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大腸がんの腫瘍内多様性の獲得原理を説明する進化モデルを構築-九大ら

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2018年07月26日 PM12:15

がんの難治性の一因と考えられる腫瘍内多様性

九州大学は7月24日、大腸がんの腫瘍内多様性の獲得原理を説明する新たな進化モデルを構築したと発表した。この研究は、同大病院別府病院の三森功士教授の研究グループが、東京大学の宮野悟教授、新井田厚司助教、大分大学の村上和成教授、齋藤衆子医員らと共同で行ったもの。研究成果は「Nat Commun」に掲載された。


画像はリリースより

一人のがん患者の腫瘍の中には、異なる遺伝子変異をもつ複数の細胞集団が存在する。この現象は腫瘍内多様性と呼ばれ、がんの難治性の一因と考えられているが、腫瘍内多様性の獲得原理の詳細については解明されていない。

今回、研究グループは、先行研究(Uchi R.,et al. PLoS Genet. 2016)で取得した進行大腸がんデータに加えて、早期大腸がん患者10人から得た各腫瘍の複数箇所から次世代シーケンサーを用いて包括的遺伝子変異データを取得し、両データを合わせてスーパーコンピュータを用いた数理統計解析を行った。

「ダーウィン進化」から「中立進化」に進化パターンが変化

解析の結果、早期がんでは、がん細胞の増殖や生存に有利に働く複数のドライバー変異が一腫瘍内に散在し、自然選択を受ける「ダーウィン進化」から、進行がんでは、がん細胞の増殖や生存に影響を与えない無数の中立変異が蓄積する「中立進化」によって、腫瘍内多様性が創出されており、進化のパターンは変化していることがわかったという。また、早期がんに比べて進行がんでは、有意に染色体コピー数異常が多いことが明らかとなり、染色体コピー数異常がこの「進化シフト」の引き金となっている可能性を見出したとしている。

今回の研究では、「ダーウィン進化」から、「中立進化」へ腫瘍内多様性の獲得原理が「進化シフト」を起こすことで難治化することが発見された。こ研究グループは「腫瘍内多様性をともなう難治がんを克服する次世代のがん治療法開発の基礎になるものと期待される」と述べている。(大場真代)

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