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結節性硬化症(TSC)座談会「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫治療の実際」前編

読了時間:約 7分55秒  2018年12月13日 PM02:00
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2018年9月1日(土)開催
会場:ザ・プリンス さくらタワー東京

提供:ノバルティス ファーマ株式会社

講演
Current Treatment Strategies in Tuberous Sclerosis Complex

波多野 孝史 先生(JR東京総合病院 泌尿器科 担当部長)

TSCに伴う腎AMLに対する
エベロリムスの有効性・安全性を評価したEXIST-2試験


波多野 孝史 先生

結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex:TSC)に伴う腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)にmTOR阻害剤エベロリムスが使用可能となった根拠のひとつ、第Ⅲ相国際共同臨床試験「EXIST-2試験」1)を紹介します。この試験では、TSCまたは孤発性リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)※1に伴う最長径3cm以上の腎AMLを1つ以上有する18歳以上の患者を無作為にエベロリムス群(10mg/日)とプラセボ群に割りつけ、1日1回連日経口投与しました。

その結果、主要評価項目である腎AMLに対する奏効率は、エベロリムス群では42%、プラセボ群では0%で、腎AMLのベースラインからの最良変化率(主要評価項目の補助的解析)でも、エベロリムス群は95%が縮小、5%が増大であるのに対し、プラセボ群は59%が縮小で、41%が増大という結果でした(図1)。 また「腎AML病変の進行までの期間(副次評価項目)」は、エベロリムス群ではプラセボ群に比べて有意に延長しました(p<0.0001、log-rank検定)。

副作用の発現率は、エベロリムス群では96.2%(76/79例)、プラセボ群では64.1%(25/39例)でした。エベロリムス群で発現率が最も高かった副作用は口内炎(口腔内潰瘍などを含む)で、74.7%(59/79例)で認められました。次いで感染症41.8%(33/76例)、高コレステロール血症22.8%(18/76例)でした。プラセボ群で比較的頻度が高かった副作用は好中球減少症で発現率は10.3%(4/39例)でした。

※1 アフィニトールの効能・効果は結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫であり、孤発性リンパ脈管筋腫症に伴う腎血管筋脂肪腫は未承認です

図1 腎AMLのベースラインからの最良変化率(主要評価項目の補助的解析)(EXIST-2試験:日本人を含む第III相国際共同比較検証試験)試験概要

ITSCCCでは「直径3cm以上の増大する無症候性腎AML」にmTOR阻害剤を第一選択で推奨

TSCの診断・検査、治療について、2012年のInternational Tuberous Sclerosis Complex Consensus Conference(ITSCCC)での推奨2)を、腎に関して振り返ります。腎病変の診断において推奨されているのは、「MRI検査で腎AMLおよび腎嚢胞を評価すること」のほか、「定期的な血圧測定による高血圧予防」、「eGFRによる腎機能の評価」です。検査は、1~3年ごとのMRI検査で腎AMLの増大と腎嚢胞を評価することが推奨されており、MRIが施行できない場合はCTまたは超音波検査を行うよう記載されています。年1回以上の腎機能検査と血圧測定も推奨されています(表1)。

次に治療に関する推奨です。急性出血を伴う腎AMLの第一選択は、塞栓術とその後のステロイド投与です。直径3cm以上の増大する無症候性腎AMLは、mTOR阻害剤が第一選択、選択的動脈塞栓術または腎部分切除術は第二選択として、それぞれ推奨されています(表2)。

わが国のガイドラインでは、有症状の場合は治療開始の絶対適応、無症状の場合は症例に応じた治療開始判断

わが国のガイドラインではどうでしょうか。日本泌尿器学会による、TSCに伴う腎AMLの診療ガイドライン2016年版3)のClinical Question(CQ)をいくつか取り上げます。

