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VRで野球の「選球眼」を科学的に解明-新潟医療福祉大

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2025年10月30日 AM09:30

打撃成績を左右する「選球能力」、定量的に評価する方法はなかった

新潟医療福祉大学は10月21日、野球の打者の選球能力(ストライク・ボールを見極める能力)が打撃成績に強く関連することを発見し、また、選球能力と実行機能が独立して打撃パフォーマンスに貢献することを実証したと発表した。この研究は、同大健康スポーツ学科の越智元太講師、森下義隆准教授(現・大阪経済大学)、西原康行教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Sports」に掲載されている。


画像はリリースより
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野球において、投球がストライクゾーンを通過するかボールゾーンを通過するかを見極める「選球能力」は、打撃成績を左右する重要な要素である。優れた選球眼を持つ打者は四球を選ぶ確率が高まるだけでなく、打ちやすいコースにきた球を選んで打つことで打率向上にもつながる。しかし、これまで選球能力を定量的に評価する方法は確立されておらず、効果的なトレーニング方法も開発されていなかった。

今回の研究は、野球の「選球眼」を科学的に測定する新たな手法としてVR技術の有効性を実証した。

VR課題のストライク判定正確性、公式戦の出塁率・四球率と有意な相関

研究グループは、北信越地区大学野球連盟1部リーグに所属する男子大学生野球選手14人を対象に、VR選球課題、空間ストループ課題を実施した。さらに、対象者が出場した公式戦の打撃成績を集計した。

VR選球課題では、360度カメラで撮影した実際の投球映像をヘッドマウントディスプレイで提示し、ストライク・ボールの判定を全80球について行わせた。空間性ストループ課題では、画面上の矢印の向きと位置の一致・不一致を判定させることで、実行機能(特に空間的干渉処理能力)を評価した。打撃成績は、2020年秋季から2023年秋季までの公式戦データから打率、出塁率、四球率などを算出し、VR選球課題と空間性ストループ課題との関連性について分析した。

その結果、VR選球課題の正答率(特にストライク判定の正確性)が出塁率(r=0.57,p<0.05)および四球率(r=0.82,p<0.05)と有意な正の相関を示した。

実行機能(認知処理速度)は選球能力とは独立し打撃成績に貢献

また、空間ストループ課題(垂直方向)の反応時間が速い選手ほど、ストライク判定の正確性が高いことが明らかになった(r=-0.67,p<0.05)。媒介分析の結果、選球能力と実行機能は独立して打撃パフォーマンスに貢献しており、実行機能が選球能力を介して間接的に影響するのではないことが示された。

VRを用いた選球トレーニングや認知トレーニングが、競技力向上に寄与する可能性

今回の研究では、VR選球課題の成績が実際の公式戦における出塁率(OBP)や四球率(BB%)と有意な相関を示すことを発見した。また、空間ストループ課題で測定した実行機能がストライク判定の正確性と関連することも明らかになった。さらに、空間的な実行機能が選球能力の一部と関連することを発見し、選球能力と実行機能が独立して打撃パフォーマンスに貢献することを実証した。

「今回の研究で開発したVR選球課題は、実際の投球場面を簡便に再現でき、新たなトレーニング手法として期待される。また、研究成果により、これまでブラックボックスとされてきた打者の選球能力を科学的に評価・向上させる新たな手法の開発につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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