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最前線のチーム医療 地域に根ざしたてんかんセンターを目指す【2/4】デジタルビデオ脳波計導入で 適切な診断・治療の流れが

読了時間:約 3分47秒  2015年03月13日 AM10:02
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朝霞台中央総合病院ホームページ

小児てんかん診療では、患者が成長しても小児科から成人の診療科へ移行するのが難しいという小児慢性疾患のトランジション(キャリーオーバー)の問題がある。その点、朝霞台中央総合病院の脳卒中・てんかんセンターは成人のてんかん外来があるため、患者が高校生になったときにスムーズに移行できるという。

成人てんかん外来の診療について、脳神経外科部長の中本英俊先生とセンター長の久保田先生に、デジタルビデオ脳波計導入により変化した検査技師の役割について、検査科の田中香織氏と平古場千里氏に聞いた。

※この記事は株式会社ライフ・サイエンス「MEDICAMENT NEWS」第2185号(2015年2月5日発行)掲載誌面をもとにQLifePro編集部で一部再構成したものです。

デジタルビデオ脳波計導入で 適切な診断・治療の流れが

――成人のてんかん外来の診療について中本先生に。

中本英俊先生(脳神経外科 部長):私は2014年10月に当院に赴任し2カ月が経ちました(収録時点)。現在は外来と入院のてんかん患者さんを担当している状況です。それまでは一般の脳外科医として、脳卒中や脳腫瘍を主に診ていました。てんかんの診療も経験していたのですが、脳波検査機器が整っていない環境で、十分な診断がつけられなかったという経験があり、すごく歯がゆい思いをしたこともありました。当センターの長時間デジタルビデオ脳波計なら正確な診断が可能になります。

私のてんかん外来は、週1回で1日に10~20人を診療しており、埼玉県内の各地域から紹介患者さんが徐々に増えています。診療していて感じるのは、「てんかんはまだまだ一般の人に認知されていない」ということです。

例えば、働き盛りの男性で10~20年以上もてんかんと診断されていなかった患者さんがいて、話を聞くと若い頃から発作はあり、職場でも時々意識を失ったりしていたそうです。あるいは精神病ではないかと疑われて不適切な治療を長年受けてきた人もいます。実際はそのような方の症状はてんかんそのものであり、適切な診断をして薬剤を処方することで、発作は止まることがしばしばあるのです。

このようなケースは一般にてんかんが認知されていないことが原因です。脳外科医の私ですらてんかん患者さんがこれほどいると実感したのは当院に来てからなので、伊藤先生が言われた小児てんかんと同様に成人てんかんにおいても地域への啓発活動は重要だと思っています。

さらに当センターの特徴は、脳卒中センターとてんかんセンターが並立していることです。てんかんが一般的な疾患である理由の1つに、脳卒中や外傷などの合併症としてのてんかん発症が意外に多いことが挙げられますが、そのような患者さんにてんかんが疑われた場合、すぐに長時間デジタルビデオ脳波モニタリングができることは他院にない大きな利点だと考えます。

久保田先生:現在、中本先生と私の二人で診ているてんかん外来の患者さんは600~700人ほどです。患者さんは埼玉県全域にわたり、中には群馬県や栃木県から来られる方もいます。また、当院は日本てんかん学会のてんかん外科施行施設であり、研修施設でもあります。多くの若手医師が来てもらって、多くの症例を診療できる当院でてんかん医療に興味を持っていただければと思っています。

先ほどお話のあった長時間デジタルビデオ脳波モニタリングですが、当センターでは3カ月に1度、定期的に年4回、さいたまビデオ脳波カンファランスを開催し、個々のてんかん症例の検討会を行っています。

やはりてんかん診療においては、発作を自分の目で確かめて理解することが極めて大切です。患者さんを紹介いただいた地域の開業医の先生方をお招きして、てんかんセンターのスタッフも業務に差し支えない限り、誰でも参加できます。このビデオ脳波カンファランスは、伊藤先生も中本先生も指摘した地域に向けたてんかん医療啓発活動の重要な部分を占めています。

検査科の今後の目標は脳波の読影

――脳波を測定する検査技師の役割について。

田中香織氏(検査科):長時間デジタルビデオ脳波計が2011年に導入され、私たちの業務も一変しました。当時、最新鋭の機器を入れていただいたと記憶しています。それまでの脳波計では出力は紙ベースで、もちろんその時の発作の画像は得られませんでした。

デジタルビデオ脳波計では医師が見たい脳波をパターンを変えて見ることが可能です。発作が起こっている時にどのような脳波が出ているかを知ることは診断・治療に欠かせない情報なので、てんかん診療には無くてはならない機器だと思います。

長時間デジタルビデオ脳波モニタリングは、1週間検査入院していただき、脳波を測定し続けます。その間、私たち検査技師は朝晩の2回、患者さんのところに行き、モニタリングが正常に行われているかどうかを確認します。検査科で脳波モニタリングを担当しているのは5人です。

――救急脳波モニタリングについて。

平古場千里氏(検査科):外来患者さんと同様、救急脳波モニタリングも検査科が担当します。救急脳波は1晩の測定になります。救急で来られる患者さんのほとんどは意識障害で動けないか、不穏の症状を呈しているため、頭部に電極を付けていく作業はかなり大変です。いつも2人がかりで行っています。

ただ救急脳波モニタリングは、意識障害の原因が明らかになる大事な検査ですので、やりがいのある仕事です。長時間デジタルビデオ脳波の場合は、特に小児のお子さんの場合、電極を付けるのを嫌がられることはありますね。また電極を付けている作業中に患者さんが発作を起こす場合もあり、その際は看護師や医師を呼びます。

――苦労されて取られたデータがカンファランスで活用されるのですね。

田中氏:その通りです。私たち検査技師もビデオ脳波カンファランスに参加します。どのような結果が出たかが分かるのは楽しいですね。脳波の読影については、久保田先生にすべて教えていただきました。

久保田先生:2015年春には、長時間デジタルビデオ脳波計の新機種が導入される予定です。また将来的には、日本臨床神経生理学会の認定技術の資格を取ってもらえたらと考えています。

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