画像診断に関するCQ8「TSCに伴う腎AMLはどのような画像検査で診断するのか?」に対しては「まず腹部超音波検査」を推奨しています。CTやMRIによる精査は、超音波検査で診断が困難な場合や血尿などの症状がある場合、腫瘍径が4cm以上の場合、5mm以上の動脈瘤がある場合、悪性病変を否定できない場合などに行うとされています。ITSCCCの推奨である「まずMRI」「1~3年ごとにMRI」「MRIが施行できない場合にCTまたは超音波検査」と異なっています。ただしわが国のガイドラインでも、fat poorな腎AMLの診断には超音波検査は有用ではないと述べられていますから、まず超音波検査を行う方針であっても、fat poorな腎AMLには注意する必要があります。

治療介入基準に関するCQ14「TSCに伴う腎AMLに対するエベロリムスの使用はどのような場合に推奨されるか?」に対しては「無症候性でも長径3cmを超える大きさの腎AMLが存在する場合や、びまん性に腎AMLが存在する場合にはエベロリムスによる治療を考慮すべきである」と推奨しています。なお、この3cmという数値に確たる根拠がないとの理由から、推奨グレードはC1(科学的根拠は無いが、行うよう勧められる)になっています。

一方、治療介入基準に関しては「TSCに伴う腎AMLに対して、治療を開始する指標となる検査所見はなにか?」というCQ5もありますが、エベロリムスについてのCQ14とは異なり、腎AMLの大きさを具体的に示してはいません。TSCに伴う腎AMLの治療介入基準については様々な報告がありますが、現時点では指標の設定は困難と判断し、有症状であることが治療開始の絶対適応であり、無症状の場合は症例に応じた個別の判断が必要である旨の内容に留まっています。

フォローアップの基準に関するCQ10「TSC患者に対する腎のモニタリングはどのぐらいの頻度で必要か?」に対しては「両側腎に病変を認めない場合もしくはごく小さな病変の場合には1~2年に1回」「明らかな病変を有する場合は半年~1年に1回」の画像検査が推奨されています。期間は「小児から開始し、成人になっても長期にかつ継続的に施行すべき」と推奨しています。

自施設では腎AMLに対する症状のある場合、腎AMLが増大し最大3cm以上の場合、両側にびまん性に腎AMLがある場合は治療介入

自施設における治療介入基準を示します。治療介入の目的は、1.腎機能の保持、2.腎AML増大の抑制、3.腎AML破裂の予防の3つです。これらの重要度には差があり、治療開始時に最も重視しているのが3.で、その次が1.です。治療介入のときに検討する事項は、症状の有無であり、大きさ・増大速度・動脈瘤の有無、随伴疾患の有無、患者・家族の希望等を聞いて、TSCボードで総合的に判断し、決定しています。

当院の治療介入基準(表3)は、症状を有する腎AMLの患者、腎AMLが増大し、3cm以上の患者、両側性にびまん性に腎AMLが存在する患者の3つです。

EXIST-2の参加基準の3cm以上は理論上根拠はありませんが、EXIST-2で有効性・安全性が保たれているので、3cm以上を適応としても問題ないと考えています。また、思春期ごろになると、増大傾向を認める腎AMLは、経過観察してもさらに大きくなるため、早期治療介入が必要と考え、現在3cmを超える腎AMLで増大しているものは治療介入しています。一方動脈瘤がなく、TSCに伴うその他の随伴症状がない場合、たとえ6cmであっても増大しない腎AMLは治療介入は行っておらず、定期的なフォローとしています。

なお、治療介入する前は必ず造影MRIもしくは造影CTを施行し、動脈瘤の有無を評価をした上で治療介入を行っています。

参考文献)
1)Bissler JJ et al.:Lancet. 2013;381(9869):817-824
2)Krueger DA et al.:Pediatr Neurol. 2013;49(4):255-265
3)日本泌尿器科学会/日本結節性硬化症学会編:結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫診療ガイドライン 2016年版, 金原出版, 2016

アフィニトール 製品添付文書はこちらから
https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/afinitor/document/

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