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こう太歯科 古川浩太院長

読了時間:約 5分54秒  2010年07月13日 AM11:34
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患者同様、スタッフとのコミュニケーションを何より大切にしている古川浩太院長こう太歯科
古川浩太院長

未知の土地ながら地域密着で開業
「予防歯科」中心にかじを切る
開業15年の歯科医院

一番の苦労

院内コミュニケーションは院長の土壌づくり次第

 医院は歯に関わる医療技術を提供するところだが、同時に接客業でもある。歯科治療を怖がる人は少なくない。だから訪れた患者さんに安心してもらうためにどうしたらよいか、常に心を砕いている。
 患者さんに安心感を持ってもらう工夫の基盤は、ドクターの腕と、明るく気立てのよいスタッフにある。だからこそ、スタッフ教育は院長の重要な仕事だ。人は一朝一夕で育つものではない。厳しく叱責すればすぐに辞めてしまうし、甘やかしていれば何も身につかない。まずは環境を整え、スタッフがドクターの言葉を素直に聞ける土壌づくりから始めなければならない。
 その第一歩が、コミュニケーションだ。当院のスタッフには勤続十年を超えるベテランをはじめ、長く勤めてくれる者が多いが、それはひとえに当院のコミュニケーションが良好であることに起因すると、私は自負している。
 コミュニケーションといっても、大げさに考える必要はない。意識して声かけを多くする、少し明るいトーンで話すよう心がける、スタッフの良いところは積極的に褒めるなど、ちょっとした気遣いで、院内の雰囲気はずいぶん変わっていくはずだ。ドクターがスタッフのことを愛情をもってしっかり見ていることがスタッフに伝われば、スタッフはドクターの気持ちに応えようと努力する。ドクターを見習って、患者さんに対しても同僚に対しても、優しい心遣いができるようになるだろう。そしてそれが患者さんに伝わり、医院自体が強い信頼を勝ち得ることができるのだ。

一番の「秘訣」

自身で踏み込んだリサーチをする


温かみ溢れる住宅街の中に建つ、瀟洒な医院

 開業にあたって絶対に大事なのは、事前準備に手を抜かないこと。
 地元に戻って開業するのでない限り、多くの人は斡旋業者を利用するだろう。斡旋業者は、医師個人では調べられない幅広い情報を持っているから、彼らの力を借りることは、賢明なこと。けれども、彼らが自主的に提供してくる情報だけではけして十分ではないことを肝に銘じて欲しい。知りたい資料やデータを、自分からどんどん要求するくらいのことは、していかなければならない。
 たとえば、候補地の周辺人口を見る時には、単純な夜間人口だけではなく昼間人口も調べるように依頼しよう。また、子どもの割合も非常に重要なので、もし資料になければ別途調査を求めよう。とはいっても、子どもの数は単純に多ければよいというものではない。子どもが多い地域は開業当初の経営には有利だが、「子ども中心の歯科医療」がドクター自身のビジョンに合っていなければ、後から後悔することになりかねない。一般論ではなく、自らの希望や得意不得意にこだわって、自分らしい医療ができる場所を粘り強く探そう。
 先行開業している歯科医師の数も大いに気になるところだが、これも単純な人数だけでは判断できない。各医院の実績やドクターの年齢など、より突っ込んだデータを手に入れて検討することが好ましい。歯科医が多くても、手薄な分野があるかもしれないので、そういうことも調べられると、見通しを立てやすくなる。
 現地に足を運んだ際には、すでに下調べしているデータ内容を確認していく作業と同時に、「町の雰囲気」といった感覚的なことにも留意しよう。自分に合うか合わないか、それは他人にはけして分からないことだから、自らが感じ取って判断するしかない。

一番の「工夫」

スタッフ面接の最重要チェック項目は「相性」

先輩スタッフが後輩スタッフを指導し、着実に人材が育っていく 「最初のスタッフ採用」は、「立地」と同じくらいに医院経営の成否を分ける。なぜなら開業当初に良いスタッフがしっかりと育てば、その後は院長自身が手取り足取り教育をしなくても、意を汲んだ先輩スタッフが後輩を指導してくれるようになるからだ。最初にも言ったように、スタッフというのは医院にとって何よりも大切なものだ。味方につければこれほど心強いものはないし、敵に回せばこれ以上に厄介なものはない。
 だからこそ、最初のスタッフ面接が鍵となる。この時に何を一番重視して採否判定すべきかというと、実は、開業地の選定の時と同じだ。すなわち“院長の個性と合致しているか否か”。資格や過去の経験年数など、客観的なチェック項目も大切だが、最終的には“自分と合うかどうか”を感じ取って欲しい。スキルや知識が足りないところは、雇用してから育てていけば改善する。でも相性が悪いのはずっと続くし、患者さんが増えて忙しくなると悪化することさえある。
 私が大切にしている「スタッフとの良好なコミュニケーション」も、人間的な相性が良ければ、実現しやすい。スタッフ育成上のコミュニケーションで特に注意しなければならないのは、叱り方だ。頭ごなしに怒鳴りつけるのは論外。冷静に論理的に分かりやすく何がいけないのかを説明して、本人が納得できるように話してやると、若いスタッフも自分が何を直すべきかを理解することができる。叱るタイミングや場所にも気をつけて、他のスタッフの前、ましてや患者の前で叱るようなことは絶対にしてはいけない。

