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震災後の宮城、メンタルヘルスのリスクわずかに回復傾向-東北大

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2016年01月27日 PM12:30

2013~2014年度地域住民コホート調査に参加の2万4,000人を分析

東北大学は1月23日、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査について、2013~2014年度に宮城県内の特定健康診査会場などで参加した約2万人の結果を公表した。太平洋沿岸部地域で抑うつ傾向などメンタルヘルスのリスクが高い傾向が引き続き見られたが、わずかながらも回復傾向がうかがえたとしている。

同計画は、東日本大震災からの復興事業として計画。宮城県では東北大学、岩手県では岩手医科大学が事業主体となり、15万人の参加を目標とした長期健康調査(地域住民コホート調査8万人。三世代コホート調査7万人)を実施している。

東北大学東北メディカル・メガバンク機構では、2013年5月から地域住民コホート調査を開始し、2016年1月現在で5万999人が調査に参加。今回はそのうち、2013~2014年度に宮城県内の特定健康診査会場などで参加した2万4,703人分の採血・採尿、調査票の結果を分析した。

震災の心理的苦痛による慢性疾患の治療中断に懸念

調査結果によると、2013年度と2014年度で、調査の実施地域が異なるため、単純比較はできないが、2013年度と比べて、2014年度は全般的に、内陸部と沿岸部のリスク差が縮小する傾向がうかがえた。しかし、抑うつ傾向、不眠、および心的外傷後ストレス反応()については、2014年度も内陸部と比較して沿岸部で有意にリスクが高く、特に沿岸部で、引き続きメンタルヘルスに対するケアを進めていくことが重要であることが示唆された。

また、大震災による心理的苦痛の増大や、居住環境の変化などが、定期的な通院・投薬などを必要とする慢性疾患について、治療が中断されている懸念が示された。今回の解析では、沿岸部居住者において高血圧の治療中断と震災の影響が関連することが明らかになった。一方で、甚大な震災被害を受けた地域では一部医療費の免除が受けられたことなどから、必ずしもその他多くの疾患では治療中断リスクが高まらなかったことも示された。

さらに、調査票から、不眠と抑うつ傾向の両徴候を有する参加者のうち、震災後に睡眠薬を服用し始めた人と服用しない人について、心の健康、震災時の状況など睡眠薬服用と関連する要因の検討を行った。睡眠薬の服用を開始したのは、震災による環境の変化がある人、心理的要因のある人に多い傾向が見られた。診療現場やそれを取り巻く保健体制の中で、不眠への対応と並行して、震災による環境の変化、心理的要因に焦点を当てた治療、支援が適切に行われることの重要性が改めて示唆された。

同機構では今後も、2015年度以降に調査に参加した人の集計を進め、岩手県内での調査とも合わせて傾向の分析などに努めていきたいとしている。また、ゲノム解析やオミックス解析など、各種関連解析を進め、一部の情報は公開のデータベースとして広く多くの研究者の利用に供するとともに、試料・情報分譲の制度を通じて日本全国の研究機関での研究推進に役立てていく考えだ。今後も、参加者に対して追跡調査を実施し、健康状態の推移を把握していく予定となっている。

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