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抗凝固薬服用中の脳梗塞への超急性期rt-PA静注療法の新たな推奨掲載-国循

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2018年01月31日 PM12:30

抗凝固薬服用患者へのrt-PA静注療法の新たな適応基準

国立循環器病研究センターは1月29日、「抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨」の新たな推奨と解説(2017年11月版)の内容の一部を掲載した。この推奨は、国循の豊田一則副院長が作業部会長、脳卒中集中治療科の古賀政利医長、山上宏医長、脳血管内科の宮田敏行シニア研究員(前:研究所病態医科学部門長)らが部会員となり、日本脳卒中学会脳卒中医療向上・社会保険委員会「抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨」作業部会によって作成されたもの。2017年11月版は、2017年12月25日に学会ホームページに掲載されていた。なお、学会機関誌「」にも掲載される予定。

)を用いた静注血栓溶解療法は、2005年に国内で認可されて以降、救命率向上や後遺症の低減などに大きく寄与してきた。一方で、rt-PAの血栓を溶かす作用は、頭蓋内出血などの出血合併症の危険を高めるため、同じく出血合併症の危険を高め得る抗凝固薬を服用中の患者にrt-PAを用いることには制約がある。

2012年に学会は「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針 第二版」を作成し、その中で抗凝固薬を服用中に起こった脳梗塞へのrt-PA静注療法の適応を詳しく記載。しかし当時は、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンといったダビガトランやXa阻害剤などの新しい直接作用型経口抗凝固薬()が承認されたばかりだったため、これらの薬剤を服用中に起こった脳梗塞への適切な対応法が明らかでなかった。その後、一部の抗凝固薬には、その効果を急速に打ち消して出血合併症の発現や進行を防ぐ中和薬が新規承認されるなど環境が大きく変わったため、抗凝固薬服用患者へのrt-PA静注療法の新たな適応基準が求められていた。

ダビガトラン内服中のrt-PA静注療法施⾏の指針も


画像はリリースより

今回の推奨の要点は、「直接作用型経口抗凝固薬の最終服用後4時間以内であることが確認できた場合には、rt-PA静注療法の適応外とみなしたこと」、「各抗凝固薬の効果を中和薬を用いて緊急是正した後にrt-PA静注療法を行うことの適否を解説したこと」。提言には、12項目の推奨事項を記載している。

国循による今回のリリースでは、推奨事項の中でとくに注目される点として、ダビガトラン服用患者における推奨を挙げている。2016年11月より国内で販売開始したダビガトランの中和薬であるイダルシズマブは、ダビガトランの効果だけを選択的に失効させ、凝固系全体には影響を与えないと考えられている。ダビガトラン服用患者が脳梗塞を起こした際に、そのままrt-PA静注療法を行うと頭蓋内出血を招く危険が高くなるが、イダルシズマブを用いてからrt-PAを投与すると、このような危険を避けられる可能性がある。そこで同作業部会は、フローチャートを作成。このフローチャートが今後の超急性期脳梗塞治療の指針として広く活用されることが期待されるとしている。

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