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インフルエンザの疫学と臨床現場2019、課題は耐性ウイルス-塩野義

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2019年10月30日 AM11:45

NA阻害薬はB型に対してA型ほどの有効性がない可能性

塩野義製薬株式会社は10月23日、インフルエンザに関するメディアセミナーを都内で開催。同セミナーでは、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班リサーチディレクターの池松秀之氏による「インフルエンザの疫学と臨床」と題した講演が行われた。


日本臨床内科医会インフルエンザ研究班
リサーチディレクター 池松秀之氏

講演で池松氏はまず、過去に日本臨床内科会が行った抗インフルエンザ薬の有効性の調査について解説。同調査は、迅速診断でA型かB型と診断された症例のうち、発症日時・抗インフルエンザ薬が初回投書された日時、発熱消失日時を把握でき、かつ発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬が投与開始された症例について、発熱時間と解熱時間を検討したもの。池松氏はデータを示しつつ、「わかったのは、抗インフルエンザ薬を早く投与した患者の方が、発熱時間が短いということ。さらに、発熱から治療開始までの時間が48時間以内であれば、治療の効果は大体同じであることも確認された」と、述べた。

また、B型が大流行した2004~2005年の調査により、(一般名:)はB型に対してA型ほどの有効性がない可能性も見出された。A型と比較してB型は、タミフル初回内服からの解熱時間と、発症からの解熱時間がともに長かったためだ。さらに、(一般名:ザナミビル)、イナビル(一般名:ラニナミビル)、ラピアクタ(一般名:ペラミビル)に関しても調査が行われた結果、ノイラミニダーゼ阻害薬4剤ともにA型の解熱時間は30時間、B型では40時間程度であることが確認されたという。

新作用「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害」で効くゾフルーザ、耐性の状況は?

抗インフルエンザ薬は、ノイラミニダーゼ阻害薬として4剤が先行する中、昨年3月、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害という新しい作用機序を持つ抗インフルエンザ薬「(一般名:)」が発売され大きな注目を集めた。重症化および合併症を起こしやすいリスク要因を持たない健常なインフルエンザ患者1,436人を対象に行ったCAPSTONE-1試験で同剤は、インフルエンザ症状の罹病期間をプラセボに対して有意に短縮し、タミフルと変わらない効果を示した(中央値:ゾフルーザ53.7時間、プラセボ80.2時間、p<0.0001)。日本臨床内科医会の調査でも、同臨床試験と同様に、タミフルとゾフルーザとでA型インフルエンザウイルスに対する効果がほぼ同じという結果が示されている。

このようにゾフルーザは、有効性で注目を集めた一方、インフルエンザウイルスの変異による耐性に関しても注目されている。

ゾフルーザ投与患者におけるI38変異ウイルスの検出頻度に関し、複数の臨床試験の結果が報告されている。第2相T0821試験では、健康成人182例中4例(2.2%)、第3相T0831試験では、健康成人370例中36例(9.7%)、第3相T0822試験では、12歳未満小児77例中18例(23.4%)、T0832試験では、ハイリスク患者290例中15例(5.2%)で変異ウイルスが検出されたという結果だった。

池松氏は、「この割合がどれほど重要な意味をもつかはわからないが、治療後とはいえ、変異ウイルスが検出されたことは事実。タミフルでも、小児に対して感受性低下の耐性ウイルスは確認されているが、まだ臨床への影響はそれほどない。I38変異ウイルスが、治療前にどのくらい広がるのか、この耐性ウイルスが、ゾフルーザによる治療にどのくらいの影響があるのか、注意深くみていく必要はある」と、見解を述べた。また、変異ウイルスに対する臨床試験の事後解析について、「解析した対照群に、プラセボ群や他剤との比較がなければ、変異が出ることの臨床的な意義に関して検討することは難しい」と、述べた。

社会的影響も含め、今後十分な調査が必要

国立感染症研究所のインフルエンザ耐性サーベイランスでは、A型(H3N2)に対してゾフルーザによる変異ウイルスが9.0%と発表された。これに対して池松氏は「変異ウイルスが検出されたものの、臨床的な予後はどうなったのかなどは明らかにされていない。H3N2において、ノイラミニダーゼ阻害薬では耐性ウイルスは見つからないのに、ゾフルーザでは一定の頻度で見つかる。この割合は、調べればもっと高くなる可能性がある一方、耐性ウイルスにより予後が悪くなるという証拠もまだ見つかっていない」としたうえで、「今回、小児だけではなく高齢者にも耐性ウイルスが見つかっているので、社会に与える影響に対しても十分調査する必要はある」と、解釈および見解を述べた。

また、ゾフルーザ未投与の患者5例から耐性ウイルスが検出され、うち1例ではヒトからヒトへの感染が確認されたことに対しては、「免疫システムから逃れるようなことがあるのなら注意が必要。しかしまだ症例数が少ないため、使用をやめるというのも行き過ぎで、これから注意深く調査を進めていく必要がある」と、意見を述べた。

日本感染症学会は10月24日、「ゾフルーザの低感受性ウイルスの出現頻度が高い12歳未満の小児に対する慎重投与」を提言。日本小児科学会も、同月に公表した2019/2020シーズンのインフルエンザ治療指針の中で、「12歳未満の小児への積極的な投与を推奨しない」としている。小児に対するゾフルーザ慎重投与の意見が多いことを受け、塩野義は今後、サーベイランスへの協力や、学会・医療機関への情報提供を行っていくとしている。

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