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最前線のチーム医療 地域に根ざしたてんかんセンターを目指す【4/4】包括的てんかん医療を目指すセンターの今後の展望とは

読了時間:約 4分56秒  2015年03月13日 AM10:04
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朝霞台中央総合 脳卒中・てんかんセンターの皆さん

てんかん医療では小児の頃から社会人までにわたり、患者や家族と長い付き合いになる。多職種チームにより、患者の療養生活や社会生活が円滑に進むよう調整を図るのも大切な仕事だ。

それを担う医療ソーシャルワーカーの業務について中越陽子氏に、メディカルクラークの業務について、野村咲織氏と越野和子氏に聞いた。そして最後に、センターの今後の展望についてセンター長の久保田先生に聞いた。

※この記事は株式会社ライフ・サイエンス「MEDICAMENT NEWS」第2185号(2015年2月5日発行)掲載誌面をもとにQLifePro編集部で一部再構成したものです。

個別性を重視し、一緒に考える姿勢を守る

――ソーシャルワーカーの業務について。

中越陽子氏(医療ソーシャルワーカー):私が担当するのは成人の患者さんが主ですが、自立支援、就労支援など、社会資源(表1)の紹介のための相談が多いです。てんかんを発症したため仕事を辞めざるを得なくなったがどうすればいいか、あるいは仕事に就けない状況が長く続き経済的に厳しいので経済的支援を受けられるような制度はないか、などです。ご自分がてんかんであることを会社に伝えることで採用してもらえないのではないかという不安は患者さんの誰もが抱えています。そのような相談には、ハローワークに専門窓口があるなどの紹介も行っています。

もちろんソーシャルワーカー単独では課題解決は困難ですが、センター内の多職種チームに患者さんや家族の抱える不安や希望を伝え、早期にチームとしての方針や目標が立てられ、療養生活や社会生活が円滑に進むよう調整を図ります。特に気をつけているのは、患者さん一人ひとりで事情が異なるため、個別性を大切にするということです。患者さんのお話をていねいに聴くことで、どのような経緯で発症し、治療経過や家族背景なども明らかになってきます。

仕事については、ご自分のそれまでのスキルを活かしたいという希望はどの患者さんも持たれていて、例えば資格を持っているので同じ仕事に就きたいとか、自動車が好きなので運転する仕事をしていたがはやはり無理でしょうね、などの相談です。後者の場合には、運転はできなくても自動車の整備の仕事などはどうだろうかと提案したこともありました。

アドバイスというよりは一緒に考えていくという姿勢がソーシャルワーカーには必要かもしれません。当センターが目指す患者さんの社会復帰までを支援する包括的てんかん医療において、適切な治療継続のために私たちも積極的に関わっていきたいと考えています。

以前は久保田先生にカンファランスで、発作の具体的な観察方法を教えていただきました。こうして日々の看護業務から得られたデータは、この数年続けて日本てんかん学会で看護部のスタッフから報告を行っています。

表1:てんかん患者に利用可能な社会資源の例
種別 対象 内容 申請先
障害者自立支援医療(精神通院医療) てんかんや精神疾患の診断で治療を受けている方 外来医療費の自己負担10% 市区町村の精神保健福祉担当課
高額療養費 健康保険加入者 1カ月の治療費の自己負担額が一定の額を超えた場合に、その超えた額が払い戻される 加入している健康保険
小児慢性特定疾患治療研究事業 ウエスト症候群(点頭てんかん)、結節性硬化症、レノックス・ガストー症候群、神経膠腫など、法に定められた疾患の治療を受けている18歳未満の方 医療費自己負担の助成、補助具の助成 保健所
重度心身障害者(児)医療費助成制度 身体障害者手帳・療育手帳取得者 医療費自己負担の助成 市区町村の障害福祉担当課

