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医療法人社団 東信会 よしだ内科クリニック 世田谷 膠原病リウマチセンター 吉田智彦院長

読了時間:約 8分31秒  2011年03月08日 AM11:02
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sugiura_clinic011医療法人社団 東信会 よしだ内科クリニック
世田谷 膠原病リウマチセンター
吉田智彦院長

日本有数の医療機関密集エリアで新規開業
リウマチ膠原病治療の最先端を目指す

一番の苦労

借入額と自分の信念との闘い

 開業を決めた時、私は資金のことに無頓着だった。かつての同僚達は開業する際、みな緻密にシミュレートし、机上でキャッシュフローを計算していたが、私はやりたい医療に必要なスタッフの確保とやりたい治療と準備する設備のことしか考えていなかった。
 内装費に2.5千万、設備に1.7千万が必要だった。銀行からの借り入れは5千万円。その段になって、初めて金額の大きさに驚いた。やっていけるのかと不安にも陥った。また、保険診療のクリニックの他に保険外診療の補完代替医療を担う鍼灸部門、骨格調整をするオステオパシー部門、リンパドレナージの部門の設立も開業当時にプランした。クリニックの開業につづき開設したこれらの部門は、現在では別施設『統合治療 庵(iori)』として独立しているが、この独立にもさらに2千万円かかった。
 開業地えらびでも、私は自分の信念を優先させた。開業予定地のリサーチの結果では、このエリアは病院・個人クリニックが密集しておりNG判定。それならリウマチ科に絞ればどうかと尋ねるも、リウマチ専門施設での開業そのものが少なく、前例がないことから、十分な回答がなかった。
 でも私は「リサーチは当てにしない!」と考え、「頼り、信じて拠り所にするのは、自分の技術であり能力と丁寧に患者さんを診療したいという強い気持ち」と自分に言い聞かせた。幸いにも、私が開業すると知った大学病院の患者さん50人が、「ぜひ診てもらいたい」とついて来てくれた。大学病院志向が強い世の中で、これから町医者になろうという私に、だ。「この50人を大切に治療していくことが、次に必ず繋がるはず」、そう心を決めた。
 自分の信念を貫いたおかげで、納得のいく診療空間を作り、設備を置き、各部門の専門家を呼び、補完代替医療の施設も作ることができた。描いていたオーダーメイドの治療が可能な環境になり、今では多くの患者さんから、ご満足の声を頂く結果となっている。組織はどんどん大きくなっていき、スタッフが増えつづけている現在、借金回収できるのはまだまだ先だが、施設は順調に目標に向けて発展していると思う。これからも、自分の力、スタッフの力を信じ、進んでいくだけだ。

一番の拘り

患者さんの「全て」を受けとめる治療

 研修医時代の、ある患者さんとの出会いを契機に、私は膠原病治療にまい進するようになった。恩師にも恵まれ、信頼する仲間とチームを組み、夢中で仕事に打ち込んだ。ところが暫くすると、疑問を抱くようになった。
 大学病院では一人の患者さんに割ける時間は3分程度だ。医師がどんなに丁寧に接したつもりでも、患者さんにとっては、何時間も待たされた挙句の3分。満足感なく病院からでていく患者さんは病院の帰りにマッサージや鍼灸などの施術を受けたり、サプリメントを購入する。しかしそれらの情報が、医師側にフィードバックされることはほとんどない。つまり3分診療では、患者さんを取り巻く医療の情報を十分に得ることができないのだ。
 私は、患者さんのカラダに関わる情報は、全て知りたかった。そして自分の持てる技術と知識を総動員して治療に当たりたかった。人体、特に免疫機能は極めて複雑だ。西洋医学という「西からの光」だけでなく、「東からの光」、つまり東洋医学の力を借りれば、もっと広い範囲で患者さんを救えるはず。「最先端で妥協のない、オーダーメイドの治療を丁寧に実践したい」、これが私の開業理由。だから設備や内装やスタッフに対しても、自然とこだわるようになった。

