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とよしまクリニック 豊島治院長

読了時間:約 6分51秒  2011年09月20日 PM12:06
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豊島治院長

失敗こそ成長の秘訣
社会ニーズに敏感になることで
住宅地ながら内視鏡特化のクリニックに

一番の苦労

天変地異リスクさえ一手に背負わなければならない

 開業してからは小さいことも大きいことも苦労はさまざまあったが、かつては人に任せていた「診療とは直接関係のない役割」も、院長として取り組まなければならないところに大変さを感じた。たとえば、スタッフの採用などについても、事務長や看護師長がいて、自分とは関係のないところで、そういう人間関係の諸々に対処してくれていた。ところが、開業した後は院長が「兼事務長、兼看護師長」となり、すべてに自分で対処しなければならないのだと気づかされた。
 また、3月の大震災の後1カ月ほどの間も、また違った意味で大変だった。おそらく日本中のすべてが同じ状況だったと思うが、さまざまな制約下で診療をしていて、出勤できないスタッフもいたし、遠方の患者さんは来院できない、内視鏡の予約のキャンセルが相次ぐなど、先が見えない状況に「これからどうなるのか」と不安だった。収入が減る状況の中で人件費など支出は変わらないものもある。震災という天変地異リスクまで自分が背負わなければならないのが、現実だ。

一番の強み

「胃がんや大腸がんの早期発見」に目標を設定したクリニック

 外科医だった父の影響で医師を目指したので、最初は外科医からスタートした。ただ、胃がんや大腸がんの治療や手術に携わるなかで、「これらの病気は早期発見が重要」と実感し、ちょうど同じころに参加した日本消化器内視鏡セミナーで内視鏡技術に感銘を受けたことから「これからのがん治療は内視鏡」と肌で感じ、消化器内科に転向。内科の診療を重ねつつ、レベルの高い内視鏡技術の修練に励んできた。
 開業当初は、内科、胃腸科、外科の総合的クリニックとして地域医療に貢献したいという気持ちで、内科メインの診療をおこなっていた。ただ、年々内視鏡の検査や治療を希望する患者さんが増え、現在では内視鏡医療がメインとなっている。開業後に、社会のニーズや患者さんの傾向に応じて病院の方針が変わってきたといえる。内視鏡を希望する患者さんが増えるにつれ、「これは自分たちにしかできないこと」という意識が強まり、クリニックの特徴として、現在は「内視鏡に特化したクリニック」という方針で診療に当たっている。
 耳鼻科の医師が耳や鼻の病気を、眼科の医師が目の病気を見つけ、専門的に治療するように、うちは消化器内科として「胃がんや大腸がんを早期に発見する」ことを目標にやっていこうと考えている。ただ、地域のクリニックとしては、それだけでなく風邪や胃腸炎といった一般的な疾患への対応も必要と考え、内科一般の診療もおこなっているが、割合としては内視鏡の患者さんのほうが多いのが現状である。
 「痛い」とか「苦しい」といったイメージのある内視鏡だが、私たちのクリニックでは「不安のない状態で、安心して楽に検査や治療を受けていただきたい」と考え、「苦しくない内視鏡」をモットーに、最新の設備と高い技術を有するスタッフで診療にあたっている。より高レベルで専門性の高い検査・治療をおこなうために、つねに最新の内視鏡機器をチェックし、数年の一度の割合でリニューアルもおこなっている。おかげで現在は、患者さんの口コミや、内視鏡医療をおこなっていない内科クリニック等からの紹介により、胃や大腸の内視鏡検査は年間4200件、大腸ポリープ切除などの内視鏡手術は年間900件と、多くの患者さんに受診いただいている。

一番のこだわり

ともにクリニックを支えていくスタッフを自らの目で選ぶこと

013 開業にあたり、もっともこだわったことは、医師やスタッフの人選である。採用については一般に募集したり、知人に声をかけたりしてすべての人に自分が面接をしたが、最も重視したのは協調性や謙虚さといった「人間性」といえるだろう。
 知識や技術ももちろん大事だが、仕事の面では、病院が違えばやり方も違って当たり前なので、一から覚えていく気持ちがあればなんとかなると思った。それより、小さなクリニックのなかで毎日一緒に働くことを考えると、人の意見が聞けるとか、周囲の人たちとうまくやっていけるといった部分のほうが大切だと考えた。ただ、面接だけでその人のすべてがわかることは少ないし、実際に働き始めてから「こんなはずじゃなかった」「ちょっと違う」と感じることも、お互いにあるのは仕方のないこと。院長としてスタッフとのコミュニケーションの場を設けたりすることもあるが、やはり人間同士なので性格や相性もある。うまくいかないときは、そのときそのときで対応していくしかないのだと思った。
 現在は、やさしい心を持つスタッフに恵まれていると感じている。クリニックには毎日たくさんの患者さんが来院されるが、なかには体の不自由な方や、いろいろな障害をお持ちの方もいる。そのような患者さんが来院されたとき、スタッフたちはみんな、迷うことなくスムーズに診察を受けていただけるよう手助けをする。私が患者さんに気づき、何か言う前に、すでに動いて対応してくれているので、私の出る幕がないと感じるほどだ。患者さんを思う気持ちが強いことはもちろん、人として心のやさしい人たちが集まってくれているのだと思う。これは私の誇りでもある。

