医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

Home > オススメ > 多発性硬化症と視神経脊髄炎 その鑑別診断をどう行うべきか~重要度を増す抗AQP4抗体測定

多発性硬化症と視神経脊髄炎 その鑑別診断をどう行うべきか~重要度を増す抗AQP4抗体測定

読了時間:約 3分55秒  2017年05月12日 AM10:00
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事は医療者のみが閲覧する事ができます。

あなたは医療者ですか?

NMO患者に一般的なMS治療を行うと症状悪化につながる可能性を指摘


国立病院機構医王病院
統括診療部長 高橋和也先生

視神経炎による視力障害と急性脊髄炎による脊髄障害を主症状とする神経難病の視神経脊髄炎(NMO)は、神経線維を覆う髄鞘の破壊により視力低下や四肢の感覚障害を起こし、神経難病の多発性硬化症(MS)と症状が類似しているため、その鑑別診断に難渋するケースが少なくない。

3月31日、東京・昭和大学病院において、免疫性神経疾患学術講演会(昭和大学医師会・株式会社コスミックコーポレーション共催)が開かれた。

国立病院機構医王病院 統括診療部長の高橋和也先生は、座長の昭和大学医学部神経内科 主任教授 小野賢二郎先生による司会のもと、MSとNMOの診断・治療・鑑別について講演。「近年、自己抗体の抗アクアポリン4(AQP4)抗体の発見により、NMOはMSと異なりAQP4抗体陽性の症例が多いこと、そしてMSと分類されていた患者の中にはNMO患者が多く含まれていることが分かってきた」と高橋先生。両疾患の鑑別なしにNMOに対して一般的なMS治療を行うと、症状悪化につながることから、高橋先生は「抗AQP4抗体測定による診断がより重要度を増している」との見解を示した。

NMOは、従来から海外では視神経炎と脊髄炎が数週間以内の間隔で連続して起こるデービック病という単相性の疾患としてMSとは異なる疾患として分類されていたが、国内ではMSの一種である視神経脊髄型MSと分類されていた。ところが2004年に米メイヨークリニックや東北大学のグループが行った研究からNMO症例の半数以上が抗AQP4抗体陽性(2004年当時はまだAQP4に対する抗体と判明していなかった)だったことが分かった。さらに日本国内の視神経脊髄炎型MSの血清で抗AQP4抗体検査を行った結果でも半数以上が抗AQP4抗体陽性だったことがわかった。(高橋先生)

また、MSは北緯40度以北の高緯度地域に患者が多いのに対し、NMOでは患者分布や有病率に偏りが少ない。日本での有病率はMSが人口10万人当たり5~15人であるのに対し、NMOの有病率はMS患者の4分の1程度で、女性が圧倒的に多い。NMOの臨床症状は、MSに比べ、両側性の視神経炎により失明に至りやすく、脊髄障害では同時に両足に症状が出現する横断性症状を呈することが多い。高橋先生はさらにNMOでは「MSに比べ意識障害、延髄の病変も多く、突然死をきたすこともある」と解説した。

MS NMO
男女比 1:3 1:10
発症年齢 25歳前後にピーク、50歳以上はまれ 35歳前後にピーク、高齢発症あり
視力障害 中心暗転 失明、両側性障害
脊髄障害の特徴 片側症状 両側症状、強い痺れ痛み
脳病変の症状の特徴 眼振、MLF 意識障害、吃逆、嘔吐、SIADHなど
合併症 甲状腺 シェーグレン症候群、SLEなど
人種差 白人に多い なし
アクアポリン4抗体 陰性 陽性
オリゴクローナルバンド 90% 10~15%
造影病変 オープンリング 雲状
治療 インターフェロン、FTY20 ステロイド、血液浄化

※講演資料をもとにQLifePro編集部で作成

M23抗原を用いたELISA法は、CBA法により近い感度・特異度を提供

NMO治療はステロイド内服をベースに、アザチオプリンやタクロリムスといった免疫抑制薬の併用も行われることが少なくない。一方で、MSではインターフェロンやフィンゴリモド、生物学的製剤などによる薬物治療が行われるが、高橋先生は「(NMOをMSと誤診して)MSの治療を行った場合は逆に症状が悪化する」と注意を喚起した。高橋先生はそのうえで両者の鑑別診断が重要との認識を強調。現在のNMOの診断基準では、視神経炎と急性脊髄炎があることを前提に、以下の3項目のうち2項目以上を満たすことと規定されている。

  1. 3椎体以上の連続性の脊髄病変
  2. MSの診断基準であるPatyの脳MRI基準を満たさない
  3. NMO‐IgG(AQP4抗体)陽性

高橋先生は、この中でも「とりわけ抗AQP4抗体陽性が大きなカギを握る」と指摘した。

抗AQP4抗体検査については、M23抗原を使用した間接蛍光抗体(CBA)法とM1抗原を用いた酵素免疫測定(ELISA)法の2種類だったが、高橋先生は「これまでは、検査の感度・特異度がCBA法におとるものの保険収載されている検査法は、M1抗原を用いたELISA法であった」と説明。2017年春から新たにM23抗原を用いたELISA法による検査に変更されたことで、「これによってELISA法でも感度・特異度が期待できるようになった」と強調した。

CBA ELISA
抗原 M23抗原 M1抗原 M23抗原
感度
特異度
保険収載 なし あり あり

※講演資料をもとにQLifePro編集部で作成

MSとNMOとの鑑別が付きにくい患者にはNMOの治療を優先すべき

また、NMOの初期では該当する臨床症状を呈しながら、抗AQP4抗体は陰性という症例が存在し、経過観察中に陽性に転じることがあるため、注意深い経過観察に応じた抗AQP4抗体検査が必要との見解を表明した。

さらにMSとNMOとの鑑別が付きにくい症例が一定割合存在する上に、MSに対するNMOの割合は、アメリカでは100人に1人に対し、日本では10人に2~3人と非常に高いと述べ、MSとの誤診による治療で症状が悪化する危険性が日本では高いことから、抗AQP4抗体検査の重要性を重ねて強調。両者の鑑別が付きにくい場合は「NMO治療でMSが悪化することは少ないので、NMOの治療を優先した方が望ましい」と語った。

講演会ではほかに、昭和大学医学部神経内科 講師の齋藤悠先生が昭和大学病院での抗AChR抗体陽性の重症筋無力症患者の治療の現状について講演(座長:昭和大学医学部神経内科 講師 矢野怜先生)。患者像や症状、合併症などを全国データと比較して発表した。(村上和巳)

提供:株式会社コスミックコーポレーション

【関連リンク】
株式会社コスミックコーポレーション