従来手法では「いつ」「どの動作」で線量が上昇するかなど詳細な定量分析は困難
東北大学は10月23日、半導体式リアルタイム線量計を用い、核医学技師の頭部および頸部に線量計を装着して、1秒ごとに線量を記録し時系列解析を行ったと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科放射線検査学分野の藤沢昌輝大学院生、災害放射線医学分野の千田浩一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Applied Sciences」にオンライン掲載されている。

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核医学検査は、放射性医薬品を体内に投与して臓器の機能や代謝を画像化する検査法であり、診断精度の高い有用な手法として広く実施されている。一方で、医療スタッフは非密封放射性物質から放出されるγ線に日常的にさらされるため、職業被ばくリスクが高いとされている。
国際放射線防護委員会は、眼の水晶体線量限度を2011年に20mSv/年(5年間で100mSv)へと引き下げ、被ばく管理の強化を勧告した。しかし、核医学領域では被ばく要因が作業内容や動線、個人の姿勢によって複雑に変化するため、従来の受動型線量計による累積線量測定では詳細な要因分析が困難だった。
特に、核医学検査では投与や画像撮影の間に患者へ直接接触する機会が多く、被ばくが発生する「タイミング」や「動作」の特定が課題となっていた。従って、被ばく要因を定量的に明らかにするためには、時間的分解能に優れたリアルタイム線量計による行動解析が必要とされていた。
心筋血流シンチグラフィ検査時の放射線被ばく、リアルタイム線量計で1秒間隔に記録
研究グループは、核医学検査の一つである心筋血流シンチグラフィ検査を対象として、放射性薬剤投与時と検査時における医療スタッフの作業中の放射線被ばくを実測し時系列解析を行った。
半導体式リアルタイム線量計を使用して放射線技師の被ばく状況を1秒間隔で記録し、線量データと同時撮影したビデオ映像と照合し、作業工程ごとの線量変化を詳細に解析した。
心電図リードの装着・除去や体位調整など患者との近接動作時に線量ピークを確認
その結果、放射性薬剤注射直後の操作(注射針の処理など)、心電図リードの装着・除去、患者移乗・体位調整などの作業の際に、線量のピークが検出された。一方でSPECT画像の撮像中には線量上昇は観察されなかった。これにより、被ばくの主要因が患者との近接動作に集中していることが定量的に示された。
被ばく低減の新しいアプローチ、安全確保と検査効率の両立につながると期待
これらの結果および調査手法は、核医学検査における職業被ばくを最適に低減するための新しいアプローチの基盤となりえる。
「今後は、他の核医学検査や放射性医薬品を使用した治療へ拡張する予定である。また、職員教育プログラムや遮蔽板配置の設計に今回の結果を反映させることで、医療スタッフの安全確保と検査効率の両立が期待される」と、研究グループは述べている。
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