■厚労省が論点
厚生労働省は、向精神薬のベンゾジアゼピン(BZ)系薬の長期服用で生じる薬物依存リスクを踏まえ、現在30日以内となっている投薬期間の上限と薬剤数の見直す論点を、18日の中央社会保険医療協議会総会に示した。BZ系薬の適正使用に向け、医師の指示による分割調剤など薬剤師・薬局と連携した取り組みを評価する方向性も示されたが、支払側委員からは「新たな評価は不要。重複投薬・相互作用等防止加算の算定を着実に増やしていくことで対応できる」と慎重意見も出た。
向精神薬のBZ系薬は、連用によって薬物依存が生じることが指摘され、海外では英国やフランスなど投与期間が制限されている国もあるが、日本では抗不安薬・睡眠薬の投薬期間は30日が上限となっており、継続投薬に制限はないのが現状となっている。
厚労省によると、依然として3剤以上の処方は29%と約3割を占め、向精神薬を1剤以上含む処方の投薬期間は8割以上が22日以上と長期化している実態が見られる。このことから、BZ系薬など向精神薬の薬剤数と処方期間を見直す論点を示した。
また、向精神薬の適正使用に関して、薬局の薬剤師が服薬状況を確認し、処方医に情報提供する分割調剤が医師の指示を前提に認められていることなどを踏まえ、薬剤師・薬局と連携して適切な薬物療法を進める取り組みを評価する論点も示した。
診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は「BZ系薬の連用は多いと感じている。実際に、BZ系薬の処方をやめると副作用がかなり減少するため、処方の規制は必要」と臨床現場の実感を述べた上で、薬剤師・薬局との連携について「薬剤師からBZ系薬の使用に疑義を上げてもらう体制は必要」と評価する方向性に賛同。安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)も「BZ系薬は連用による薬物依存だけでなく、高齢者にとって転倒や骨折リスクもあり、医師と薬局の連携を充実させていくことが重要」と強調。「既に長期服用している患者が適切に減量、減薬する仕組みを評価する必要がある」と訴えた。
一方、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「薬局との連携を評価するというが、現状がどうなっていて、どこを見直すのかエビデンスがないと釈然としない」と慎重姿勢を示し、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も「新たな評価はもう不要。重複投薬・相互作用等防止加算もあるし、かかりつけ薬剤師指導料も新設された。まさに、かかりつけ薬剤師が本領を発揮する場面ではないか」と評価に否定的な考えを示し、重複投薬・相互作用等防止加算の算定を着実に増やしていくことで対応できるとの認識を示した。