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アレルギー性鼻炎患者調査 Vol.6【ドクターショッピングを繰り返す通年性アレルギー性鼻炎患者。そのワケは?】

読了時間:約 3分54秒  2018年09月10日 PM02:00
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通年性アレルギー性鼻炎患者の転院、その背景は?

国民の約4割が罹患しており、近年増加傾向にあるアレルギー性鼻炎1)。処方薬、市販薬も豊富で、2014年には舌下免疫療法も登場。いまや、さまざまな治療選択肢から、患者一人ひとりにあった治療方法を選択できる時代だ。それでは、アレルギー性鼻炎患者本人は、治療に関してどのように考えて、クリニックの受診や市販薬の購入などの行動を起こしているのだろうか。

そこで今回QLifeは、アレルギー性鼻炎で医療機関に通院中の患者2,702人を対象に、治療についての考え方に関する大規模調査を実施した。その結果から垣間見える患者のホンネについて、シリーズで紹介する。最終回となる第6回目は、好評だった第2回の「ドクターショッピング」に再度焦点を当てる。前回分析した季節性アレルギー性鼻炎患者編の続編として、今回は通年性のアレルギー性鼻炎患者のホンネに迫る。

1)鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2016年版(改訂第8版).(株)ライフ・サイエンス, 8-13, 2015

症状が出るたびに? 6割が通院先を変更

くしゃみ、鼻水、鼻づまり…。季節を問わずアレルギー性鼻炎の症状に悩まされるのが、通年性アレルギー性鼻炎患者だ。調査では、通年性アレルギー性鼻炎患者の実に53.8%が、別の耳鼻科や内科から現在通っているクリニックへと通院先を変更したと回答した。季節性アレルギー性鼻炎患者とは異なり、症状が出るたびに服薬や通院が必要になる通年性アレルギー性鼻炎患者。季節性アレルギー性鼻炎患者の55.3%よりはやや少ないとはいえ、半数以上が通院先変更を経験しているという実態が明らかとなった。

なお、季節を問わず症状があるが、季節によって症状の強さが変動する、季節性と通年性両方のアレルギー性鼻炎患者では、通院先を変更したのは59.8%。通年性のみのアレルギー性鼻炎患者よりもさらに多いおよそ6割に上る患者が、それまで通っていたのとは別のクリニックを受診した経験を有していた。

鼻症状を含め全体的な症状緩和を求めて通院先変更

性別・年代別にみても、通院先を変更する理由に大きな違いはなかった。そこで、代表的な患者像として、30代女性と40代男性を取り上げる。

30代女性患者の半数以上を占める、通年性または通年性+季節性のアレルギー鼻炎患者。仕事に家庭に忙しい彼女たちの6割以上が通院先を変更した経験を有することからも、通院先の選択には厳しい判断を下している様子が想像できる。時間をかけた治療や長い待ち時間よりも、何とか早く終わらせたいと願う傾向と共に、症状が出たらまずは市販薬を選ぶという回答が4割程度見受けられた。現在の通院先を選んだ理由として挙がった「安全に治したい」「鼻症状を治したい」「全体的に症状を治したい」に応えるだけではなく、市販薬を使用しているかの確認に加え、この年代に対しては、効果のある薬剤を選択することも求められるのではないだろうか。

40代男性でも、30代女性と同じく半数以上が通年性または通年性+季節性アレルギー性鼻炎患者だ。仕事上の責任が重くなるこの世代は、7割近くに通院先を変更した過去があり、30代女性と同じく忙しい日常を送っている様子が透けて見える。市販薬の使用率は4割超。他の年代では第2世代抗ヒスタミン薬の割合が高いのに比べ、この年代では第2世代抗ヒスタミン薬と鼻閉に効果のある配合剤が同率となっていること、また点鼻の血管収縮薬の使用も約2割と他の年代よりも高い傾向がみられた点が特徴的だ。このことから第2世代抗ヒスタミン薬の認知率は20代より低く、効果のある配合剤を利用する傾向がうかがえる。仕事が忙しく通院する時間がとれないためか、症状が出たらまずは余った薬を飲んでしのぐと回答する割合が多く、処方時の希望でも「長い期間、使用する分の薬がほしい」と答える割合が高い。

一方、市販薬の使用率が低かったのが10代だ。10代男性の84.6%、10代女性の77.7%が、「市販薬を使用していない」と回答した。この年代は通院先を変更した割合もほかの年代よりも低く、10代男性では45.8%、10代女性では38.3%だった。自治体によって差はあるものの、子どもの場合は医療費助成制度を利用できることが、これらの結果の背景にあると考えられる。

各年代の市販薬の使用傾向をみると、幼少時から処方薬として第2世代の抗ヒスタミン薬を服用してきた20代では、3割超が第2世代の抗ヒスタミン薬を使用していた。第2世代の抗ヒスタミン薬の認知度は、年齢が上がるにつれて下がるようで、40代では市販の内服薬として配合剤を選択している割合と第2世代の抗ヒスタミン薬を選択している割合がそれぞれ2割程度と、同程度であった。

2018年の花粉症シーズンには、OTC関連薬の販売金額は389億円で、前年同月比129.2%と大幅に伸長したという2)。手軽な市販薬ではなく、手間をかけてでも安全な治療を求めてクリニックを受診する患者たち。今回の調査で使用頻度の高かった市販薬が、アレグラ(14.9%)、アルガード(11.3%)など第2世代の抗ヒスタミン薬であることもふまえ、患者の期待に応える診療を目指すことが、ドクターショッピングに幕を引くヒントになるのではないだろうか。

2)株式会社アンテリオ 調査レポート 2018年4月度 一般用医薬品 薬効別ランキング

本調査の概要は以下の通り。

  1. 調査対象:アレルギー性鼻炎で医療機関に通院している患者2,702人
  2. 有効回収数:2,702人
  3. 調査方法:通院する医療機関を通して、患者本人に案内したインターネット調査
  4. 調査時期:2017年7月15日~8月31日

また、詳細な調査報告書はhttp://www.qlife.co.jp/news/171031qlife_research.pdfからダウンロードできる。(QLifePro編集部)