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免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会(Team ICI)を組織-九大病院

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2017年02月02日 PM05:15

自己免疫疾患の副作用報告があり、従来薬とは異なる安全対策が必要

九州大学大学院呼吸器内科学分野の中西洋一教授は1月30日、日本肺癌学会の第14回肺がん医療向上委員会で講演し、近年注目されている非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬について、「がんが免疫を支配していたということを、改めて我々に認識させた」との見解を示すとともに、「非小細胞肺がん治療で主役だった殺細胞性抗がん剤を、その座から引きずり下ろすパラダイムシフトを起こした」と語った。

中西氏は、免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(一般名:ニボルマブ)の自験例を基に、奏効例では高い腫瘍縮小効果、長い効果持続時間、全般的に副作用が少ないというメリットが多い一方で、奏功しない患者では「水のようなもの」と指摘。有効性を発揮しにくいとされる、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の患者に対して、8次治療として使用して有効だった症例を示しながら、「ドライバー遺伝子変異陽性症例では、今後どのような症例で有効性を発揮するのかを見極める必要がある」と語った。そのうえで質疑の中で、ドライバー遺伝子を有しながら免疫チェックポイント阻害薬が有効な症例については、「数は少ないとされているが、喫煙者でドライバー遺伝子を保有する症例には、有効な可能性があるのではないかという臨床上の感触を持っている」との見解を明らかにした。

一方で、これまでの治療薬になかった自己免疫疾患の副作用が報告されており、従来薬とは異なる安全対策が必要になったことから、中西氏は九州大学病院で、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬の適正使用を目的に「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」(通称:)を組織したことを発表した。

Team ICI、診療科・職域横断的に50~60人が参加

Team ICIは、現在オプジーボが適応、あるいは臨床試験中のがん種を担当する呼吸器内科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、血液内科、婦人科、消化器内科、腫瘍内科に加え、副作用対策で連携が必要な膠原病内科、神経内科、代謝内科、内分泌内科、眼科、さらに外来化学療法室、看護師、薬剤師、CRC、社会福祉士(SW)など診療科・職域横断的に50~60人が参加。ここで患者教育や副作用確認のツール、副作用対策ガイドラインなどを作製するとともに、症例検討なども行っている。

副作用確認ツールでは、患者自身がチェックしやすいように、平易な表現で副作用となる免疫性疾患の初期症状を表記。同ツール作成に当たって中西氏は「あくまで初期症状に気づかなければならないという観点から、有害事象として報告されている免疫性疾患の完成された症状ではなく、初期症状を記載した」との留意点を強調した。

副作用対策ガイドラインでは、免疫チェックポイント阻害薬を処方するがん種の専門領域ではなじみのない副作用の場合も念頭に、具体的な副作用に対する対症療法を詳細に記載。さらに副作用の対症療法で使用する薬剤についても、混乱を招かないよう院内で特定薬剤に統一した。

具体例では、大腸炎や重度な下痢が疑われるケースでは、大腸内視鏡を迅速に行い、自己免疫性の要因が疑われる場合は、潰瘍性大腸炎などで使用されているインフリキシマブ、感染性が疑われる場合は抗菌薬のホスミシンS、薬剤性肺炎(間質性肺炎)の場合はステロイドを使用し、それで効果不十分な場合には、免疫抑制作用を有するシクロホスファミドの使用を推奨することなどを定めた。

また、オプジーボの投与で死亡例も報告されている副作用で、自己免疫疾患でもある重症筋無力症では、死亡に至るケースは症状が呼吸筋に及んで呼吸不全となるクリーゼが原因となっている場合が多く、「神経内科から、クリーゼがステロイドの大量投与により惹起される可能性もあると指摘された」(中西氏)ことから、ステロイド投与に当たっては少量(プレドニゾロン5mg/日)から漸増するよう、副作用対策ガイドラインで規定したと解説した。(村上和巳)

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