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抗凝固療法に立ちはだかるアドヒアランスとパーシスタンス(服薬継続率)の問題~心臓血管研究所所長 山下武志先生に聞く

読了時間:約 2分40秒  2016年09月30日 PM05:00
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公益財団法人心臓血管研究所所長 山下武志先生

心房細動患者での薬物療法による脳梗塞予防において、その選択肢は大きく広がった一方で、アドヒアランス・パーシスタンスの問題は、選択肢が少ない時代から変わらず、厳然として立ちはだかっている。超高齢化社会を迎えた日本では、今後、心房細動患者の増加や高齢化に伴い、多くが脳梗塞の高リスク患者となる可能性があり、アドヒアランス・パーシスタンスを上げることが非常に重要な課題となっている。先日、欧州心臓病学会(ESC)から発表された心房細動管理ガイドライン2016年版においても、多職種チームの連携が重視されており、これまでの医師を中心とした心房細動管理から、患者中心の心房細動管理へとシフトしつつある。これからの心房細動管理のあるべき姿について、公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志先生に話をうかがった。

薬を10%余らせるごとに死亡と脳卒中のリスクが約10%増加

アドヒアランスが予後に与える影響は大きく、薬を10%余らせるごとに死亡と脳卒中のリスクが約10%増加することが報告されています。そしてもう1点、パーシスタンスの視点からのアプローチも見逃せません。経口抗凝固薬の処方を開始された後、服薬を中止した場合の約半数は副作用が原因と言われています。患者は、副作用が出た際に自己判断で服薬を中断しやすく、やがてそれが服薬中止につながる、と考えられます。アドヒアランスは患者の治療に対する理解度、認知症の有無、社会的背景など患者側の要因以外に、副作用や服薬回数などの薬剤要因、患者とのコミュニケーションの取り方等の医療者側の要因があります。

以前にQLifeと行った調査(医療者・患者横断 心房細動治療(抗凝固療法)における意識・実態調査)では、「初診時には、心房細動、脳梗塞、抗凝固療法についてなど、医師、薬剤師から多くの説明がなされるが、その説明内容に重複が多い。かつ、情報量が多すぎるため、患者の集中力が低下し、説明の後半部分は理解できていないことが多い」「アドヒアランスの良い患者と悪い患者では、再診時に受けた説明内容が異なる」ことが明らかになっています。例えば、心房細動によって起こる脳梗塞のメカニズム・原因は、「治療しないとどうなるのか」という生命予後に関わる重要な事柄ながら、医療者と患者のコミュニケーションギャップが最も大きいテーマの1つです。「脳卒中」「脳梗塞」や「心原性脳塞栓症」など、患者にとって分かりづらい単語が並ぶので極力分かりやすく言い換えたり、図表などを使ったりすることが有効だと考えます。

中心にいる患者はもちろん、医療者の誰もが「当事者」として

抗凝固療法施行率が向上しつつある現在、心房細動患者の適切な脳梗塞予防は患者のアドヒアランス・パーシスタンスの向上無しにはありえません。少し前まで、これらの問題はすべて患者側の問題として片づけられる傾向がありました。しかし、実際には薬剤要因や医師とのコミュニケーションギャップの解消、薬剤師や看護師・保健師のサポートなど、患者側の要因以外の部分も同様に重要と考えられます。

欧州心臓病学会(ESC)から発表された心房細動管理ガイドライン2016年版においても、「患者の参画」、「多職種チーム」、「非専門家の役割」、「テクノロジーツール」の活用による「Integrated management」の重要性が語られています。患者に積極的に情報開示し、アドバイスを行うことで自己管理の動機付けを行うとともに、医師以外の医療者の協力のもと、チームワークとして取り組む。中心にいる患者はもちろん、医療者の誰もが「当事者」として患者をサポートすることが重要だと思います。

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