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核移植クローン技術で高感受性アレルギーマウスを作製-理研

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2017年05月16日 PM01:30

アレルギーの予防・治療法の開発に欠かせない実験動物

理化学研究所は5月12日、核移植クローン技術を用いて高感受性アレルギーモデルマウスを作り出すことに成功したと発表した。この研究は、理研バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎室長、井上貴美子専任研究員、神沼修客員研究員、佐伯真弓客員研究員、塩野義製薬株式会社創薬疾患研究所癌・免疫部門の形山和史免疫・炎症グループ長らの共同研究グループによるもの。研究成果は、欧州科学雑誌「EMBO Reports」に5月2日付けで掲載されている。


画像はリリースより

花粉や食物など特定の抗原に対するアレルギーは、体内に侵入した抗原が、CD4陽性T細胞の表面にあるT細胞受容体(TCR)に結合して、生体防御を目的としたさまざまな反応を引き起こす。アレルギー患者の体内では、この抗原反応性CD4陽性T細胞が増殖し、過剰な反応が起きるためにアレルギー症状が現れる。

このようなアレルギーの発症機構を解明し、予防・治療法を開発するには、モデルとなる実験動物が欠かせない。しかし、アレルギー患者の体内で生じている特定の抗原反応性CD4陽性T細胞の増加状態を、実験動物の体内で再現することは困難だったという。

わずか数回の抗原投与で、重篤なアレルギーを発症

今回、研究グループは、マウスにダニ抗原、または卵白抗原を注射して抗原に敏感な状態にすることで、抗原に特異的に反応するT細胞のみが活性化されて増殖する性質を利用。抗原感作マウスのリンパ節から取り出した細胞から目的のCD4陽性T細胞を増殖させた。その際、核移植クローン実験には静止期の細胞が必要なことから、いったん増殖させた抗原反応性T細胞を静止期に誘導したという。

こうして得られたCD4陽性T細胞を核ドナー細胞として核移植クローンを行ったところ、これまでに18匹のクローンマウスが誕生し、うち11匹が成体に成長したという。これらのクローンマウスからT細胞を取り出して、ドナーT細胞の培養に用いた抗原と一緒に培養したところ、そのうち8匹のT細胞が抗原を認識して活性化されたことを確認。これらのマウスを正常マウスと交配すると、抗原反応性TCR遺伝子は子孫に伝達され、クローンマウス由来のマウス系統を樹立できたとしている。

次にこれらのマウスに対し、ダニ抗原あるいは卵白抗原を投与。その結果、1~2週間以内に、わずか数回の投与で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に似た重篤なアレルギーを発症。ダニ抗原反応性CD4陽性T細胞由来のクローンマウス系統では、ダニ抗原の投与によって気管支肺胞領域に強い炎症が生じ、気道上皮の肥厚およびリンパ球や好酸球の浸潤が観察され、気道過敏性の亢進がみられた。また、卵白抗原反応性CD4陽性T細胞由来のクローンマウス系統では、卵白抗原の投与によって鼻粘膜にリンパ球や好酸球が浸潤し、鼻粘膜過敏性の亢進がみられたという。

これまで、TCRはα鎖とβ鎖が二量体を作ることによって初めて抗原反応性を示すとされていたが、クローンマウス系統では、抗原反応性TCRα鎖またはβ鎖のどちらかだけを発現するマウスでも、アレルギー症状が強まることが判明。さらに、核移植に用いたT細胞に発現する抗原反応性TCRの違いによって、T細胞の反応性やサイトカイン産生パターンが異なり、引き起こされるアレルギー・免疫反応が異なることもわかったという。

今回開発された高感受性アレルギーモデルマウス系統は、正常な繁殖能力を持ち、研究室で容易に飼育・維持が可能だという。また、今回はダニ抗原と卵白抗原を特異抗原に用いたが、同様にスギ花粉など他の抗原でも特異的クローンマウスを作出できる。さらに、抗原特異的TCRα鎖とTCRβ鎖を別々に発現する個体・細胞を得ることが可能になったことにより、TCRを介したT細胞の活性化や分化機構の解明にも大きく貢献できる、と研究グループは述べている。

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