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「目の動き」の解析で認知機能評価、新技術を開発-阪大

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2019年09月13日 PM12:00

認知機能検査における医師、患者への負担軽減

大阪大学は9月10日、目の動きを解析することで簡単に認知機能を評価できる新技術を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の大山茜医師、武田朱公寄附講座准教授、森下竜一寄附講座教授(臨床遺伝子治療学)らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

認知症は、早期発見後、予防的な取り組みを行うことで発症予防ができるとされているが、認知症の急増が世界各国で社会問題となっている。これまで認知症の診断は、医師との対面方式による問診法をベースにした認知機能評価をもとに行われてきた。この方法では検査に時間がかかる上、検査を受ける人の心理的負担が大きいことなどが問題となっており、より簡便に認知機能を評価できる手法の開発が望まれている。しかし、問診法以外の方法で認知機能を正確にスコア化することは難しく、効率的な認知症スクリーニングは難しいとされてきた。

「約3分間の映像を眺めるだけ」の検査法、世界中に広まる可能性

研究グループは、「目の動き」を解析することで簡便かつ客観的に認知機能を評価する全く新しい検査方法の開発に成功した。赤外線カメラ等を用いて被検者が画面上のどこを見ているかを高精度に検出・記録する「視線検出技術」(Eye-tracking)と、「認知機能タスク映像」を組み合わせ、独自に開発したアルゴリズムによって視点データから認知機能を定量的に算出する。認知機能タスク映像は、ワーキングメモリー、判断力、記憶、空間認知機能などの各認知機能を評価するためのタスク映像で、各タスク映像は複数の画像などから構成され、その中の正解画像を注視した時間に基づいてスコアが算出される仕組みになっている。被験者はモニターの前に座り、タスク映像を2分50秒間眺めるだけ。検査に伴う心理的ストレスも大幅に軽減され、従来の標準的な認知機能検査法の結果とも高い相関を示すことが確認されており、信頼性も高いといえるという。

この新技術は、目の動きを利用した客観的な検査法であるため、言語の壁を超えたグローバルスタンダードの認知機能検査法として発展する可能性もあると考えられる。また、認知症の簡便なスクリーニング検査法としてこの新技術が役に立つ可能性は高い。「専門医師以外でも簡単に負担なく認知機能のチェックを行うこともできるようになるため、住民健診レベルでの認知機能チェックや、最近社会問題となっている高齢者の運転事故の問題解決などにも役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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