一番の「配慮」

患者さんの個性に合わせた時間感覚を持つ


待合室には畳スペースが。子どもたちの待ち時間の過ごし方にも心配りを忘れない。

 「患者さんとのコミュニケーション」は、「スタッフとのコミュニケーション」とは違う心構えが必要だ。相性の良し悪しなんて言ってはいられないから、「医師側が患者さんの個性に合わせられる能力」が不可欠となる。
 例えば、子供の診療時は何よりも辛抱強さが重要。こちらのペースで作業を進めるのではなく、泣き止むのを気長に待ってあげなければ、歯医者を怖がっているその子は「もう2度と来院したくない」と思うだろう。高齢の患者さんに接する時にも、類似の辛抱強さが必須だ。ゆっくりと患者さんの話を聞き、こちらから伝えたいことは何度でも繰り返し言ってあげなければいけない。相手に合わせたやりとりをすれば治療の質も向上する。
 医院を末永く経営したいなら、実際に治療に通ってくれた患者さんが満足し、それが口コミで広がって地域に認められる以外にない。だから、我々が理解しなければならないのは歯の状態だけでなく、患者さんの心。それを知るためには何よりもコミュニケーションが大切だ。
 開業当初は、最新の医療機器を揃えたいと思うことだろう。その後も、最新式の機器が発売されるたびに目移りしてしまうかもしれない。もちろん、最先端の治療法は医院の大きな武器になるが、慣れぬハードに振り回されて、本来の医療を見失ってはならない。医師が一番に見ていなければならないのは「患者さんの気持ち」であることを肝に銘じて欲しい。

一番の夢

今後は予防歯科に傾注


待ち時間、患者は意外に掲示物を読んでいる。それを有効利用して啓蒙活動に充てる。

 今後、当院では、「予防歯科」に力を入れていきたいと思っている。虫歯を作らなければ、歯を削る必要もない。痛い思いをすることもなく、自分の歯で食事することができる。患者の歯の健康を、治療でサポートするのではなくメンテナンスでサポートしていくのが、歯医者の理想の在り方だ。
 そのためには、とにもかくにも患者さんの意識変革が急務といえる。特に、「予防歯科は保険適用外なので高額な費用がかかる」という誤解を解くよう、情報提供していく必要がある。この誤解こそが予防歯科の普及を大いに阻害しているのだから。たとえば月に一回、予防のための検査と指導を受けたとしよう。この検査や指導は保険適用内なので、さして費用はかからない。しかも、そのことによって将来できるかもしれない虫歯を防げたとしたら、虫歯になってしまった時の治療費が必要なくなる。それさえ分かってもらえれば、予防歯科の敷居はぐっと低くなるに違いない。
 予防のために医院に足を運んでもらえたなら、「歯磨きや食生活の指導」から始める。予防の主役は、あくまでも患者さん自身。毎日の手当てが何よりも肝心なのだから。しかし、患者さん自身が努力していても、見落としてしまうことや忘れてしまうことがある。それを専門家が定期的にフォローしていくのが予防歯科の仕組みだ。「定期的な虫歯および歯周病の検査」、「口腔内の清掃」、「唾液やかみ合わせの検査」などをして、患者自身のケア状況を確認した上で、不十分なところや勘違い部分を指導していく。
 提供医療の中心が予防歯科になってくれば、「虫歯治療による収入」は減るだろうが、虫歯のない人たちが定期的にメンテナンスに通ってくれることで、むしろ安定した経営が可能になるはずだ。その日がくるように、努力していきたいと思っている。

医院プロフィール

こう太歯科

〒651-1212 神戸市北区筑紫が丘二丁目10-9
TEL:078-583-7272

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神戸電鉄箕谷駅・谷上駅から車で5分。

診療科目

歯科

理念

人と人とを結ぶもの、それはコミュニケーション

院長プロフィール

古川浩太(ふるかわ・こうた)院長略歴

1989年 朝日大学歯学部卒業
1995年 こう太歯科開業 院長就任

資格・所属学会他

神戸市北区歯科医師会理事

古川浩太(ふるかわ・こうた)院長
患者さんの都合で診療時間が長引き、取材時刻がズレそうになった時、
「少し遅れそうだけど、ごめんね」
と待合室まで出てきて声を掛けてくださった、気配り先生。