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経腸栄養剤 味のバリエーションと患者自身による味選択は患者満足にどのような影響を与えるのか~薬剤師調査の結果から~

読了時間:約 4分46秒  2015年07月24日 AM10:30
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急速な高齢化の進展に伴い、がん治療をはじめ、さまざまな場面で経腸栄養剤の導入が進んでいる。また、「病院から在宅へ」の流れが加速する中、経腸栄養剤が処方されるケースが増加している。経腸栄養剤の中には複数の味やフレーバーを提供しているものもあり、医薬品でありながら、患者が医師や薬剤師と相談のもと、味を選ぶことが可能となっている。

この、他の医薬品では見られない「味を選ぶ」という行為が服薬アドヒアランスにどのような影響を与えているか、について、QLifeは、経腸栄養剤の処方経験のある薬剤師250名を対象にインターネット調査を2015年6月13~16日にかけて行った。その結果概要を紹介する。

■ 実施概要
調査対象とサンプル数:経腸栄養剤の調剤経験のある薬剤師250名
有効回収数:250人
調査方法:インターネット調査
調査時期:2015/6/13~2015/6/16

ほとんどの薬剤師は、経腸栄養剤は味の良さ、バリエーションの豊富さが服薬アドヒアランスの向上につながると考えている

「経腸栄養剤に関して、患者さんのアドヒアランス向上に役立つと思われるもの」を聞いたところ、「味が良い」が最も多く、87.6%がアドヒアランス向上に役立つと回答。次いで、「味の種類が多い」(56.4%)、「服用量が少なくて済む」(48.0%)の順となった。

4人に3人が経腸栄養剤の味について、積極的に患者さんに情報提供をしている

経腸栄養剤の味について、約4人に3人が「情報提供する」と回答。飲み方について「温度の工夫」「味・形状の工夫」「服用タイミング・1回の服用量の工夫」などをアドバイスしている。

温度の工夫
  • 甘いようであれば、冷やして飲むよう指導しています
  • あまり冷やさないで、ゆっくり飲む
  • 冷やして飲むように指導している
  • 冷やした方が服用しやすい
  • 冷やして服用すると味の濃さを感じない
  • 冷やして飲む方がおいしい
  • 氷のブロックにしてデザート感覚でもOK
味の工夫
  • 味に飽きてしまったら季節によって冷やしたり温めて飲むことを薦めたり、バニラ味に好きな風味を足して飲むように話している
  • 味に飽きたときにはほかの味を紹介する
  • 2種類混ぜたり薄めたりとろみをつけたり料理に使ったり
  • 味が濃いと感じたら水で薄めて飲んでも良い
  • 一気に服用せず、ゆっくり流したり、薄めて流したり、ゼリー状にするなど方法を提案する
  • 味に飽きてきていないか?残薬確認。飲みにくくないか?とろみをつけるなどの工夫があるなどのお知らせ
  • 飽きないよう患者さんの好みを聞きつつできるだけ 味の種類を多くする
  • 経口で摂取する患者さんや介護者には、味だけでなく、ゼリーや寒天で固めることによる形を変えた服用方法あることなどマンネリ化を防ぐ手立てがあることなどを指導している
  • 飲みにくい場合はゼリーにするなどアドバイスしている
服用タイミング・1回の服用量の工夫
  • 自宅で経口摂取する患者さんに対しては、記載の用法にこだわらず、
  • のめる時にのめる量をこまめに摂るよう助言することが多い
  • 一度に無理せず飲める量を少しずつ摂ること
  • すこしずつでも飲んでもらうようにする
  • 食後や服用時点は気にせず1日しっかり必要量を服用することが大切だということを伝える

患者さん自身が選択する&処方している味の種類が多いと患者満足度も高い

69.6%が患者さん自身が味を選択したことで喜ばれた経験が「ある」と回答、2種類の味を処方した薬剤師では80.0%まで増えた。

今回の調査を監修した、一般社団法人日本在宅薬学会 理事長、一般社団法人薬剤師あゆみの会 理事長の医師・狭間研至先生は経腸栄養剤の処方における薬剤師の役割について、以下のようにコメントした。

「低栄養状態にある患者さんにとって、経腸栄養剤の味が選べることは、そのまま“患者さん自身がチーム医療の当事者として積極的に治療に参加する”ことにもつながります。患者さんの治療意欲が上がれば、経腸栄養剤だけでなく、治療中の疾患の服薬アドヒアランスも向上するのは明らかです。低栄養状態にある患者さんに経腸栄養剤を通して、またいつもの食事が食べられるようになる“食べヂカラ”をつけてもらうとともに、診察室では見られない、患者さんの味の好みや日々の生活の変化を感じ取り、必要があれば医師にフィードバックを行う。それを実践することで、患者さんに『薬』を渡す薬剤師から、患者さんに『健康』を渡す薬剤師にステップアップできると思います」

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長/医師、医学博士 狭間研至(はざま・けんじ)先生

1969年、大阪府出身。平成7年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。平成12年大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。平成16年同修了後、現職。
現在は、医療法人思温会など在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育に、近畿大学薬学部・兵庫医療大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。著書に「薬局が変われば地域医療が変わる」(じほう)、「薬剤師のためのバイタルサイン」(南山堂)ほか