患者と医療スタッフをつなぐパイプラインとして

――メディカルクラークの業務について。

野村咲織氏(メディカルクラーク):私たちの業務は、例えばてんかん外来で長時間デジタルビデオ脳波モニタリングの入院が決まった場合に、患者さんへの一連の検査のご案内、検査科への必要な連絡、薬剤科の臨床試験に関する連絡、そして患者さんが医師と直接話せなかったりした場合の伝達係など、患者さんと他の医療スタッフをつなぐパイプラインの役割を担っています。

てんかん患者さんは、久保田先生が赴任されてから一気に増えましたので、当初はすごく大変でしたが、とてもいい勉強になりました。検査が突然必要になった場合は検査科と調整したり、緊急入院の際には外来看護師が救急対応するのですが、その補佐を私たちはします。

私はてんかん外来での業務が中心ですので、カンファランスには出席しませんが、ビデオ脳波の結果を患者さんとともに聞くことはよくあります。どのように発作が起き、診断がなされ、治療が行われるのか、退院後も外来で患者さんとの接点はありますので、外来看護師とともにその経過を長く終える立場にあります。

また、臨床試験では院外の治験コーディネーターとも接点を持ちますが、その連絡係も行っています。てんかん医療では、検査の予定が入ってるのに病院に来られないような場合、私たちが電話して問い合わせます。そんな時、発作が起こっていて時間が間に合わなくなってしまったというケースもありました。

今日も40人ほどの外来患者さんが来られたのですが、その時間配分・調整も私たちの仕事です。例えば高校生の患者さんでテストが近いとか、親御さんが付き添わないといけないなど個々に事情があるため、予約時間を遅らせたり、早めたり、あるいは休日にしてみたり、そのような配慮もしています。

小児の患者さんの場合は、高校生から大学生、あるいは大学生から社会人へとそのような節目、節目で医師が診療していきますが、私たちも就職相談、運転免許の相談などを持ちかけられる場合もあり、そのような時にはソーシャルワーカーの中越さんらに連絡します。このように患者さんや家族の方々とは必然的に長いお付き合いになります。待合室などでお話を聞く機会がありますが、なるべく和んだ雰囲気になるよう心掛けています。

越野和子氏(メディカルクラーク):私は当院に入職して1年目で、先輩である野村さんとともにてんかん外来の業務を担当しています。外来診療がなるべく滞らないよう円滑に業務が進むよう気をつけています。確かに外来では、患者さんたちの変化がつぶさに見られます。今日、11月に出産されたばかりの患者さんが外来に来られていて、本当に嬉しかったですね。

風通しのよい環境の下で、新時代のてんかん医療の在り方を発信

――最後にてんかんセンターの今後について。

久保田先生:本センターは、これまでにない新しいタイプのてんかんセンターにしていきたいと思っています。当院の規模がそれほど大きくないことが逆に幸いして、チーム医療を実践するには非常に風通しがいい環境になっています。他部署との連携がすぐに取りやすいのです。

ただでさえ埼玉県は医療過疎地と言われていますが、脳卒中およびてんかんの専門医療をより充実させて、地域医療にそれを反映させることは大変意義のあることではないかと考えています。そのためには、私たちスタッフは日々勉強し、マンパワーも増やしていく必要があるでしょう。

この10月に中本先生に赴任していただき、てんかん外来も一段と厚みが増しました。中本先生には、将来てんかん専門医の資格を取っていただき、新しい時代のてんかん医療を担える人材になってほしいと期待しています。埼玉県は人口が多く、当センターは非常に多くのてんかん患者さんを診ることのできる絶好の環境にあります。先ほど述べたように検査技師、看護師、薬剤師のスタッフにも認定資格の取得を目指してほしいですね。

そして、包括的てんかん医療の実現は地域の協力がなければ成立しません。現在のビデオ脳波カンファランスは誰でも参加できるオープンカンファランスであり、今後も幅広くご案内することで、地域医療を支えておられる開業医の先生方とのネットワークを築いていきたいと考えています。

(2014年12月12日、朝霞台中央総合病院にて収録)

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