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水に応答して薬剤を放出する新規の有機ナノカプセルを開発-産総研

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2016年09月15日 PM01:15

これまで2種類を開発も、量産化は容易でなく

産業技術総合研究所は9月13日、産総研機能化学研究部門界面材料グループの小木曽真樹主任研究員、丁武孝研究員らが、水に応答して薬剤を放出する新規の有機ナノカプセルを開発したと発表した。


画像はリリースより

水に濡れると機能を発揮する水応答性材料に対する需要は高い。例えば、水に濡れるとインクが発色して知らせる水没検知シールや乳児用おむつなどが知られている。化粧品分野では、水で濡れることで逆に皮膜を強くする技術などが開発されている。船底塗料には、海水により防汚物質を溶出させることで海洋生物の付着を防止するものが開発されており、通常タイプと比べて二酸化炭素排出量を4%以上削減できたという報告例もある。

さらに、湿気や光などで反応しない保護機能、必要とされる時間をかけて放出される徐放機能など、水応答性材料のさらなる機能向上が望まれている。しかし、均一サイズのナノカプセルを製造するためには、特殊な工程が必要なため量産性に難がある。また、親水性物質の封入率は高いが疎水性物質は低いこと、乾燥状態や有機溶媒中で不安定であることなどの課題もある。

産総研は、これまでナノサイズの棒状空間をもつ有機ナノチューブ材料の開発を行ってきた。開発した2種類のうち一方は、量産が可能であるが、外部刺激に応じて内容物を放出する機能を持たなかった。他方は、内容物を光やpHにより放出する機能をもっているが、構造が複雑なため量産化が容易でなかった。

薬剤をより効率よくカプセル化する技術の開発へ

そこで今回は、量産化が容易で、かつ刺激に応じて内容物を放出可能な有機ナノカプセル材料の開発を行った。カプセル化剤(アミノ酸誘導体)と亜鉛化合物を、室温でアルコールなどの有機溶媒中で混合操作するだけで、直径100~150ナノメートルと均一なサイズからなる有機ナノカプセルを製造できた。溶媒1L当たり100g以上のナノカプセルを数時間以内に得ることができるとしている。

このナノカプセルは、ろ過により溶媒と分離し、乾燥することが可能であり、乾燥後もカプセル構造は安定していた。製造時に目的物を混合しておくと、カプセル形成時にそれらを内部に封入することが可能。有機溶媒に溶解あるいは分散が可能であれば、親水性、疎水性を問わず封入できる。また、水が刺激となり内容物を放出する水応答性ナノカプセルであり、ナノカプセルの壁を形成する成分のひとつである亜鉛イオンが水和することで、カプセルの壁の構造が変化し、内容物を放出すると推測された。アルコール以外の有機溶媒では安定であり、トルエンやアセトンに1日間分散しても変化は起こらない。

芳香性物質を封入したカプセルを化粧品や制汗剤などに加えると、汗や雨水などで濡れた時に、目的の香りを放出できる可能性がある。また、自己修復物質を封入したカプセルを塗料に添加すると、塗膜に傷がつき、水が内部に侵入した際に目的物質が放出され塗膜が修復されるといった機能も期待できるとしている。今後は、薬剤などをより効率的にカプセル化する技術を開発するとともに、企業への試料提供などを通して、放出特性の評価や用途開拓を進める予定と、産総研は述べている。

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