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漢方薬は、「患者との関係性」を良好化し、「再診率」の向上にも寄与

読了時間:約 3分28秒  2010年07月26日 PM04:59
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 エビデンス情報が増えてきたこととあいまって、西洋医学の医師の間でも「漢方薬」を日常診療において処方する動きが広がりを見せている。
 そこでQLifeは全国の開業医にアンケート調査を行って(有効回答200人)、漢方薬が診療所の医療現場でどんな役割を果たし、どんな「困ったエピソード」を引き起こしているのかを浮き彫りにした。
 ※この記事は、開業医の日常使用は9割、ただし漢方薬にまつわる「困ったエピソード」もさまざまの続きです。

4:「漢方薬の処方」をすることは、治療効果とは別に、「患者との関係」に良い/悪い影響があると思いますか。

漢方薬の処方は「患者との関係性」良好化に寄与すると答えた医師が、全体の約半数にのぼった。特に、「20-30代の女性」「更年期の女性」患者層が多い医院においては、それぞれ66%、71%が患者関係にプラスになるとしている。

「患者との関係」に良い/悪い影響があるのはなぜですか。
(「漢方薬の処方」が「患者との関係」に良い/悪い影響があると答えた人のみ)

「漢方薬処方」が患者との関係性に影響を及ぼすと考える医師に、その具体的理由を自由に記載してもらった。記載内容を分類(複数に該当するものは重複カウント)したのが以下のグラフ。

一番多かった回答は、「副作用が少ないから」「副作用がなく安全と患者が勘違いしているから」というもので、安全性の高い治療をする医師という印象が得られるメリットを挙げた。

  • 一般的に漢方薬は「副作用が少ない」「体にやさしい」と思われているので、なんでも漢方を処方することが良いことだと誤解している。このため、明らかに通常の西洋薬を使用すればよくなると思う疾患でも漢方を処方することで、患者本人が満足してしまう。結果として、患者からの満足度は高まっていると思う。(男性・33歳・愛知・精神科/神経科/心療内科)
  • 西洋薬に対してはできれば飲みたくないと感じている方が比較的多いから(男性・44歳・岡山・外科・脳神経外科)
  • 患者さん側に「漢方薬は副作用が少なく、体によい」というイメージがあるから。(女性・34歳・山形・精神科/神経科/心療内科)

次に多かった理由は、「治療法が増える、診療の幅が広がる」という内容であった。

  • いろんな治療法を考えてあげると患者さんも喜ぶから(男性・37歳・大阪・皮膚科)
  • 専門馬鹿にならずに幅広く診断治療ができる。(男性・49歳・愛媛・内科)

3番目に多かったのが「西洋薬に限界ある際に改善あるから」。さらに「即効性がある」「プラセボ効果が得られる」も含めると、「効果」関連で患者信頼が上がるメリットを挙げた医師は合計25%。

  • 今まで西洋薬で救えなかった患者さんの症状が改善し、感謝される。(男性・46歳・青森・整形外科)
  • 従来の西洋医学のみの治療で効果が上がらない患者に効果を認めることが多いから。(男性・53・千葉・内科)
  • 既存薬では軽快しない不定愁訴の改善に役立つ。(男性・51歳・大阪・内科)
  • 処方されている安心感と最近の漢方薬は即効性もある。(男性・47歳・神奈川・内科)
  • 不定愁訴やはっきりしない症状に使う事ができる。通常の薬で治療できない症状にも、とりあえず処方することができる。副作用が少ないので、プラシーボ効果を期待した処方も可能である。(男性・47歳・神奈川・産婦人科/婦人科)

他には、「漢方薬を希望」という患者ニーズに応えること自体が関係良好化に役立つと考える医師や、「西洋薬よりも受け入れられやすい」とする医師もみられた。

  • 患者によっては漢方薬の処方を望む方もいるので、希望に沿う事で良い関係を築く一助となりうる(男性・46歳・愛知・整形外科)
  • 漢方薬ということのみで喜ばれる事がある。(男性・46歳・福岡・整形外科)
  • 証に沿って説明するので、患者さんが自分に当てはまっていると納得しやすいからと思われる。(男性・36歳・高知・内科)
  • 西洋薬に比べ、漢方に抵抗のないことが多く、併用も特に嫌がられないから。(男性・50歳・岐阜・小児科)

やや目を引いたのは、漢方に特徴的な診療方法により「患者とのコミュニケーションが増すために、関係が良くなる」とする意見。

  • 漢方を処方するには、患者さんの話を良く聞かないと証を判断できないので、信頼関係がより築けるように思う。(女性・38歳・滋賀・内科)
  • 即効性を求めるのではなく、長期にわたる回復期を要することからコミュニケーションが密になり良い結果が生まれる。(男性・49歳・東京・内科)

一方で、少数派ながら患者との関係性が逆に「悪化する」とした医師の具体的理由には、以下があった。

  • 副作用が全くないと勘違いしている人が多い(男性・42歳・大阪・精神科/神経科/心療内科)
  • 本当は処方したくはないが、患者さんが出してくれと言うから仕方なく処方している。/腎機能障害も結構多く、定期的な検査が不可欠。あまり副作用が多いと患者さんに信頼されなくなる。(男性・50歳・愛知・整形外科)
  • 作用発現が遅い(男性・59歳・広島・産婦人科・婦人科)

6:「漢方薬の処方」をすることは、平均的・総合的にみて、患者の再診率の向上に寄与していると思いますか。

注:「再診率」=「継続通院すべき患者が、無断で治療中断・転院することなく、自院に定期通院する率」と定義した
55%の開業医が、漢方薬処方が「再診率」の向上に寄与していると考える。
「患者層の特徴」別にみると、前問と同じく「20-30代の女性」「更年期の女性」患者層が多い医院においては、「再診率向上」はそれぞれ74%、78%と高率だ。「収益状態」別には、違いは見られなかった。