医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 海外 > 出会ってすぐに意気投合するペアは「体臭」が類似?-イスラエルの研究

出会ってすぐに意気投合するペアは「体臭」が類似?-イスラエルの研究

読了時間:約 2分39秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年07月08日 PM12:00

体臭の類似性は友を呼ぶ?

出会ってすぐに意気投合するペアでは、ランダムに選んだ知らない者同士のペアと比べて体臭が類似している可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。この研究では、人の嗅覚を模倣して特定の香りを知覚する電子鼻により体臭を分析することで、初対面でも気の合う人たちを予測できることも示されたという。ワイツマン科学研究所(イスラエル)のInbal Ravreby氏らが実施したこの研究の詳細は、「Science Advances」に6月24日掲載された。


画像提供HealthDay

この研究は、ソーシャルメディアを通じて集めた、初対面で意気投合したことを互いに認めた友人のペア20組(男女各10組ずつ、平均年齢24.757歳)を対象に実施された。対象者は同性の友人で、恋愛関係にはない者とした。対象者には、無香料の石鹸とコットン100%のTシャツを提供し、毎夕、石鹸で体を洗った後にTシャツを2晩連続で着用してもらい、そのTシャツを体臭のサンプルとした。回収したTシャツのにおいを電子鼻により分析したところ、各対象者の体臭は、他の対象者と比べてペアである友人の体臭に似ていることが明らかになった。この結果は、人によるTシャツのにおい判定からも裏付けられた。

次にRavreby氏らは、互いに相手を知らない17人を対象に、同様の手法で体臭サンプルを収集し、電子鼻でにおいの分析を行った。対象者には50cm離れた場所に立ち、無言で互いに同性の相手の手の動きを真似するミラーゲームを行って、相手との相性を判定してもらった。その結果、電子鼻はにおいの類似性を基に、どの人たちが意気投合するのかを71%の精度で予測できることが示された。

この研究をレビューした米モネルケミカルセンシズセンターのValentina Parma氏は、「この研究結果は、友情の形成に嗅覚も役立っていることを示唆するものだ」と話す。同氏は、「われわれの嗅覚に対する意識は、他の感覚に比べると希薄だ。視覚や聴覚の検査は定期的に行われるが、嗅覚の検査が行われることはまずない」と指摘する。

Parma氏は、「それでも、嗅覚が人間関係の構築に重要な役割を果たしていることは明らかだ」と指摘し、新生児をその好例として挙げる。同氏は、「新生児の目はまだはっきりとは見えないが、鼻は効く。そのため、新生児は、母親とその母乳のにおいを何よりも好む。また、誰かに恋愛相手として魅力を感じる場合にも、そこににおいが関わっていることを示すエビデンスもある」と説明する。

Parma氏は、「友情とは、相手のことを嗅ぎ分けるように探るだけで形成されるような単純なものではない。相手のことを知るときには、言葉でのやりとりだけでなく、表情やボディランゲージなどの視覚的な手がかりも参考にする。また、人格、価値観や信念、映画や音楽に関する意見なども気にかける。だからといって、友情形成における嗅覚の役割を軽視してよいということではない。おそらく誰もが直感的に、“この人とは馬が合う”と思う相手に出会ったことがあると思うが、その際には嗅覚が関与していた可能性がある」と話す。

では、なぜ人間はにおいに基づいて友情のつながりを感じるのか。Ravreby氏は、「体臭は、遺伝的構造、特に免疫機能と相関関係にある。他人のにおいをかいでその人の体臭と自分の体臭を比較し、それにより、相手の遺伝子と自分の遺伝子の類似性を推し量ることができるのかもしれない。においから自分に近い遺伝子を持つ人を見つけてその人を助けることは、自分の遺伝子を残すことにもつながるため、進化の点では利点をもたらした可能性がある」と推測する。

Ravreby氏によると、友情を築く際に、人々が相手のにおいをどの程度重視しているのかを言い表すことは難しいという。それでも同氏は、「われわれはある人と仲良くなろうとする一方で、別の人を避けようともする。そうした傾向には、体臭の類似性が重要な役割を果たしているはずだ」との考えを示している。(HealthDay News 2022年6月24日)

▼外部リンク
There is chemistry in social chemistry

HealthDay
Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Weizmann Institute of Science
このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 海外

  • 大腸がんの血中ctDNAによる検出精度は83%、前がん病変の検出能は低い-米研究
  • 一部のクジラ類で閉経があるのは、子どもや孫の生存を助けるため?
  • ショートスリーパーは健康的な食習慣でも2型糖尿病の発症リスクが高くなる
  • GLP-1受容体作動薬使用者の56%で術前に多量の胃残留物、GL推奨の絶食時間は不十分?
  • 世界の肥満人口がついに10億人突破か、小児でも1億5000万人以上と推定-英研究