16種のがん患者を対象に外来医療費を調査
岩手医科大学は8月24日、外来がん薬物療法データを解析し、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を用いた長期維持療法が、対象患者数は限定的であるにもかかわらず医療費全体に大きな割合を占めていたと発表した。この研究は、同大医歯薬総合研究所創薬・医療機器開発部門の玉田紳治大学院生、西塚哲特任教授、同大医学部泌尿器科学講座の小原航教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Treatment and Research Communications」に掲載されている。

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ICIは、がん細胞に対する免疫応答を賦活化させる薬剤であり、多くのがんで治療成績を改善してきた。一方で、ICIは高額な薬剤であり、がん治療における医療経済上の負担、いわゆる「financial toxicity(経済的毒性)」の一因として注目されている。進行・再発がんにおいて、病勢進行がない患者に対してICIをどの程度の期間継続すべきかは臨床上の重要な課題で、長期継続によって病勢制御が期待される一方、治療を漫然と継続することは患者の通院負担や医療費の増加につながる。また、治療中止に対する患者の不安も大きく、単に費用の観点のみから治療を中断することは容易ではない。血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)は、血液中に含まれるがん細胞由来のDNA断片であり、腫瘍量の変化を反映する可能性がある。今回の研究ではctDNA測定を実施していないが、将来的にはctDNAなどの高感度バイオマーカーを用いて、治療継続や休薬の判断を支援する枠組みの構築が期待される。
研究では、同大附属病院において2022年度(2022年4月から2023年3月)に外来がん薬物療法を受けた患者のレセプトデータを用いて後ろ向きに解析した。対象には乳がん、肺がん、大腸がん、胃がん、膵がん、尿路上皮がん、腎がん、肝がん、頭頸部がん、子宮体がん、食道がん、子宮頸がん、悪性黒色腫、前立腺がん、白血病、ホジキンリンパ腫を含む16種類のがんが含まれた。
医療費には、薬剤費に加えて、治療当日の外来診療料および検査費用を含めた。入院費、救急受診費、治療日以外の画像検査費、免疫関連有害事象の治療費などは含めなかった。投与間隔が異なる場合には通院回数や同日検査費用が異なるため、同一薬剤であっても別レジメンとして扱った。国内で実施中の臨床試験において1年以上の長期奏効が一つの基準として用いられていることを踏まえ、同一レジメンが13か月以上継続された場合を維持療法と定義した。
ICIを含む治療が外来がん薬物療法の総医療費の68%を占有
解析対象は1,425例、8,179治療機会、178レジメンで、その年間総医療費は約26億円だった。患者数としては化学療法単独が最も多かった一方、医療費の構成ではICI単独療法およびICI併用療法が大きな割合を占め、ICIを含む治療全体で総医療費の68%を占めた。治療機会あたりのレジメン別平均費用は20万円以下の範囲に集中しており、化学療法剤は全てこの範囲に含まれた。このことから現在においても従来の化学療法剤ががん薬物療法の中心を担っていることが示唆された。
維持療法は全体の10%にあたる148例に行われた。そのうちICI維持療法は47例(維持療法中の32%)で、年間総医療費では2億7200万円(維持療法中の64%)に達した。ICI 単独療法を受けている患者のうち、16%が維持療法を受けており、これは治療機会の25%、年間医療費の24%を占めていた。
血液検査で適切な休薬時期を特定へ
今回の研究により、ICI維持療法は対象患者数としては少数である一方、外来がん薬物療法費の中で不均衡に大きな割合を占めることが明らかになった。ICI治療の恩恵を維持しながら、患者の通院負担および医療費負担を軽減するためには、長期維持療法の適切な治療期間を検討することが重要だ。
「今後は、ICI維持療法を安全に休薬できる患者を同定するため、画像検査に加えてctDNAなどの高感度バイオマーカーを用いた病勢モニタリングの妥当性を検討する必要がある。ctDNAが持続的に検出されない状態を確認できれば、治療中止に伴う患者の不安を軽減しながら、治療期間の最適化を検討できる可能性がある。また、ctDNAモニタリング下でICI維持療法の休薬が安全に行えるかを検証する前向き介入研究が求められる」と、研究グループは述べている。
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