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ひらいクリニック 平井今日子院長

読了時間:約 4分24秒  2011年04月05日 AM11:00
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「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
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平井今日子院長

全員同じ給料、受診はネット経由、
将来は「銭湯風」クリニック…
注目される異色の経営方針

一番の苦労

人材採用は、専門知識より「心」にこだわり

 開業準備期間が3か月しかなかったため、はじめは来院患者もスタッフも集まらずに苦労した。
 患者さん集めに最も効果があったのはインターネット。無料で「メールカウンセリング」を行っていたら、これが評判になったようだ。今では、電話で問い合わせてきた患者さんにも、メール窓口を案内するくらい、当院の主要受診フローとして確立している。
 ただしメール対応は、時間がかかり、専門知識ある人材でないと対応できないから、負担は大きい。返信は原則として1回だけとし「受診予約」も兼ねてやっているが、なかには2度3度と質問を繰り返す人もいる。半分はボランティアと考えている。
 一方の人材確保は、いまだに苦労している。「この人なら」と私が確信しない限りは採用しないからだ。医療事務を例にあげると、専門学校を出たからと言っても信用しない。むしろ専門知識があるぶん、臨機応変に動けない人が多い。当院では、医療分野の経験がなく、代わりに販売員として働いた経験があるスタッフがいる。彼女は勉強熱心なので新しいこともどんどん吸収するし、販売員だった頃の接客ノウハウが待合室で大いに役立っている。こだわりが強過ぎると人材採用はままならないが、医療現場では“柔軟性”が大事だと思うので、私の考えに合致する人が現れるまで、いつも辛抱強く待っている。

一番の特徴

医師も事務員も、全員が同じ給料

 まだ経営的には安定軌道に乗っているわけではないため、スタッフ全員をアルバイトとして雇用している。しかも、医師・看護師・事務員が、すべて同じ時間給だ。
 一般的な医師の感覚では、不当に感じるだろう。しかし開業して間もない私や、研修医は、ベテランの看護師や事務員から教わることが多い。患者さんへの提供価値のなかで彼女達が占めるものは、けして医師に引けを取らない。
 それに私は、このクリニックで仕事をする人すべてが同じスタンスで働くスタイルにしたいと思っている。今のところ、妙な格差意識も壁もなく、クリニック全体がスムーズに機能していて問題は起きていない。

一番の拘り

疑問・批判精神を大事にして、行動する

 医療の世界に25年ほどいるが、いまだに「おかしいな」と思うことが多い。勤務医時代も、その都度、自分なりの提案をしてきたつもりだが、開業医となってからは、さらに“行動”を増やすようにしている。
 例えば診療報酬の支払い。普通、クレジットカードでも翌月には引き落とされるが、支払基金などからの支払いは、なぜ3か月も遅れるのか。保険診療の適応外と支払い拒否されることも多いし。そもそも保険診療で収益を成立させようとすると、患者さん一人に5分以上かけられない計算になっている。5分で一体何を治せるというのか。
 “行動”を起こしやすいように、株式会社も作った。もともとは医療現場のIT化を支援する目的だったが、現在は、海外在留邦人の医療サポート、日本に住む外国人の医療サポート、医療機関スタッフの教育のための講演など多岐にわたった仕事をしている。クリニックのホームページからの情報発信も頻繁に行っていて、微力ながら「医療を変えていきたい」と思っている。診療する側がわからないことだらけでは、患者さんにわかるはずがない。

一番の秘訣

院内も院外も「みんなで」やる

 これから開業する人にアドバイスするならば、「クリニックという場所は、仕事で携わる人みんなのもの、と考えよう」と言いたい。「医療機関=理事長・院長のもの」、という感覚の人が多いだろうが、むしろ経営者は人材を育てていく責任があるわけで、職場はみんなのものだという考えが大事と思う。
 また、当たり前だが初期投資を最小限に抑えること。「いずれ回収できる」と楽観的に構えていられたのは昔の話。「最低でもレントゲンは必要」などという考えは無用だ。レントゲンが必要なら、近くの病院に頼めばいいし、当院でもそうしている。単純な話、机と椅子、聴診器、ベッドさえあれば診察はできる、と腹をくくろう。
 むしろ、地域にあるそれぞれのクリニックが専門性を活かして横のつながりを持てば、患者さんから見れば、充実した医療体制になる。個人開業医が何でも1人でやろうとする時代ではない。

一番のゆめ

待合室は「銭湯」のイメージで

013取材当日は「ワンコインライブ」の開催日。来日ツアー中のギタリストが院内で演奏。交友関係の広さが伺い知れる。

 このクリニックを、診療だけの場でなく、人が集う場にしていきたい。昔の銭湯では、お風呂から上がった後も、近所の人どうしが世間話をしていたように。待合室を“昭和初期”のイメージで作ったのもそのため。
 実際、人が集う機会を増やそうと思って、待合室でのイベントを積極的に開催している。一般向けや医療関係者向けの勉強会だけでなく、「書道ショー」「着つけショー」、あるいはニュージーランドで知り合ったミュージシャンが来日した際に「ワンコインライブ」をしてもらったり。イベント開催を知らなかった患者さんが、受診後にその場に留まって楽しんで下さっているのを見ると、もっとこうした試みを増やしていきたいと思う。
 もう一つ、パンやケーキのお店を作るという個人的な夢がある。昔からずっと自炊していたので、パンやケーキを作るのも大好き。大量生産ではなく本当に美味しいものだけを少量作って、近所の人達に楽しんで頂きたい。こういう考え方は、私が目指す医療のあるべき姿にも通じている。

医院プロフィール

ひらいクリニック

大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館 B-1号室
TEL:06-6125-5350
医院ホームページ:http://hirai-clinic.org/


大阪市営地下鉄御堂筋線・心斎橋駅から徒歩5分。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

肛門内科、内科、消化器内科

理念

個々の体調に合わせて、薬に頼ることなく気楽な生活を過ごせるようないい提案。

院長プロフィール

平井今日子(ひらい・きょうこ)院長略歴

1986年 近畿大学医学部卒業、近畿大学第一外科
1987年 近畿大学救命救急センター
1988年 PL病院 外科
1989年 近畿大学第一外科
1993年 泉北陣内病院 外科
1996年 暁美会田中病院 外科
2000年 平井医院
2010年 矢木脳神経外科病院 総合診療科
2010年 ひらいクリニック開設

所属学会

日本外科学会、日本消化器外科学会、日本乳癌学会 日本大腸肛門病学会、日本乳癌検診学会、日本内分泌外科学会、日本癌治療学会

現代の医療に対する厳しい批判も飛び出す平井先生。
独自の視点や豊富なエピソードで、人を惹き付ける魅力に溢れる。