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術前に運動療法や食事改善などを行う「プレハビリテーション」、術後合併症リスク減

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2025年02月06日 PM02:45

手術前の運動や栄養改善は術後の転帰を改善する

手術を控えた患者に対し、術後の早期回復を目的に術前から運動療法や食事療法、心理的サポート、認知トレーニングなどを行うことを「」という。オタワ病院研究所(カナダ)の麻酔科医であるDaniel McIsaac氏らによる新たな研究で、プレハビリテーションを受けた手術患者は、通常のケアを受けた患者に比べて、術後合併症が少なく、入院期間が短く、身体的回復が早く、健康関連の生活の質(QOL)も高いことが示された。この研究の詳細は、「The BMJ」に1月22日掲載された。


画像提供HealthDay

McIsaac氏は、「手術の予定がある人は、プレハビリテーションについて医師に尋ねるのが得策だ。手術の数週間前から定期的に身体活動を行い、タンパク質の摂取量を増やす意志と能力があれば、術後の回復期間を短縮できる可能性がある」と述べている。

研究グループによると、「プレハビリテーション」という言葉が初めて科学的な文脈で使われたのは、第二次世界大戦後の英国で実施された、新兵の健康と体力を向上させる取り組みにおいてであったという。その後、この言葉は医学界でも使われるようになり、以来、30年間にわたり「プレハビリテーション」は主要な研究分野となっている。

McIsaac氏は、「身体的な健康状態が良好であるほど、手術後の回復が早く、合併症も少ないことは分かっている。多くの患者は、医師の勧めもあり、手術前に体力を改善したいと考えているものの、どこから手をつけ、どのように進めればよいのか分からない場合が多い」と話す。

今回の研究でMcIsaac氏らは、プレハビリテーションに関するランダム化比較試験(RCT)の結果を統合して、手術を受ける成人における、、健康関連QOL、身体的な回復などの転帰に対するプレハビリテーションの効果を評価した。対象としたRCTの総数は186件、対象者の総計は1万5,684人に上った。

解析の結果、通常のケアと比べて術後合併症の発症抑制に対する効果が特に高かったのは、運動単独のプレハビリテーション(オッズ比0.50、以下、「プレハビリテーション」を省略)、栄養単独(同0.62)、運動・栄養・心理社会的要素の組み合わせ(同0.64)であることが明らかになった。また、入院期間の短縮に最も効果があったのは、運動と心理社会的要素の組み合わせ(−2.44日)、運動と栄養要素の組み合わせ(−1.22日)、栄養単独(−0.99日)、運動単独(−0.93日)であった。さらに、運動・栄養・心理社会的要素の組み合わせは、健康関連QOLの向上(短縮版SF-36の身体機能尺度での平均差3.48点)と身体的な回復(6分間歩行テストでの平均差43.43m)に対する効果が最も高かった。

ただし、研究グループは、対象RCTの多くが単一の病院で実施されたものであることに言及し、得られた結果が、病院や厳重に管理された研究環境以外の場所にどの程度当てはまるのかは不明だとしている。McIsaac氏は、「プレハビリテーションは非常に有望だが、病院や医療システム全体でそれをどのように実施するのが最善なのかは、まだ明らかになっていない。われわれは、患者がプレハビリテーションを実践すれば、その恩恵を受ける可能性は高いと確信している。大きな課題は、どうすればシステムレベルで、全ての外科患者に有効なプレハビリテーションを提供できるかという点だ」と話している。(HealthDay News 2025年1月24日)

▼外部リンク
Relative efficacy of prehabilitation interventions and their components: systematic review with network and component network meta-analyses of randomised controlled trials

HealthDay
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