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免疫機能を正常に保つ分子機構を解明-愛媛大

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2018年08月22日 AM11:45

T細胞の疲弊や老化を防ぐ働きを持つタンパク質「

愛媛大学は8月16日、タンパク質「(Menin)」がT細胞の疲弊や老化を防止し、免疫機能を正常に保つメカニズムを世界で初めて解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の山下政克教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」に掲載され、オンライン版で公開されている。


画像はリリースより

リンパ球の一種であるT細胞の機能は、老化とともに低下し、それが高齢者における疾患の増加と関連していることがわかっている。また、がん細胞やある種のウイルスは、T細胞に疲弊や老化を誘導することによりその機能を減弱させ、免疫システムから逃れていることが報告されていることから、T細胞機能を正常に保つ(維持する)ことが、疾患の発症予防につながり、健康長寿の達成のためにも非常に大切であると考えられる。

しかし、T細胞機能を維持するメカニズムは複雑で、不明な点が多く残されていた。また、研究グループでは、これまでにMeninがT細胞の疲弊や老化を防ぐ働きを持っていることは見つけていたが、そのメカニズムについては解明されていなかった。そこで今回研究グループは、T細胞機能を維持する生体メカニズムを解明し、T細胞機能の減弱によって引き起こされる免疫力低下を防ぐための方法論を確立することを目的とした研究を実施したという。

mTORの過剰な活性化でグルタミン代謝が亢進

Meninを持たないT細胞を詳しく調べたところ、細胞の代謝を調節する分子mTORの過剰な活性化によってグルタミン代謝が亢進し、細胞内のα-ケトグルタル酸()濃度が上昇することで、細胞傷害性T細胞に疲弊や老化が誘導され、機能低下が起きることを解明。また、グルタミン代謝を適度に制限することで、T細胞の機能を維持できる可能性が示唆された。これらの成果から、グルタミンの代謝を標的とすることで、効果的な感染予防ワクチンや、新しいがん免疫細胞療法が将来的に開発できる可能性や、T細胞の疲弊や老化を防止して免疫力の低下を回避できる可能性があることが初めて示されたとしている。

近年、低容量のラパマイシン(mTOR阻害薬)投与により高齢者の免疫機能が向上することが、他の研究グループから報告されている。T細胞でのグルタミンの代謝制限が、ヒトにおいて免疫機能の低下を防止できるかはまだ不明だが、今後ヒトのT細胞を用いた解析を進めることで、その可能性を明らかにしていきたい、と研究グループは述べている。

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