一番の工夫

患者さんの気持ちに拘り、内装設計は全部自分で

 内装にも拘りが現れている。当然バリアフリー。でも当時はまだクリニックのバリアフリーは珍しかった。それだけでなく、配色、物の配置、ブースの形や動線まで、デザインはすべて私が行った。 
 中でも重視したのが「開放感」だ。リウマチや膠原病は、診断されただけで気が重くなる病気。患者さんの気分を少しでも軽くするため、病院然とした所ではなく、カフェや美容院のような来やすい空間にしたいと考えた。
 そのための工夫として、プライバシーを確保しつつ開放感を出せるよう、受付は半円形のカウンターとした。スタッフからは患者さんの表情が見え、辛そうな人がいればすぐに分かる。一方で、患者さんからもスタッフの表情が見てとれる。しかし、直に目が合うとお互い気詰まりなので、待合室に対し角度をつけ調整した。
 ソファは元気の出るオレンジに、窓向きのテーブルと椅子は柔らかな白にした。窓向きのコーナーを作ったのは、一人で来院した患者さんの待ち時間に外の景色を観ながら過ごしてほしいと考えたからだ。
 ただし、オープンな空間や、親しみやすい色にこだわると、可愛くなり過ぎてしまいがちだ。小児科や審美歯科ならいいが、「治療をしっかりやっている」といった少々堅いイメージも残したかった。そのため受付はダークブラウンのウッドパネルを置き、カウンターにシルバーのスチールとガラス天板を使用して、シックでスタイリッシュな雰囲気を演出した。多くの患者さんから内装についてお褒めの言葉を頂くので、おおむね良かったと思っている。
 ただ、今思えばカウンターが少々大きすぎた。スタッフが広々と仕事できるよう配慮したつもりだったが、もっとコンパクトでも十分機能した。そして待合室はもっと広い方が良かった。当初は第一診察室がメインで、第二診察室は予備として使う予定だったが、現在は第一・第二ともにフル稼働している。結果として患者数に比べて待合室のキャパシティが不足気味になってしまった。また、第二診察室にもベッドを置く場所を用意しておけば良かったと思う。

一番の秘訣

教育の秘訣は、責任感とやる気が生まれるのを待つこと

 最近、スタッフが著しく成長していると感じる。自分で仕事をどんどん見つけ、つぎつぎ業務改善を提案し、責任を持って行動し、業務精度も高くなっている。また、スタッフ一人ひとりに、患者さんへの発信力がある。例えば年々高額になる医療費や病気以外の家庭の悩み、将来の不安など困りごとのある患者さんに気づき、多方面からのサポートを提案したり、講演会で自分が演者になって説明する能力もある。
 また、離職率が低い。開業以来辞めたスタッフはごくわずかで、ほぼ全員が継続して勤務している。看護師長をはじめ先輩スタッフが自ら後進を育てる流れができたので、安定した組織になっている。
 同業者から、スタッフの優秀さと離職率の低さについて秘訣を尋ねられるが、私に言えることは一つ、「院長もチーム医療の一員として必要以上にしゃしゃり出ないこと」だ。大学病院でも学生教育にあたってきたが、人が成長するにはモチベーションを上げ、責任感が育つのを待つことが大事だ。そのため私が仕事を任せるときは、スタッフ個々の能力を見て、そこにプラスアルファを加えた業務を設定する。そしてそれぞれの仕事の達成度をきちんと評価し、次回からは少しだけハードルを上げる。つまり個々に合わせた対応と評価が必要で、画一的な教育プログラムではいけないと考える。
 私は、医師と看護師、事務スタッフ、施術スタッフとの間の「バリアフリー」も重要と考えている。出来る限り対等な立場に立ち、お互いが何でも意見を言い合う関係だ。当クリニックでは、受付スタッフも私にバンバン意見を言ってくれる。耳が痛いこともあるが(笑)、かえって楽しく、アグレッシブに仕事ができる。

一番の夢

リウマチ膠原病治療の世界最先端を

 私の医師としての夢は一つ、リウマチ膠原病治療の最先端を極めることだ。東京の膠原病医療は海外に3年は遅れている。そして地方は、東京よりさらに遅れをとっている。この遅れを縮め、膠原病医療の水準を上げていくことが使命だと思っている。金儲けのための医療は、私のイズムから外れる。だから、もし私がお金を儲けようと考えたり、サイドビジネスをやりたいと思い始めたら、それは医師を辞める時と決めている。
 その目標へ向かう過程で、実現したいことが二つある。一つは、「漢方カフェ」の創設だ。西洋医学では、消炎剤や鎮痛剤など体を冷やす薬が多い。病気による代謝低下に加え、患者さんたちは薬によって体が冷やされている。また、膠原病の柱となる免疫力も、西洋医学だけでは改善しないことが多い。このため、クリニックに併設する漢方のカフェがあれば、医師が専門的知識で選んだ漢方を患者さんは手軽に入手できる。普段の生活で漢方茶を飲めば、患者さんは継続して免疫力を上げられ、自分の体に向き合う時間も長くなる。同時にクリニックで補完代替医療も受ければ、最先端西洋医学と専門医による漢方内科医学と安全で副作用の無い補完代替と食養生と患者さんのニーズに広い範囲で対処できるようになるであろう。
 もう一つの夢は、古来日本にある湯治という文化と教育入院(患者さんが病気について学んだり生活習慣改善を始めることなどを目的とする入院)を融合させて長野で実践することだ。長野でも私は診療をしているが、折角良質な温泉が湧き出ているのに、温泉街に活気がなくなっている。そこで、リウマチ治療の教育入院を、温泉街で行ってはどうかと考えている。温泉街に滞在型の医療施設を作れば、東京近郊の患者さんが旅行気分で湯治をしながら1-2週間の教育入院ができる。息抜きや交流を兼ねれば治療効果も向上し、同時に過疎化が進む街も活気付く。長野と東京の「患者交流会」は既に行っているので、これを発展させて行き、医療で地域を巻き込んで活性化させていきたいと考えている。

