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結節性硬化症(TSC)座談会「討議:結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫治療の実際」後編

読了時間:約 12分30秒  2018年12月13日 PM02:01
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2018年9月1日(土)開催
会場:ザ・プリンス さくらタワー東京

提供:ノバルティス ファーマ株式会社

座談会
TSCに伴う腎AML診療が抱える課題と対応策とは?

参加者
  • 佐々木 ひと美 先生(藤田保健衛生大学病院 泌尿器科 教授)
  • 波多野 孝史 先生(JR東京総合病院 泌尿器科 担当部長)
  • 水野 隆一 先生(慶應義塾大学病院 泌尿器科 専任講師)
  • 迫田 晃子 先生(東京女子医科大学病院 泌尿器科 准講師)
  • 河野 春奈 先生(順天堂大学医学研究科 泌尿器外科学 助教)
  • 植村 元秀 先生(大阪大学大学院 医学系研究科 泌尿器科 講師)
  • 松川 宜久 先生(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科 講師)

所属・肩書は開催当時(2018年9月)

TSCに伴う腎AMLの診療体制
~複数の診療科が連携して診療にあたっている施設が全国にはある~


佐々木 ひと美 先生

佐々木(座長):波多野先生が概説しているとおり、結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex:TSC)に伴う腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)については、現在のところ国内外のガイドラインで相違点がある状況です。このようななか、各医療機関ではどのような診療を行っているのでしょうか。この総合討論では、治療介入基準やフォローアップについて、情報を共有していきます。そこでまずは、先生方の施設での診療体制について教えて下さい。

迫田:東京女子医科大学病院では、2015年にTSCボードを立ち上げました。小児科、脳神経外科、泌尿器科で始まり、翌年には口腔外科と呼吸器内科、2017年には眼科、遺伝子科、皮膚科も加わり連携しています(図2)。地域の病院である朝霞台中央総合病院てんかんセンターとも連携しています。受診する科は、成人の患者では泌尿器科、15歳までの患者では小児科で、成人になったら泌尿器科に移行します。スムーズに移行できるようコーディネート医師がいます。

植村:大阪大学医学部附属病院では5年ほど前にTSCボードを立ち上げ、現在、皮膚科、泌尿器科、小児科、呼吸器内科、放射線診断・IVR科、脳神経外科が参加しています(図3)。TSCボードは月1回開催し、初診の患者について、患者自身のご意向や精神症状の有無といった基礎情報や診察情報、腎AMLに対しては腎動脈塞栓術(Transcatheter Arterial Embolization:TAE)の適否を考慮して治療方針を決定しています。その結果を主治医や患者にフィードバックする流れです。TSCボードを含むTSC診療は、関わった診療科や診療の経緯などを電子カルテ上で共有できるシステムがあります。

河野:順天堂大学附属順天堂医院は3年ほど前にTSCボードを立ち上げました(図4)。参加しているのは、脳神経外科、皮膚科、小児科、放射線科、呼吸器内科、泌尿器科、大学医学部の病理腫瘍学講座です。当院の泌尿器科では、2014年4月にPKD/TSC外来を開設しており、腎AMLは放射線科と連携して診療にあたっています。

松川:名古屋大学TSCボードの発足は2016年で、コアメンバーは脳神経外科、小児科、呼吸器内科、泌尿器科の医師でしたが、最近では、精神科や化学療法部、遺伝カウンセリング、皮膚科の先生方なども参加しています(図5)。TSCボードでは、腎AMLの有無にかかわらず、他科の受診状況や合併症、各種検査結果についてチェックシートを使って調べています。他科受診状況を調べると、ほとんどが単科で処理されています。例えば、受診しているのが小児科のみであったり、腎臓をチェックしていなかったりということが多々ありました。そのようなTSC患者が他の診療科を受診し、不足している検査を受けることができるよう、他科と連携しています。窓口となるのは成人の場合は泌尿器や呼吸器科、小児の場合は小児科と異なりますが、必ず全身の検索ができるような体制を整えています。

水野:慶應義塾大学病院は、約1年前に母斑症センターを設立したばかりです。小児科、整形外科、皮膚科、泌尿器科で始まりましたが、参加する診療科はさらに増える予定です。各診療科の窓口となる医師を決めており、新規の患者が来たときには電話で相談できるようになっています(図6)。

波多野:JR東京総合病院は結節性硬化症専門外来を開設しています。TSCボードでは、腎AMLの治療介入について、患者や家族のご希望も含めて総合的に判断、決定しています(図7)。

TSCに伴う腎AMLの治療介入基準
~施設によって介入基準は様々~

佐々木:TSCに伴う腎AMLの治療介入基準について、それぞれの施設での方針などをお聞かせいただけますか。


水野 隆一 先生

水野:施設としては4cm以上、または多発で介入します。動脈瘤がある場合はInterventional Radiology(IVR)先行で治療を行います。しかし、IVRをなかなか受けてくれず、予防的に詰めるというよりは、出血したから詰めるという症例のほうを多く経験しています。

