ACSのがんサバイバーのためのガイドラインが改訂
がんサバイバーの栄養と身体活動の重要性に焦点を当てた米国がん協会(ACS)によるガイドラインが改訂され、その概要が「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に3月16日報告された。ACSの患者会活動部門のトップを務めるArif Kamal氏は、「ACSは全てのがんサバイバーが医療提供者とともに、個々のニーズに合った栄養や身体活動のプログラムを組み立てることを推奨する。食欲低下や摂食・身体活動の妨げとなる症状、または治療の副作用によってそのような症状が現れている場合、この点が特に重要だ」と語っている。

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米国のがん患者の生存率は68%であり、同国内で1690万人のがんサバイバーが生活を送っている。ACSは2006年、そのようながんサバイバーを対象としたガイドラインの初版を発行し、2012年に改訂していた。今回の改訂版には2012年以降に蓄積されたエビデンスが反映されている。
最新版のガイドラインの骨子は以下のとおり。
・がんサバイバー関連の一般的な推奨事項:
‐栄養素の不足を予防または解消し、筋肉量を維持し、栄養状態に悪影響を与える可能性のある治療の副作用をコントロールすることを目的として、栄養評価とカウンセリングを診断後のできるだけ早い段階に開始する必要がある。
‐患者が治療開始の準備を整え、治療を継続し、がん関連の症状および治療関連の副作用のコントロールを可能とすることを目的として、身体活動の評価とカウンセリングを診断後のできるだけ早い段階に開始する必要がある。
・健康状態を長期間にわたって改善し、生存率を高めるための推奨事項:
‐肥満を避け、食事療法や身体活動を通じて筋肉量を維持または増加させる。
‐がんの種類、患者の健康、治療法、症状と副作用を考慮し、個別化した身体活動を習慣的に行う。
‐栄養素のニーズを満たし、慢性疾患を予防するための一般的推奨事項と一致する、健康的な食生活を維持する。
‐新たな発がんリスクを抑える、がん予防のための食事療法と身体活動に関するACSガイドラインの一般的なアドバイスに従う。
ACSによると、身体活動は、乳がん、結腸がん、前立腺がんなど、患者数の多いがんの患者生存率を高めるように働くという。一方、肥満は、乳がん、子宮内膜がん、膀胱がんの患者転帰の悪化と関連しているとのことだ。また、肉類、高脂肪乳製品、精製穀物、フライドポテト、菓子、デザートを多く含む“西洋型”と呼ばれる食事スタイルは、結腸がん、乳がん、前立腺がんの生存者の転帰を悪化させるとしている。
全体として新ガイドラインでは、野菜、マメ科植物、果物、全粒穀物を多く含み、反対に赤肉や加工肉、加糖飲料、超加工食品、精製穀物をなるべく含まない食事を推奨。ACSでは具体的に、地中海式食事スタイルを「前立腺がん患者の転帰改善に関連する健康的な食事の一例」として取り上げている。
アルコールについては、がんと診断されてからの飲酒が予後にどのような影響を与えるかは、多くのがん種で明らかでないとしながらも、肝臓、喉頭、咽頭、頭頸部のがんについては、診断後のアルコール摂取量が多いと、全死亡(がん死に限らず、あらゆる原因による死亡)のリスクが高くなると述べられている。
Kamal氏は、「この報告の中で示されている良いニュースは、食事療法と身体活動によって、いくつかの種類のがん生存者の転帰を改善することが可能だという点だ。その一方で、患者数が多くないがん、または生存率が高くないがんについては、まだ解明されていないことが多々残されている。ACSは、この重要なトピックに関する研究を継続して支援していく」と述べている。
▼外部リンク
・American Cancer Society nutrition and physical activity guideline for cancer survivors

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