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ヒト細胞が放射線による障害を感知し、修復する仕組みを解明-東北大

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2015年04月28日 PM05:30

DNAの二本鎖切断が生じた近傍の転写が止まる仕組み

東北大学は4月23日、同大加齢医学研究所・加齢ゲノム制御プロテオーム寄付研究部門の宇井彩子博士・安井明教授ら研究グループが、放射線の最も深刻な影響であるDNAの二本鎖切断が生じた近傍の転写(DNAの情報をRNAに読み取る過程)が止まる仕組みを解明したことを発表した。


画像はリリースより

転写はDNAの情報を基に蛋白質を作るために、まずRNAの情報に移される機構だが、DNAの傷があると転写はそこで止まってしまい、重要な蛋白質が作られなくなり、細胞は機能を止めてしまう可能性がある。しかし、これまでに転写と共役した修復の機構が見つかっており、放射線による二重鎖切断の場合に、その周辺の転写が抑えられると言う事はわかっていたものの、その転写抑制がどのように起き、どのように修復が開始するかは全くわかっていなかった。

細胞のがん化や老化抑制にも関与していることが明らかに

研究グループは、RNAポリメラーゼに結合して転写を活性化するENL蛋白質に細胞内で転写を抑えるポリコームと呼ばれる蛋白質が結合している事を発見。本来は転写を進行させる因子が、転写を抑える因子を呼び寄せて、それぞれの進行している転写の現場で転写を抑制し、それが二重鎖切断の修復蛋白質を呼び寄せ修復を行い、再び転写が開始する機構を明らかにしたという。

この機構について研究グループは、前方の障害により進行中の電車の運転手に停止シグナルが伝えられブレーキがかかり、近くの電車が次々と止められ、そのことにより障害の修理が起き、修理が終わると近くの電車から運転を始める様な電車の安全システムに類似していると述べている。

さらに同機構は、放射線による細胞死を抑え、さらに細胞のがん化や老化を抑えていることも判明したとしている。この研究成果は「Molecular Cell」オンライン版に4月23日付で掲載されている。

▼外部リンク
東北大学 プレスリリース

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