一番の助言

成功の鍵は、ブレない信念をもつこと

 金を儲けたくて開業したいと考えているなら、「絶対に儲からない。違うことをしたほうがいい」とアドバイスしたい。医療で儲ける時代は終わっている。豪邸に住みたい、ポルシェに乗りたいと考えるなら別の仕事をすべきだし、少なくともリウマチ膠原病を専門にする開業は絶対に勧めない。
 「患者さんを救いたいという強い気持ち」をもち「明確に自分のやりたい医療がある」そして「その決心が決してブレない」なら開業すべきだ。その気持ちさえあれば、患者さんはやって来る。一人ひとりを丁寧に治療すれば、自分のモチベーションを維持できるし、やりたい医療も実現できるだろう。
 当クリニックでのキャッシュフローは驚くほど悪い。理由の一つは、高額な薬価購入費用などコストに見合わない「やってはいけない生物学的製剤治療」を行っているからだ。大学病院と同等の治療水準と設備を備えているが、中には稼動させるほどマイナスになるものがある。もう一つは、医師一時間あたりの診療患者数が、院長で4から6名、外勤の先生に至っては1時間に4人の設定だ。数をこなしてナンボだが、スタッフからは「もうちょっと多く診れませんか?」と言われるし、税理士からも驚かれる。
 なぜ、あえて非効率的なことをするのか。一言で言えば、プライドの問題だ。生物学的製剤のラインナップを一つ減らせば、患者さんの良くなる治療方法の切り札を一つ減らすことになる。雑に診療をすると患者さんの満足度は下がり、事故につながる。
 丁寧に患者さんを診るのは開業の本来の目標であり、当クリニックの特色でもある。リウマチ膠原病は、患者さんの身体をしっかり診察し、採血やレントゲン評価を慎重に行いたい。だから「リウマチ膠原病の最先端」を目標にする限りは、非効率でもこの診療スタイルを貫かなくてはならないと考えている。
 その気持ちがなくなった時は、診察室から引退する時だと思っている。それまでは常にリウマチ膠原病チームの4番バッターでいたい。しかし自分一人がエースで4番のチームではなく、スタッフとのチームプレーで勝ち続けたい。収支のバランスをとるのは難しく、クリニック運営では迷う事もあるが、まず大切なのは「なぜ、開業したかったのか」という原点を思い返し、ブレない信念を持ち続ける事だと思う。大病院でも簡単につぶれる時代。給料をもらう立場から払う立場になるには、相当の覚悟が必要だが、この姿勢は貫いていこうと思う。

医院プロフィール

医療法人社団 東信会 よしだ内科クリニック
世田谷 膠原病リウマチセンター

世田谷区経堂2-4-6
TEL:03-6413-4666
医院ホームページ:http://www.setagayariumachi.com/


小田急線経堂駅より徒歩2分。静かな住宅地のなかにあるクリニックは、サロンのようなたたずまい。明るいスタッフのいる医院の隣には、鍼灸や整体を行う施設もある。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

内科、リウマチ、膠原病、アレルギー

理念

患者様が主役のオーダーメイド医療を大学病院などの高度医療機関と同等の水準で実践する

院長プロフィール

吉田智彦(よしだ・ともひこ)センター長略歴

1993年 聖マリアンナ医科大学卒
2000年 聖マリアンナ医科大学大学院卒
同年 日産厚生会玉川病院内科
2002年 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科医長
2005年 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科講師
同年 児玉経堂病院リウマチアレルギー内科
2006年 「世田谷リウマチ膠原病センター よしだ内科クリニック」開業

資格・所属学会

日本内科学会 内科専門医 、日本リウマチ学会 リウマチ専門医、リウマチ指導医 、日本リウマチ財団 リウマチ登録医 、日本医師会認定産業医など

リウマチ・膠原病治療への並々ならぬ情熱が伝わってきた。
この強い信念には、周囲の人間は自然と動かされるだろう。