河野:当院では、5mm以上の動脈瘤合併例にはTAEを行います。上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)等のTSCに伴うその他の症状も合併している場合や、患者がTAEを拒否する場合にはエベロリムスによる介入を考慮します。サイズ増大のペースが速い場合は、動脈瘤が明らかでない場合でも、介入の対象としています。

植村:腎AMLについてはわれわれが最も重視しているのは動脈瘤の有無で、腎AMLの大きさが4cm以上でも動脈瘤がなければ必ずしも治療の対象とはしていません。腎AMLが複数ある場合も、TAEでは動脈瘤を消失させることを目的に行います。TSCに伴う症状が腎AMLのみの場合にはエベロリムスによる治療を行うことは少ないです。エベロリムスの投与を検討するのはTSCに伴うその他の症状を有する腎AMLであり、その場合は腎AMLの大きさはあまり重要視していません。


波多野 孝史 先生

波多野:われわれの施設での治療介入基準は「腎AMLに伴う症状を有する」「腎AMLが増大し、最大径が3cm以上」「両側にびまん性に腎AMLが存在」です。なお、1)腎AML以外にもTSC随伴疾患を有し、それらの治療も行う必要のある症例、2)びまん性の腎AMLを有する症例、3)手術後再増大もしくはTAE後再増大した腎AML、4)腎機能が低下(Cr >1.5mg/dL)した腎AML症例、5)安静や鎮静が保持できない腎AML症例、6)大声を出すといった入院が困難な腎AML症例は、エベロリムスを優先して投与すべきと考えています。

佐々木:各施設で介入の目的や基準は様々ですね。小児の動脈瘤はどのように治療されていますか。

植村:小児では、動脈瘤はまずないと思います。

波多野:私も見たことがありません。小児の患者で腎AMLが10cmほどある方は結構いますが、動脈瘤はありません。

佐々木:動脈瘤はまずないのですね。では小児の患者に対するエベロリムスの投与には、何cmから使うなどの基準はありますか。

波多野:先ほどの介入基準と同じで、何cmという縛りはなく、増大傾向があれば使用しています。

治療介入前、治療介入後の検査、フォローアップ
~じっとしてなければならないMRI検査の困難さから、選択されやすいのはCT検査~

佐々木:検査をどのように行っているのか教えてください。まずは、治療介入前の検査についてお願いします。

波多野:わが国のガイドラインに則って、両側腎に病変を認めない場合、もしくは、ごく小さな病変の場合は1~2年に1回、明らかな病変を有する場合は半年~1年に1回、可能であれば造影MRI、難しければ造影CTで画像診断を行っています。


河野 春奈 先生

河野:初回には超音波検査とMRI検査の両方を行っています。動きが多く検査が難しい患者ではMRIではなく、CTを撮ることもあります。その後は、腎AMLが3cm以上の場合は6か月後、3cm以下の場合は1年後に超音波検査またはMRI検査を実施しています。数回フォロー後、増大が認められなければ、大きくても1年後、人によっては1年半~2年後にするなど、臨機応変に対応しています。サイズ増大が認められた場合には、動脈瘤ができている可能性があるので、造影CT検査を行うようにしています。

佐々木:治療介入後の検査の内容や間隔はいかがでしょうか。

植村:TAEを行った場合には3か月後、エベロリムスを投与した場合には半年後に、いずれもCT検査で再評価しています。


松川 宜久 先生

松川:われわれも、エベロリムスによる治療を受けている患者は3~4か月に1回はフォローアップしています。造影CTもしますが、主に単純CTで大きさなどを確認しています。TAEをした患者は、最初は3か月後、その後は半年間隔で、造影CTで再増大がないか見ています。

佐々木:造影CTですね。他の先生方はいかがでしょうか。

河野:治療介入後は、TAEの場合は3か月後に初回造影CTです。エベロリムスを投与した場合は半年に1回ですが、被曝の機会を減らすためにMRIとCTを組み合わせています。

水野:TAEの場合は、基本的には「3か月後、その後は半年ごと」が妥当だと思います。エベロリムスを投与した場合は半年ごとに撮りたいのですが、実際には1年に1回ぐらいになっています。肺まで撮りたいということに加え、MRIは時間がかかる検査であるという2点からCTで撮影しています。

波多野:当院では、治療介入後には3か月に1回ほどの頻度で、原則的に造影の検査を行っています。

迫田:TAEの場合は3か月後にフォローアップを行いますが、基本的には超音波検査です。エベロリムスを投与した場合も、基本は超音波検査ですが、半年ごとに造影CTを行っています。

佐々木:検査の方法はCTが多く、次いでMRI、超音波のようですね。特に小児の場合には被曝を考慮してCTではなくMRI検査を選択したいところですが、鎮静が必要になるMRIは実施が難しいケースもあります。

