四量体以外にも、単量体がたくさん発見された。加えて、その四量体も安定的ではなく、単量体が集まっては一過的に四量体を形成し、0.1~0.2 秒後には再び単量体・二量体・三量体へ分かれていく様子が極めて明瞭に観察された。四量体の寿命は0.1~0.2秒だが、その間にイオンチャネルとして働くことも判明した。同様に、神経細胞でも蛍光標識AMPA受容体を観察。その結果、樹状突起膜上では、多くが単量体(または一部二量体)として高速で動いてシナプス内に入り込むこと、また、シナプスから出ていくときも単量体として素早く出ていくことがわかった。

シナプス内では、多数のAMPA受容体のサブユニットが濃縮されている。そのため、単量体はすぐに四量体となるが、四量体の寿命は0.1~0.2秒なので、すぐに分解する。四量体が分解する速度は決まっているものの、サブユニット濃度が高いと単量体同士がぶつかる機会が増え、単量体ができるとすぐに四量体となるため、各サブユニット分子は、シナプス内では、四量体として過ごす時間が増える。ただ、あくまでも、1個の四量体の寿命は変わらない可能性が高く、この四量体が、チャネルとして機能していると考えられた。

今回の研究で、研究グループはこれまでの定説を覆し、受容体の4つのパーツが0.1秒ほどでバラバラになり、それらがまたすぐに違うパーツと集まって4個で受容体を作って0.1秒間働き、またすぐにバラバラになるということを繰り返す、という仕組みで働いていることを明らかにした。また、この仕組みを使うことで、神経細胞は環境変化や刺激に応じて、直ちに適した受容体をシナプスで作ることができ、4つのパーツに分けて運ぶことで、シナプスに受容体を集めるのも素早くなることも判明した。

AMPA型グルタミン酸受容体は、てんかん発作の原因分子としても知られており、受容体のチャネル活性を制御する拮抗剤も治療薬として注目されている。研究グループは、「本成果により、学習記憶の分子機構の理解や、関連する疾患への新たな治療薬の開発につながることが期待される」と、述べている。

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