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妊婦や妊娠を希望する方への保健指導――目指すのは“心と体の健康づくり”

読了時間:約 1分58秒  2017年12月25日 AM11:00
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産婦人科や不妊治療を行うクリニックの看護師など医療従事者が集まり、妊婦・妊活や不妊治療に取り組む方への保健指導について話し合うワークショップが、2017年8月20日に大阪で開催されました。ワークショップに先立って行われた基調講演では、日本医科大学産婦人科学講座教授の中井章人先生が、「サプリメントと周産期疾患」をテーマにお話ししました。(主催:バイエル薬品株式会社)

妊婦・妊娠を希望する方のモチベーションを保つ工夫を

ワークショップでは、聖路加国際大学 認定看護師教育課程 専任教員の川元美里さんを迎え、妊婦および妊娠を希望しているカップルを対象とした保健指導の実践や困難な点について話し合われました。

もっとも多く議題に上ったのは「体重管理」について。産科併設のクリニックでは、管理栄養士が栄養指導を行うこともできますが、管理栄養士がいない場合でも「肥満外来を勧める」「食事日記をつけてもらう」「継続できる運動を勧める」など、さまざまな保健指導の実践例が参加者から挙がりました。また、葉酸などのサプリメントへの関心が高まっていることもあり、「どのメーカーのサプリがよいか」と相談されることがあるという声も。

今回のワークショップを主催したバイエル薬品株式会社からは、同社が妊娠前後の女性たちに向け、中井先生ら産婦人科医師監修のもと制作した冊子『妊活の心と体づくりガイド』が配布されました。川元さんは、「この冊子を渡すだけではなく、内容について掘り下げることが現場の仕事」として、妊婦や妊娠を希望する方のモチベーションを保つさまざまな工夫が重要だと述べていました。


聖路加国際大学 認定看護師教育課程 専任教員 川元美里さん(中央)とワークショップ参加者

妊娠前から妊娠後期まで、栄養バランスの整った食事を

妊娠中の女性にとって必要な栄養素、葉酸。二分脊椎症など妊娠初期に起こる異常と葉酸の欠乏との関連が指摘されています。二分脊椎症の発生率は、年々減少傾向の米国・カナダなどに対し、日本では増加傾向。妊娠中の葉酸摂取の必要性は周知されていますが、神経管が形成される妊娠2~6週に十分な葉酸濃度を得るためには、妊娠前からの摂取が必要だといいます。

中井先生は、二分脊椎症以外にも、早産、子癇前症、胎盤早期剥離、胎児発育不全(SGA、FGR)、新生児死亡や死産など、妊娠中期以降の問題にも葉酸が関わっていると指摘。葉酸摂取により早産、死産、新生児死亡が減少するというコホート研究1)や、低出生体重、SGA、死産が減少するという報告2)も紹介しました。これらの原因となる胎盤形成不全には、葉酸不足が関連しています。日本人女性は葉酸だけでなく、その他のビタミンやミネラルなどの摂取量も不足しがち。中井先生は、「妊娠1か月以上前から妊娠後期まで葉酸とマルチビタミンの摂取を続けることが重要」と締めくくりました。


日本医科大学 産婦人科学講座教授 中井章人先生

1)He Y et al.:Lancet 2016;388(S91):91
2)Cochrane Database of Systematic Review 2015

L.JP.MKT.CH.11.2017.0590