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「検査当日に結果が出る」画期的な出生前検査法を開発、検査の正確度は98〜100%

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2022年08月30日 PM12:00

当日に結果の出る安価な出生前検査法を開発

胎児に流産リスクを高める遺伝的問題があるかどうかを検査当日のうちに知ることができる、新たな検査法が開発された。Short-read Transpore Rapid Karyotyping()検査と呼ばれるこの検査では、羊水穿刺や絨毛膜絨毛サンプリングなどの出生前検査で採取されたサンプルや、流産子宮内容物や体外受精(IVF)により作られた着床前の胚生検の組織を用いて、染色体数の異常な増減(異数性)を確認できるという。米コロンビア大学アーヴィング医療センターのBrynn Levy氏やZev Williams氏らが実施したこの研究は、「The New England Journal of Medicine」8月18日号に掲載された。


画像提供HealthDay

染色体異数性は流産、胎児の形態異常や発達遅延の主要な原因である。そのため妊婦健診や不妊治療では、遺伝子異常を見つけることが重要となる。既存の遺伝子検査ツールには、迅速かつターゲットを絞ったアプローチと全ゲノムを調べる包括的なアプローチの2種類に大別される。しかし、前者には限られた染色体のサブセットしか調べられないという問題があり、後者には結果が判明するまでに日数がかかる上に、検査できる機関も限られており、費用も高額という欠点がある。

こうした問題を解決するために研究チームが開発したのが、STORK検査である。STORK検査では、手のひらサイズのナノポアシーケンサーを使ってDNA配列の解析を行う。今回の報告は、この検査法の検証結果である。

STORK検査の検証は、218個のサンプルを用いて行われた。サンプルには、流産子宮内容物(64サンプル)、絨毛膜絨毛サンプリング後の絨毛膜絨毛(52サンプル)、羊水穿刺による羊水(50サンプル)などが含まれていた。その結果、標準的な検査を基準とした場合、STORK検査の正確度は98〜100%であることが明らかになった。また、別の60サンプルのセットを使って、STORK検査の訓練を受けた技師が同検査を行ったところ、得られた結果は標準的な検査による結果と100%一致した。

研究グループは、「現行の標準検査では結果が出るまでに数日かかるのに比べて、STORK検査では数時間で結果が判明する」と述べる。STORK検査にかかる所要時間と費用は、1サンプルの場合では10分、200ドル(1ドル137円換算で2万7,400円)だが、10サンプルを一度に解析する場合では、所要時間は2時間、費用は1サンプル当たり50ドル(6,850円)足らずだという。また同検査は、サンプルを分析センターなどに送る必要はなく、診療所や病院で実施可能だ。

現在、遺伝子検査はこれまでに流産を複数回経験した女性にのみ推奨されている。これに対して研究グループは、「STORK検査のような簡便で安価な検査なら、初めて流産を経験した後でも実施を提案できるのではないか」との見方を示している。さらに、「STORK検査により、IVFプロセスが合理化され、凍結前に胚の生存率を迅速に検査できるようになる可能性がある」とも述べている。(HealthDay News 2022年8月18日)

▼外部リンク
Rapid Nanopore Sequencing–Based Screen for Aneuploidy in Reproductive Care

HealthDay
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