河野:当院では、MRI検査やCT検査で鎮静が必要な小児は、小児科の先生が間に入り、実施してくれます。泌尿器科の医師が撮影している施設ではどのようにしていますか。

波多野:当院はTSCボードに麻酔科が入っていますので、麻酔科に依頼して鎮静下で撮像しています。患者には朝のうちに来てもらい、午前中に検査を行い、夕方には帰宅可能です。

佐々木:植村先生のところは、どの科の先生が鎮静をかけていますか。


植村 元秀 先生

植村:当院では、比較的短時間で撮影できるCT検査を選択すること、また小児患者が少ないという2点から、鎮静をかける機会があまりないです。まれに必要が生じたときには小児科の先生に協力してもらい泌尿器科の医師が撮影しています。CTなので少し眠っているくらいで撮影できます。

松川:当院でも小児科の先生に協力してもらっています。精神遅滞の小児患者が泌尿器科を受診することも多いのですが、MRI検査などは難しいので、小児科の先生が頭部を撮るときに腹部も撮影してもらい、定期的なスクリーニングを行っています。

佐々木:ここまでは画像による腎AMLの評価について話してきましたが、血液検査や尿検査による腎機能の評価についてはいかがでしょうか。例えばエベロリムスによる治療を開始した場合、次の外来はいつですか。

波多野:1か月後です。

植村:当院も1か月後ぐらいですね。ただ、最初は教育的な意味もあり1週間ほど入院してもらっています。

松川:私の施設も導入は入院で、外来は1か月後ですね。

河野:導入は外来です。2週間から1か月後に一度受診してもらっています。

水野:当院は外来導入で、2週間後の受診としています。

迫田:エベロリムス治療開始後の外来は2週間後です。

佐々木:みなさまの施設では2週間から1か月後に採血、検尿ということですね。当院も外来導入で、2週間後に1回受診してもらい、これらの検査を行っています。

今後の展望
~TSC患者のために、これからすべきこと~

佐々木:最後に、TSC患者のために今後このようにしたい、こうあるべきといった考えがありましたら、お聞かせください。


迫田 晃子 先生

迫田:患者の親御さんと話をしていると、患者が小さな頃から長い間、辛い思いをされてきたことがわかります。今は「ここを受診できて本当によかった」と言ってくれますが、当院のTSCボードに行き着くまでは本当に大変だったようです。全国には、まだまだこのような方がいるのではないでしょうか。患者、ご家族がもっとスムーズに適切な医療に出会えるよう、われわれが協力していく必要がある疾患だと思っています。

また、てんかんもあるTSC患者を、当院の神経内科の医師が診ていたのですが、TSCボードの存在を知らなかったことから、患者が私に伝えてくれるまでの長い間、地域のてんかんセンターにつなげることができなかったという事例がありました。この経験から、TSCボードについて、院外だけでなく院内でも啓発していく必要があると痛感しています。

水野:私はこれまで、がんの診療をメインでやってきたのもあり、TSCのように生涯にわたって薬を服用する患者が、どのような経過をたどっていくのか予測するのが難しいと感じています。患者の経過について、私の施設だけでなく全体で症例を集積していって、治療に役立てていくことも大切であると思います。

松川:私も水野先生と同様に、患者の長期的な経過を把握する必要があると考えています。そして長い目で先を見据えた場合に、どのような治療を行っていくのが最適なのか。このコンセンサスは、協力して作っていく必要があるのだろうと思います。

植村:TSCは希少疾患で、泌尿器科医みなが診療できるようになることは非常に困難であるため、患者を特定の医療機関に集中させたほうがいいと考えています。集中させることで、100人、200人の診察の経験がある専門的な医師が増えます。誰もが希少疾患の勉強に十分な時間を割ける状態ではないため、患者だけでなく、医療従事者にとっても望ましいことだと思います。

河野:私は成人を中心に診ていることもあり、腎AMLと診断されて受診された患者が、実はTSCであったというケースを非常に多く経験しています。そのため、泌尿器科医に対するTSCの啓発を、もっと行わなければいけないと思っています。

波多野:私は、冒頭にお話しさせていただいたITSCCCのガイドラインの内容を日本の医療事情に適合した指針に修正する必要があると考えます。このガイドラインでは、無症候で3cm以上のTSCに伴う腎AMLに対して、TAEは第一選択とはなっていません。しかし本邦では腎AMLに対してTAEを優先的に行っている施設があることも勘案すると、TAEを先行して行い、次の治療を行うといった方針についてもエビデンスを作り、治療の最適化を行う必要があるでしょう。

佐々木:ありがとうございます。患者さんのご両親はいつもご自分がケアできなくなったあとのことを心配されます。残された患者たちをみていくのはTSC診療に携わる私たちということになります。私たちは患者さん、ご家族の思いを知り、適切かつ最高の治療を今後も引き続き考えていく必要がありますね。本日は、どうもありがとうございました。

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