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アトピー性皮膚炎、「ダニ特異的エフェクターT細胞>制御性T細胞」で発症-筑波大ほか

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2023年05月31日 AM11:09

、健常者よりTreg数が多いのに症状があるのはなぜ?

筑波大学は5月30日、アトピー性皮膚炎患者の血液中では、アトピー症状を引き起こす方向に働くダニ特異的T細胞が、炎症を抑制する方向に働くダニ特異的制御性T細胞より多い傾向にあることを発見したと発表した。この研究は、同大医学医療系の高田英俊教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の沖山奈緒子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

アトピー性皮膚炎の病態は、皮膚表皮バリアの異常、免疫異常、搔痒の3つの要素が複雑に絡み合って形成される。特に、免疫異常が病態の骨格をなしており、Th2サイトカインによる炎症機構が疾患のバックグラウンドであることが知られている。このTh2タイプの炎症反応を抑制する方向に働く免疫細胞として、(Treg)がある。Tregは自己免疫やアレルギー、炎症といった過剰な免疫反応を抑制して、免疫恒常性を維持するのに重要な役割を果たしている。アトピー性皮膚炎患者におけるTreg数やその免疫動態については未だ議論されており、未解明な部分も多くある。近年、アトピー性皮膚炎の患者では健常者と比べてTreg数が多いという報告が散見されるものの、免疫の炎症反応にブレーキをかけるはずのTregが多いにも関わらず、依然としてアトピー症状を呈しているという事実は逆説的だ。

患者19人・健常対照者14人、ダニ特異的Treg・Teffを詳細に解析

上記の相反する事象を説明するために、今回の研究では、アトピー性皮膚炎患者のT細胞を詳細に解析する研究を計画した。2020年5月~2021年7月までに筑波大学附属病院を受診した中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者19人、健常対照者14人の同意を得て血液を採取し、アトピー性皮膚炎の主要抗原であるダニに特異的に働くT細胞を同定した。さらに、アトピー性皮膚炎患者と健常者のダニ特異的Tregとダニ抗原特異的エフェクターT細胞(Teff)の頻度と表現型を調べ、単一の抗原に働くTregとTeffの数的・力学的バランスを明らかにした。

患者群でEASIスコアとTreg総数の割合に正の相関

研究の結果、これまでの報告と同様、アトピー性皮膚炎の患者群は健常対照群に比べてTregの総数は多い傾向が見られた。また、皮膚に浸潤する細胞であることを示す細胞表面抗原CLA陽性のTregの割合も、患者群で高い傾向にあった。アトピー性皮膚炎の患者では、荒れた皮膚でより多くの抗原感作が起こるためCLA陽性のTregが多く、結果的にTregの総数も多くなると考えられた。実際、アトピー性皮膚炎の患者群では、アトピー性皮膚炎の評価指標の1つEASIスコアとTreg総数の割合に、正の相関が認められた。

患者群のダニ特異的Treg/Teff割合、健常対照群より有意に低い

しかし、ダニ単一抗原に特異的なT細胞に着目して解析をすると、アトピー性皮膚炎の患者群におけるダニ特異的Treg/Teffの割合は、健常対照群より有意に低いという結果が得られた。また、患者群のダニ抗原特異的Teffは、アトピー性皮膚炎の病態の中心的役割を担う炎症性サイトカインであるIL-4およびIL-13を、健常対照群より多く産生していた。アトピー性皮膚炎の患者群と健常対照群でダニ特異的Tregによるダニ特異的Teffの増殖抑制機能には差は認められなかった。

アトピー性皮膚炎患者、ダニに対して免疫寛容を獲得できず症状を呈する

以上の結果から、アトピー性皮膚炎患者ではTregの総数は多い傾向にあるものの、ダニ特異的T細胞に着目すると、向炎症性のTeff優位の免疫バランスが存在することから、アトピー性皮膚炎患者はダニに対して免疫寛容を獲得できず、アトピー症状を呈すると考えられた。

アトピー性皮膚炎に対する新規治療法として、皮膚において抗原特異的にTregを誘導し、健常者に近いT細胞免疫バランスに近づけることのできる免疫療法の開発に取り組んでく、と研究グループは述べている。

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