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京都産業大ら タンパク質が細胞膜に組み込まれる分子メカニズムの解明に成功

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2014年05月02日 AM06:00

膜組み込みタンパク質YidCの立体構造を解明

京都産業大学は4月17日、同大総合生命科学部 千葉志信准教授らの研究グループがタンパク質を細胞膜に組み込む膜組み込みタンパク質である「」の立体構造を世界で初めて明らかにするとともに、タンパク質が生体膜に組み込まれる分子メカニズムを詳細に解明することに成功したと発表した。

この研究成果は、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の塚崎智也准教授らの研究グループなどとの共同研究によるもの。英科学誌「Nature」オンライン版に現地時間4月16日付で掲載されている。


(画像はプレスリリースより)

膜組み込みタンパク質YidCの存在は以前から知られ、生命の維持に不可欠な因子とされてきたが、これまでその立体構造は決定されておらず、YidCによってタンパク質が細胞膜に組み込まれる分子メカニズムも明らかにされていなかった。

細胞外に突出する領域と親水的溝で相互作用

同研究グループは、まず脂質キュービック相(LCP)法によりYidCを結晶化、大型放射光施設SPring−8 BL32XUにおいてX線回折データを収集して、高分解能でYidCの構造を解明することに成功、細菌Bacillus halodurans由来の結晶構造を決定するにいたった。

こうして明らかとなった構造は、内部に大きな溝をもつもので、その溝は多くの親水的なアミノ酸によって構成されており、プラスの電荷を帯びていたという。

同研究グループはさらに、発見したYidCの構造情報に基づき、in vivo クロスリンク実験や、枯草菌を用いた遺伝学的解析を進め、YidCは親水的な溝で細胞膜に組み込まれる膜タンパク質と相互作用することを突き止めた。

また、溝を構成する親水的アミノ酸のうち、とくに溝の中心に位置するプラスの電荷をもったアルギニン残基は生物間で広く保存されているものであり、YidCの働きにきわめて重要なものであることを見出した。

こうして得られた新たな知見と、これまでの研究結果から、YidCが基質タンパク質のうち、細胞膜に組み込まれた後に細胞外に突出する領域と親水的溝で相互作用することにより、この細胞外に突出する領域を細胞膜内部に引き込んで、膜タンパク質を生体膜へと組み込むという一連の分子メカニズムが存在していることが強く示唆されたという。

病原菌のYidCを標的とした新規の抗生物質開発などに期待

今回の研究を通し、YidCによるタンパク質膜組み込み過程の詳細を、構造生物学的アプローチによって、初めて解明することができた。

これはバクテリアからヒトまで共通した基本的な生命現象における重要な解明のひとつであり、YidCは細菌の生育に必須なタンパク質であることから、今後、病原菌のYidCを標的とした新規の抗生物質開発など、薬剤開発の基盤として活かされるものと期待される。(紫音 裕)

▼外部リンク

京都産業大学 プレスリリース
http://www.kyoto-su.ac.jp/department/nls/news/

Structural basis of Sec-independent membrane protein insertion by YidC
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/

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