一番の工夫

設計のポイントは「自分は狭く、患者さんは広く」

 開業する場所は、自分が育ち、今も両親が暮らすこの地に決めた。開業前に5年ほど勤務した茅ヶ崎という別の場所にもひかれ、少し迷ったが、良いご縁に恵まれて、すぐ裏に実家があるこの敷地を借りられたので、こちらに決めた。
 設計の時点から携わってきたが、都内ということもあり、それほど広い立地ではないため、「狭いスペースをいかに有効活用するか」と「動線の確保」について工夫し、限られた空間を最大限に活かせるよう考えた。言ってみれば、診察室などは狭くてもいい。それより、検査のためのスペースや待合室など、患者さんのためのスペースを少しでもゆったり取れるように、そして、患者さんやスタッフが移動するための空間は広めにとれるように配慮したつもりである。
 広々した空間は物理的には不可能だが、待合室の窓を大きくとり、庭の木々がよく見えるようにした。東京でありながら、このあたりはとても緑が多く、それも気に入っているところのひとつ。あえてテレビは置かず、待ち時間には静かな空間で緑を眺めていただき、少しでも癒しやリフレッシュを提供できればと考えている。

一番の秘訣

失敗は当たり前。失敗から学ぶ気持ちでくじけない心を持つ

 自らの経験で感じたことだが、「最初からうまくいくはずがない」と思っておくことが必要かもしれない。どんなに準備をしても、実際に開業してみないとわからないことのほうが多い。前述したスタッフのことも、経営のことも、診療方針のことも、すべてのことにおいて、「やってみなければわからない」といえる。失敗してわかることも多いし、そこから学んだことが成長につながると考え、謙虚な気持ちで反省しながらやっていくこと、何度失敗してもくじけないタフな精神力を持ち続けることが何より大事だと考えている。
 人材採用については、面接は非常に大事なので人任せにせず、自分でしたほうがいいだろう。仕事については、あえて厳しいことを言うことが必要と考えている。厳しいことを言って来なくなるなら、それは採用しないほうが正解といえるだろうし、いいことばかりを並べても、働き始めてから「こんなはずでは」になることは目に見えている。
 実は、開業当時は「こういうクリニックにしたい」という将来への展望や、それほど明確なビジョンを持っていたわけではなかった。ただ、それが必ずしも悪いとも考えていない。人間、10年もたてば考え方も変わるし、社会のさまざまな状況も変化する。開業し、日々患者さんの診療を重ねていくなかで、自分たちが求められていることを実感したら、それに応じての方針転換はあり得ることだと思う。フットワーク軽く、そのときに「自分たちが患者さんのためにできること」を精一杯することが重要ではないだろうか。

一番の夢

「開業医の中でベスト」の内視鏡医療のレベルを維持する

 地域の開業医としては、患者さんに安心してもらえる医療、患者さんが求める診療を提供していきたいという気持ちがあるため、つねに社会の動向や病気の傾向、患者さんのニーズなどにはアンテナを張り、チェックすることを心がけている。今後10年ぐらいは今の状態を継続していきたいと考えているが、15年後のことは、正直わからない。世の中のニーズが変われば、またクリニックの方針も変わっていく可能性があるだろう。
 あまり「こうでなければ」と決め付けず、フットワーク軽く、そのときそのときに「今、自分たちがすべきこと」を探し、精一杯取り組んでいきたいと考えている。
 内視鏡医療においては、個人で開業しているクリニックとしては最高レベルの技術を提供できていると自負している。これからも、現在の医療レベルをキープできるよう努力と勉強を重ね、ひとりでも多くの患者さんに「このクリニックに来てよかった」と満足していただける診療を続けていきたい。
 地域の開業医として、この町に住む方々の健康をサポートしながら、内視鏡専門医として、迅速な検査から治療、適切な術後管理まで、ひとりひとりの患者さんを一貫して見られる医師、クリニックでありたいと考えている。

医院プロフィール

とよしまクリニック

東京都世田谷区成城6-18-3-A
TEL:03-5429-9555
医院ホームページ:http://www.ichou.com/


小田急線「成城学園前」駅北口より徒歩3分。待合室の窓から眺める木々に癒される、緑に囲まれたクリニックです。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

内科、胃腸科、外科

理念

最先端の内視鏡医療と総合的な内科胃腸科診療を提供する

院長プロフィール

豊島治(とよしま・おさむ)院長略歴

1993年 東京大学医学部卒業 同大学附属病院 第一外科、消化器・血管外科
JR東京総合病院 麻酔科
東京大学医学部附属病院 胸部外科
三井記念病院 内科
東京大学医学部附属病院 消化器内科
茅ヶ崎市立病院 消化器内科医長
2002年 とよしまクリニック開院

所属学会

日本内科学会認定医、日本外科学会認定外科専門医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会会員、東京都医会員、世田谷区医師会委員、身体障害者福祉法指定医

内視鏡医療に特化したクリニックとして、最高レベルの技術とスタッフで臨んでいるという誇りを感じる一方、気さくなお人柄で患者さんやスタッフとの信頼関係を深めているご様子もうかがい知ることができました。

※記事内で使用している写真の一部はとよしまクリニック様より提供されたものです。