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統合失調症病態に強い関連を示すアミノ酸配列変異の存在を世界で初めて同定-名大ら

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2017年08月25日 PM01:00

22q11.2欠失領域に存在するRTN4R遺伝子内に

名古屋大学は8月23日、統合失調症発症の最大のリスクである22q11.2欠失領域に存在するReticulon 4 receptor(RTN4R)遺伝子内に、統合失調症病態に強い関連を示すアミノ酸配列変異(RTN4R-R292H)が存在することを、世界で初めて同定したと発表した。この研究は、同大大学大学院医学系研究科精神医学講座の尾崎紀夫教授、AleksicBranko准教授、木村大樹助教らの研究グループが、大阪大学大学院医学系研究科生命機能研究科の山下俊英教授、同蛋白質研究所の中村春木教授らと共同で行ったもの。研究成果は「Translational Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより

RTN4Rは、統合失調症の発症に強い関連が知られる22q11.2欠失症候群を引き起こすゲノムコピー数変異(Copy Number Variant:CNV)である染色体22q11.2領域内に存在している遺伝子で、Nogo受容体をコードしている。Nogo受容体は、LINGO1などの他タンパク質と受容体複合体を形成し、ミエリンに存在するNogoの影響を受けて、神経細胞軸索の伸張に関与することが知られている。そのため、統合失調症の病態と関連していることが想定されていたが、これまでRTN4R遺伝子内に存在する遺伝子変異と、統合失調症との関与は、明らかにされていなかった。

統合失調症患者約2,000名を多施設共同でゲノム解析

研究グループは、統合失調症患者約2,000名と、健常対象者約4,000名を対象に多施設共同でゲノム解析を実施した結果、RTN4R-R292H変異が統合失調症の発症率を4倍程度高めることを明らかにした。変異を有する患者間で共通する症状の特徴は見出されなかったが、計算機によるタンパク質の立体構造モデルにより、RTN4Rと結合して機能する分子である LINGO1との相互作用部位にRTN4R−R292Hが存在し、RTN4R−R292HによりLINGO1との相互作用が変化することが予想された。その後実施した細胞レベルのinvitro機能解析により、同変異はLINGO1との結合性の低下を起こすこと、また神経細胞の成長円錐の形成に影響を与えることが判明したという。

今回の研究により同定された一塩基変異は、統合失調症の神経発達障害仮説を支持し、統合失調症の病態を説明するうえで有望な変異であり、今後、治療薬や診断方法の開発に応用されることが期待される、と研究グループは述べている。

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